教員が発信する上智の学び

私たちにはさまざまな国際貢献への道がある

江藤 淳一
法学部 国際関係法学科 教授

国際社会にとっても「法の支配」は重要だ

 最近、南シナ海をめぐる紛争のことが新聞やテレビでよく報道されています。これは中国とベトナム、フィリピンなどのアセアン諸国との紛争であり、 日本はその直接の当事者ではありません。しかし、この海域は日本にとってきわめて重要な海運航路であり、この海域の平和と安定は日本にとって死活問題です。 この紛争に日本はいったいどのような形でかかわるべきでしょうか。

 この紛争にはさまざまな要因がかかわっています。各国の軍事・安全保障政策、資源・エネルギー政策、さらに環境保護政策などです。 これらの要因を考慮して紛争を解決に導くのは容易なことでないのはもちろんです。ただ、その解決の際の基本として、 海洋に関する国際法が必須の規範となることが関係各国によって確認されています。国際紛争も、力ではなく、法に基づく解決が基本だと考えられているのです。 日本も、法に基づく解決をはかるように関係各 国に働きかけを行う必要があります。

 この事例が示すように、現代の国際紛争を考える場合、国際社会の基本的ルールの知識は必要不可欠です。 それは外交に直接たずさわる専門家だけの問題ではありません。国境を超えて行われる活動にかかわる多くの人たちにとって、その基本的ルールを学ぶことはますます重要となっています。 国際関係法は、このような要請に応えるために、政治学なども含む国際関係の多面にわたる学問分野を対象とするものです。

法は何でも解決できる万能薬では決してない

 すべての紛争は法によって解決できると考えるのは正しくありません。とくに国際社会の場合、法を制定し、執行し、裁判を行う機関が十分に整備されていません。 したがって、国内社会の場合とは異なり、当事者間で紛争が解決できない場合に裁判による解決を求めるというわけにはなかなか行きません。 そのため、国際社会では法の役割はきわめて限られていると感じる人も多いでしょう。

 国際紛争の解決には、歴史・政治・経済・軍事など、さまざまな知見が必要となります。したがって、法律の専門科目だけを勉強すれば良いというものではありません。 多くの知見を駆使して、紛争の相手国の事情を知り、その主張を理解し、互いに納得できる解決を求める努力が重要です。 それは基本的には関係当事者間の協議・交渉を通じて行われますが、そこでも法的なものの考え方や議論の進め方は大きく役立ちます。 それは、担当者間でのいわば共通の言語の役割を果たします。実際、国際会議に出席すると、法律の素養をもつ人とのコミュニケーションは楽だと感ずることがよくあります。

 現在では、私たちは、国際的な問題や紛争について話し合うさまざまな場(フォーラム)をもっています。 そのなかで最も重要なのはもちろん国際連合とそれに関連する専門機関ですが、それ以外にもアセアンのように、地域的な国際組織も存在します。 また、民間人が主導するような国際会議も頻繁に開かれています。そのような場で各国の人たちが共通のルールに従って対話を続け、共通の認識をもつことが重要です。 これからの世代の人たちにとって、それはごく当たり前のことになるでしょう。

さまざまな国際問題に取り組む先輩たちがいる

 国際社会にもさまざまな紛争があります。領土紛争のようなものから、通商、知的財産、環境などをめぐる紛争、さらに国境を超えた子どもの連れ去りなどの紛争もあります。 これらの問題に対処するには、さまざまな法分野の知識が必要となります。もちろん一人でそれらを全部身につけることなどできるわけはありません。 自分の関心にしたがって何を学ぶかを徐々に選択することになります。

 国際的な問題や紛争への関わりも人によっていろいろな場合があります。日本人がほとんど入域できない地域でNGOの職員として子供たちに食糧と学用品を提供する仕事に携わる先輩、 特殊な言語に通じた外交官としてバルカン諸国の大使館で友好関係の維持・発展のために奔走している先輩、法科大学院に進学し優秀な成績をおさめ、 日本で有数の渉外法律事務所に就職して企業の国際法務に関わる仕事を始めた先輩、それぞれ自分の選んだ道を進んでいます。

 こういう先輩たちの話しを聞く機会はとても刺激的です。常に国際的な視野をもって物事を考えることのできる環境にいられるのは楽しいことです。 それは国際関係法学科というところで学ぶ一つの重要な意義だと思います。皆さんも、自分にできる、自分にあった国際貢献の形をぜひここで見つけて欲しいと願っています。

江藤 淳一 法学部 国際関係法学科 教授
江藤 淳一(えとう・じゅんいち)
法学部 国際関係法学科 教授

早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程終了後、東洋大学法学部助手・講師、ジュネーヴ軍縮会議日本政府代表部専門調査員などを経て、2001年から現職。

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