私は英文学を研究しています。主な研究分野は詩ですが、随筆、ノンフィクション、ジャーナリズムといった他の文学作品も対象としています。
私が主に扱っているのがアングロフォン(英語使用者)の文字文化、すなわち英国およびアイルランド、米国、カナダ、オーストラリア、そして英語が使用されるあらゆる場所で書かれた文学作品です。
私の研究は講義内容とも密接に関連しています。私の講義では、アングロフォンの思考—大衆文化も含む政治的、社会的、美的思考—の特定の側面にはいかに深く複雑な歴史が存在するかを教えています。
私が興味を持っているのは、言葉の歴史とそれらの言葉で表現される思想です。英国人言語学者のリチャード・チェネヴィックス・トレンチは、言葉は生き物のように「根から成長し、語族という集団を形成し、人が『世界の誕生から現在まで行い、考え、感じている』あらゆることと関係・交錯している」と記しています[1]。私の研究とは、そうした生きた言葉の成長と交錯をたどることと言えます。
そのためには、長期的な視点で歴史を見る必要があります。近代英語はおよそ500年前に誕生しましたが、アングロフォン文化のルーツはそれよりずっと昔、主に古代ギリシャの神話と哲学やユダヤ・キリスト教の神秘主義と神聖法まで遡ります。中世にはイスラム教からも多大な影響を受け、後にはアジアやそれ以外の場所からの思想が押し寄せてきました。
アングロフォン文化では長い間、より広い世界への関心—時には妄想—がありました。これは海洋国家としての英国の発展とそれに伴う貿易、探検、拡大の欲求を起源としています。そして英語圏植民地が作られ、世界各国にアングロフォン—米国人、カナダ人など—が進出してゆくと、各々が自身と周囲の世界を異なる形で理解するようになりました。
人々は周囲の世界に興味を抱きながら、自らの心の中にも目を向けていました。4世紀の神学者ヒッポのアウグスティヌスは、精神とは思想家がどこまでも探究可能な洞窟や海がある風景の如き「深く広大な」場所であると表しました[2]。この考えを受け継いで20世紀末に登場したのが、「意識は主により深く広大な無意識に支配されている」とするジークムント・フロイトの心理学理論でした。
私が特に興味を持っているのは、神秘、不確実性、創造力を受容した19世紀初頭の英国ロマン派詩人の思想と遺産です。人間は多くのことを知っていますが、自身の理解を超えるものに遭遇した時にはその余白を埋めるものを作り出して空想にふけるものです。アングロフォン文学は、文学様式と大衆文化の両方でそうした空想に満ちています。私は現在、詩に含まれるそうした空想的要素が数千年前から20世紀初頭に新たな形態に展開されるまでいかに進化してきたかを研究しています。
2019年冬号
学生記者が、中央大学を学生の切り口で紹介します。
外務省主催「国際問題プレゼンテーション・コンテスト」最優秀の外務大臣賞に 及川奏さん(法学部2年)/赤羽健さん(法学部1年)
Chuo-DNA
本学の歴史・建学の精神が卒業生や学生に受け継がれ、未来の中央大学になる様を映像化
Core Energy
世界に羽ばたく中央大学の「行動する知性」を大宙に散る無数の星の輝きの如く表現
[広告]企画・制作 読売新聞社ビジネス局