教員が発信する上智の学び

これまでとは異なる新たな視点で 世界を見つめるツールを手に入れる

子安 昭子
外国語学部ポルトガル語学科 准教授

いま、なぜブラジルなのか?

子安 昭子 外国語学部ポルトガル語学科 准教授

2014年のサッカー・ワールドカップ、16年の夏季オリンピックなど、ブラジルでは今後数年間、国際的なビッグイベントが目白押しです。その背景には、いったい何があるのでしょうか?

 例えばそれを探ることも、ポルトガル語学科で取り組むべき研究の一つといえるでしょう。私自身は、ブラジルの政治・外交を専門にしていますが、現在のブラジルの躍進は1990年代以降にこの国が遂げた変革の帰結ともいえる現象で、カルドーゾ、ルーラという2人の大統領が重要なファクターとなっています。彼らによる長期政権のもと、ブラジルは安定した経済成長を持続し、国際社会でのプレゼンスを高めてきました。「扇を広げた」ように広範で多面的な外交を展開し、最近はアフリカとの関係を強化する一方、大国アメリカに遠慮しない強さも持ち合わせています。

 サッカーやボサノバ、ファッション、貧困問題……。これらも確かにブラジルを象徴するものです。しかし、それに留まらず多様な顔を持つ南米の大国は、研究対象としても魅力的な地域なのです。

世界で約2億人が話す言葉

 私は、父の仕事の関係で高校時代をブラジルのサンパウロで過ごしました。それがポルトガル語との最初の出合いです。ポルトガル語はリズムがあって、日本人には比較的発音しやすい言語。最初は動詞の活用がややこしくて驚かれるかもしれませんが、政治経済などの専門用語に関しては英語から類推できるなど、学習上の利点もあります。

 上智大学の外国語学部のカリキュラムは言語と地域研究を両輪としているため、もちろん語学の習得を入り口に自分の興味のある分野に入り込んでいけます。例えば、私の授業では主な歴代大統領の演説を取りあげ、どんな表現を使っているか、何を訴えようとしているかを学習しました。身近な教材として、ほかに映画や音楽を授業に取り入れている先生もいます。

 ご存じかもしれませんが、ポルトガル語圏はポルトガルやブラジルだけでなく、アフリカ、アジアにまで広がっており、日本では現在、約21万人の日系ブラジル人が暮らしています。話者人口が約2億人にものぼるポルトガル語を学ぶこと。それは日本とはまったく異なる視点から世界を見つめるツールを手に入れることだといえるのではないでしょうか。

学びを活かせる場は拡大中

 ポルトガル語学科には、サッカーが好きでブラジルに興味を持ち、卒論までサッカーがテーマという学生もいます。しかしどちらかといえば、関連する国や地域の歴史、文化などを学ぶなかで、入学後に関心の焦点が移っていく、新しい研究対象を発見する、という場合が多いようです。

 世界遺産の関係でポルトガルに関心を持つ人や、アフリカで支援活動に携わりたいという人、日本に住む日系ブラジル人の医療や教育の問題に取り組むため自治体で働きたいという人……。カリキュラムには、そうした多様な希望をしっかり後押しする科目や演習が用意されています。

 基礎となる言語習得についても、毎日「基礎ポルトガル語」の授業を設け、そのうち3日間はネイティブが担当。残りの2日間は日本人教員が文法などを教えるという万全の体制です。それなりにハードなカリキュラムだとは思いますが、世界でブラジルへの関心が高まるなか、学びを活かせる場は拡大中。先輩たちの進路も金融機関やメーカー、商社などさまざまです。

 ポルトガル語学科での学びを通じて得るものは、あらゆるフィールドで活かせる、かけがえのない力となるはずです。

子安 昭子 外国語学部ポルトガル語学科 准教授
子安 昭子(こやす・あきこ)
外国語学部ポルトガル語学科 准教授

ブラジルの現代政治・外交を研究。主な論文に「多様化する対外関係と資源外交—グローバル・プレヤーへの変貌」(『資源国ブラジルと日本の対応』日本経済調査協議会、2009年)がある。

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