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「会計情報」のグローバル化が加速する今 次は情報を使う技術が焦点となる

西澤 茂
経済学部 経営学科 教授

ビジネスに不可欠のスキル

西澤 茂 経済学部 経営学科 教授

 私の専門分野である「財務会計」で扱う書類はいわば“企業経営の成績表”です。
儲かったのか、損したのかを示す。あるいは負債や資産の内容など、企業外部の利害関係者(株主・投資家・税務当局など)に業績を伝えることを目的としています。
具体的には貸借対照表や損益計算書などがその成績表にあたり、企業は定期的に作成し公表することが義務づけられています。 つまり「会計情報」が理解できれば、企業活動の現況が鮮明に見えてくるわけで、ビジネスパーソンには不可欠のスキルといえるでしょう。
最近はインターネットなどによる企業情報の共有化が進展。さらに「国際会計基準」の導入により、これまで各国で異なっていた財務諸表を、 同じモノサシで統一化しようという流れもあります。
会計情報は今や、国際ビジネスの共通語。会計情報を読むことで、世界中の企業の実態が理解できます。
インターネットの普及が英語の世界共通語化を後押ししたように会計情報の共有化・統一化は、企業活動のグローバル化を加速し、 ビジネスの発展をさらに推し進めていくはずです。

マジックを見抜き、戦略を説く

 会計学といえば、多くの人は「どう財務諸表をつくるのか」といった“つくる視点”でとらえがちです。 一方で会計学には、「会計数値が、企業のどのような実態を表しているのか」という視点もあります。 企業会計のデータ作成のプロセスを熟知していれば、過去の経験値から導き出した傾向などと合わせ、財務諸表に隠された“マジック”を見抜くこともできます。

 私は「有価証券報告書」や「アニュアルレポート」があれば、その企業の特徴がわかります。例えば企業経営者に、その企業の現場を知らない私が問題点を指摘することができるのです。 また今後、成長するためには何が必要か。世界中のライバル企業の財務データと比較検討することで、ある企業モデルを目標とすることのメリット、 あるいはリスクを提示することも可能です。私の授業ではこうした企業会計の実情を、パワーポイントなどの視覚教材を使いながら、 「誰もが知っているあの米ハンバーガーチェーンは、なぜ世界展開に成功したのか?」といったケースを取り上げ、具体的に解説します。

 また、ブランド育成などの企業戦略を知ることで、インタンジブルアセット(無形資産)など、最新の会計学への理解がいっそう深まっていくことにもつながります。

情報力で次のアクションを

 情報はインターネットの発展によって誰もが共有できるものへと変わりました。そこで次のステージは「情報の加工・活用」へと進んでいくことでしょう。 専門知識を身につければ、情報を正しく理解することができます。そのうえで、情報を利用しやすいように加工し、次のアクションへとつなげていく—

 例えば為替変動は、グローバル企業にとって死活問題です。1円の円高・ドル安で、数百億の利益が飛んでいくこともあります。 それに対し企業は、各拠点をネットワークで結び、リアルタイムに変化を把握。さらに資金管理や財務業務を統合することで、次の一手に備えているのです。 ここでポイントとなるのが、高度な会計テクニック。しっかりした会計の仕組みをもつことで、次のアクションが鮮明になり、将来性にも大きな違いが出てきます。 情報をコントロールすることの重要性は、企業も個人も同じ。情報活用が、今後のキーワードです。

西澤 茂 経済学部 経営学科 教授
西澤 茂(にしざわ・しげる)
経済学部 経営学科 教授

専門は、財務会計、国際税務。グローバルな事業展開をする企業の財務諸表情報の分析と国際間の企業取引の税務問題が研究対象。『「財務力」を鍛えるー会計学を完走する12のスキル』などの著書がある。

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