- 上智大学ダイジェスト
- 上智大学ダイジェスト(2016年12月)
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「世界を話そう‐女性官僚として生きて」を開催しました
ゲストは前厚生労働事務次官の村木厚子氏
11月28日、前厚生労働事務次官の村木厚子氏をゲストに迎え、前駐米大使の藤崎一郎特別招聘教授のモデレーターで「世界を話そう‐女性官僚として生きて」を開催しました。
村木氏は労働省(現厚生労働省)入省後、女性政策、障がい者政策などに携わり、雇用均等・児童家庭局長などを歴任。しかし局長時代に冤罪によって逮捕され、勾留期間は164日間に及びました。その長い勾留生活を経て裁判で無罪を勝ち取ったのち、女性初の厚生労働事務次官を務めました。
藤崎教授から職場の環境や女性としてキャリアを積む上で大切にしてきたことについて尋ねられると、村木氏は「新人時代、自身にお茶汲みをさせるかどうか配属先で議論になるほど女性が少ない職場だった」と振り返り、常に「性差ではなく個人として働くことを大切にしてきた」と述べ、「与えられた仕事をしっかりこなして周囲からの信頼を得ること」、「他者と比べることなく自身の成長を目指すこと」を重要な点として挙げました。
また、局長時代の冤罪事件について当時の心境を尋ねられると、「ある日突然、自分で何もできなくなったことに衝撃を受けた」と回答。「家族や同僚など、信じてくれる人たちに支えられた。負けてしまって一番辛いのは自分の子どもたち。私が頑張れば、子どもたちもその姿をみて頑張ってくれるという強い気持ちを持っていた」と語り、誰かのためにという気持ちを持つことで、逆境に打ち勝つことができたと振り返りました。
参加者との質疑応答では、母親として働くことで気をつけていることや女性の活躍のために必要なことについて質問されると、村木氏は「悩みすぎない、申し訳ないと思わない」と述べ、「悩むのであれば、どうやったら効率的に働けるか、家族の時間をどのように捻出するかというような生産的な悩みに切り替えて考える」とアドバイス。また、村木氏のライフワークが障がい者福祉となった理由について聞かれると、障がい者雇用の担当課長になったときに、「この分野で実現できていないことがたくさんあった。ひとつひとつ実現していく中で自身のライフワークになっていった」と述べ、障がい者雇用に際して問題だったのは障がい者個々の能力ではなく、社会の体制ができていないことだったと指摘しました。
終了後には村木氏による書籍へのサイン会も行われました。村木氏はひとりひとりに声をかけながら、記念撮影にも応じ、会場は終始和やかな雰囲気に包まれました。