YOLスペシャルインタビュー 上智人が語る日本、そして世界

ガーナのカカオ農家への想いを胸に
「本当の」ガーナチョコで社会貢献

野呂 謙友 (のろ けんすけ)
法学部地球環境法学科3年

ガーナ、そしてカカオ豆との出会い

ガーナ、そしてカカオ豆との出会い

 僕が代表を務める「本当のガーナチョコレートを作るプロジェクト」では、ガーナの文化やカカオ生産者達の現状を日本で伝えるため、All made in Ghanaのチョコレートの販売やカカオ豆を使ったチョコレート作りのワークショップの開催など、さまざまな活動を展開しています。

 帰国子女や留学生が多く、英語が当たり前のように飛び交っている上智大学のキャンパスは、僕の予想以上にグローバルな環境でした。入学当初、僕は海外旅行にも行ったことがなかったので、少しコンプレックスを感じていました。1年生の夏、そんな自分を変えたくて挑戦したのが、ガーナで子どもたちに勉強を教えるインターンシップ。英語は片言しか話せませんでしたが、まずは「何事にも挑戦してみよう!」という気持ちで現地に赴きました。

 僕が滞在していた村は、村民の大半がカカオの栽培農家。当時の僕は、ガーナといえばチョコレートと思っていたし、僕の周囲も「お土産はガーナチョコレートだね」という認識だったと思います。でも、現実は違いました。ガーナで流通しているチョコは1枚で1食分の値段がする嗜好品。滞在先の村民で買うひとはほとんどいません。そして彼らは、自分たちが栽培しているカカオ豆がどのようにチョコレートなるのか生産工程も知らないし、日本でチョコレートが大量消費されていることすらも知らなかったのです。そこで、実際にチョコレートを作るワークショップをやってみることにしました。カカオをすり潰し、砂糖を加えただけのシンプルなチョコレートでしたが、子どもたちは、みんな大喜び。ワークショップ後、子どもたちに会うたびに「ケンスケ、今度はいつチョコレートつくるの?」と聞かれましたね。

「本当のガーナチョコレートを作るプロジェクト」を立ち上げる

「本当のガーナチョコレートを作るプロジェクト」を立ち上げる

 ガーナから帰国してからも、あのワークショップのことが忘れられなくて。思い出すのは、チョコレートをおいしそうに食べる子どもたちの笑顔。あの活動を続けたいという気持ちが日に日に強まっていきました。そこで、現地で知り合った友人と、「本当のガーナチョコレートを作るプロジェクト」を立ち上げたのです。チョコレートを専門に扱う職人ショコラティエから、カカオ豆の加工法を学びつつ、ガーナ産カカオからチョコレートをつくるワークショップを20回以上開催しました。このワークショップは毎回20人から40人ぐらいの参加者に恵まれ、僕たちの活動も少しずつ認知されていきました。とても充実していましたが、何か新しいことに挑戦したいという気持ちが新たに芽生えてきました。

All Made in Ghana チョコレートの販売をはじめる

All Made in Ghana チョコレートの販売をはじめる

 そこではじめたのが、All Made in Ghanaにとことんこだわったチョコレートの販売です。ガーナでは国がカカオ流通を管理し、固定価格で買い上げて輸出しています。価格が固定だから、栽培農家は質より量を重視。でも、良質なカカオ豆と砂糖しか使わない手作りのチョコレートは、カカオの風味を強く感じることができ、とても美味しいチョコレートになります。そんなチョコレートを現地の人たちと共に作ることができたら、彼らの生活だって変えることができるのではと思ったのです。このチョコレートのように、カカオ豆からチョコレートを自製する取組みは「Bean to Bar」(豆から板チョコへ)と呼ばれ、欧米で人気を集めています。日本でもここ数年、ショコラティエを中心に注目されています。そんな背景もあるので、僕たちのチョコレートもきっと受け入れてもらえるはずという想いもありました。

 幸いにも、今年のバレンタインに、東京と大阪の百貨店で僕たちのチョコレートを販売する機会に恵まれました。僕たちのチョコレートはカカオの収穫からチョコレートになるまで、全てガーナで行いました。パッケージにもガーナの伝統的な織物を使うなど、全てがガーナ産であることにこだわりました。日本のチョコレートの約85%がガーナ産のカカオを使用していますが、ガーナのカカオを使って、現地で製造される100%ガーナ産のチョコレートというのは、ほんのわずか。こうした生産背景や、チョコレートに込めた想いを伝えると、多くの人が共感してくれました。結果的に、用意した約600個のチョコレートは早々に完売。僕たちのチョコレートが多くの人に受け入れてもらえたのが、本当に嬉しかったですね。

2度目のガーナ訪問、そしてこれから

2度目のガーナ訪問、そしてこれから

 甘いものは大好きでも、お菓子作りの経験すらなかった僕が、今では「野呂といえばチョコ」と言われます。カカオとチョコレートの話なら、何時間でもすることができますね。それぐらいこの活動に没頭しています。将来についても、何らかのかたちでチョコレートとカカオに関わる仕事に就きたいと思っています。

 4月上旬、バレンタインのイベントで販売したチョコレートの売り上げを、ガーナの協力農家に届けに行ってきました。今回の売り上げは、この農家の息子の高校進学費用として使ってもらうことになっています。自分たちがここまで活動を続けてくることができたのも、今まで出会ったたくさんの人たちのサポートがあってこそ。これからは今までのよい部分を継続しつつ、新しく面白い取組みができればと思っています。「感謝」と「挑戦」、この気持ちを忘れずに、活動を続けていきます。

「本当のガーナチョコレートを作るプロジェクト」公式facebookページ

E-mailアドレス:realghanachoco@gmail.com

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