私は中学生の頃から法曹への憧れを抱いていましたが、高校時代に理系科目に興味を持ち、大学でも学んでみたいと考えるようになりました。その頃、司法試験制度の見直しが進められ、他学部出身者や社会人経験を有する人が法曹になる意義や重要性が議論されるようになりました。そこで、私は、大学では応用化学を専攻したうえで、法曹を目指そうと考えました。大学4年生時には、長時間の研究をしつつ、法科大学院へ進学するための勉強も同時に行っていました。
法科大学院では、法律知識を座学で学ぶだけでなく、模擬裁判やロールプレイ形式の授業などで法曹三者の仕事を体験したり、様々な施設を見学したり、実務家として第一線で活躍されている方々の経験談を伺ったりと充実した日々を過ごすことができました。また、法曹を目指して切磋琢磨できる仲間に出会い、無事司法試験に合格できました。法科大学院での出会いは、非常に大きな財産となりました。
私は、司法修習後、企業で働く弁護士(企業内弁護士)として、石油事業会社に就職しました。法務部に所属し、プロジェクト支援、契約書のチェック、コンプライアンスの推進、紛争・各種相談対応などを行っています。
紛争を未然に防ぐための予防法務に注力できる点や、「当事者」として、事業部の人達と共に、案件や紛争について最初から最後まで関わることができる(法律事務所の弁護士は、ピンポイントで依頼を受けることが多い)点に魅力を感じ、企業内弁護士になりました。
実際に働く中で、特に、経営陣や事業部の人達と共に、事業活動を拡大・促進していくための戦略的な法的サポートができる点に非常に魅力を感じています。経営陣や事業部の人達が判断する際に、その判断材料として、リスクを適切に見積もったうえで提示したり、当該リスクを回避・低減するために取り得る方策を提案していますが、例えば、「新規ビジネスを始めたい」「M&Aをしたい」「(共同)研究開発を行いたい」というときに、法的側面からのサポートを行い、実際にプロジェクトが成功したり、商品化されたり、交渉がうまくまとまったときには、達成感があります。また、「いい判断ができ、案件が進んだ」「あなたが担当してくれてよかった」と感謝されたときや、案件の打ち上げに声をかけて貰えたときは、非常に嬉しく思います。
私の所属する企業は、石油や化学製品を取扱っており、大学時代に学んだ理系の知識も、商品やサービスの中身を理解するときや研究・製造に関する法的サポートを行う際などに活かされていると感じることがあります。
企業内弁護士の意義は様々あると考えますが、ビジネスの判断にはスピードが求められる中で、より良い交渉やリスク判断を行うために、弁護士が、「第三者」としてではなく、企業理念や戦略、商品を理解する「社員」として存在することにも意味があると考えています。私自身も「社員」として、会社の経営ビジョンや事業内容、案件の背景等を理解することに努めています。
私は、昨年から、都内の法律事務所に出向しています。法律事務所から企業へ出向するということは一般的に良くありますが、企業から法律事務所へ出向するという事例はまだまだ少ないかもしれません。
法律事務所では、訴訟対応を中心に、訴訟前の交渉業務や相続案件、事業再生、企業法務などを扱っています。
企業内弁護士として働いていた時は、予期せぬ損害を被ったり、紛争化したりしないために何ができるかを中心に考えてきましたが、法律事務所では、トラブルや紛争になってしまった案件について、どのように解決できるかを考えることが多いです。依頼者の「困っていること」をどのように法的な主張として組み立てるか、どのような証拠をどのように収集するか、裁判所に認めて貰うためにいかに説得的な主張をするかなどを考え抜く日々であり、非常に密度の濃い時間を過ごしています。
依頼者にとっては人生を大きく左右する問題であり、依頼者の人生観や気持ちを踏まえつつ、長期的な視点で共に最善の道を考えていくことの重要性を感じました。
法人が依頼者である案件では、「第三者」の「専門家」であるからこその、客観的な意見や提案を求められます。企業内弁護士としての経験が、事実関係の把握や具体的な提案に役立つ場面もありました。
訴訟対応や事業再生案件等の経験を重ねる中で、予防法務の大切さと難しさについて考えさせられました。今後、企業に戻りますが、これらの経験を活かして、これからも一層精進していきたいと考えています。
ひとことに、「弁護士」といってもその仕事の内容は多岐にわたります。私の経験もその中の一部ではありますが、企業内弁護士と法律事務所で働く弁護士を経験し、改めて、「弁護士」の業務の幅広さや、やりがいを実感しました。
近年、官公庁や地方公共団体で働く弁護士も増え、スクールロイヤーなどの導入も始まり、今後増々弁護士の多方面での活躍が期待されていると思います。皆様には、様々な可能性が広がっています。
法科大学院では、多くの実務家と知り合える機会がありますので、その方々のお話を聞くことで、ご自身がどのような法曹として活躍していきたいか、さらにビジョンを具体化できるのではないかと思います。
2019年冬号
学生記者が、中央大学を学生の切り口で紹介します。
外務省主催「国際問題プレゼンテーション・コンテスト」最優秀の外務大臣賞に 及川奏さん(法学部2年)/赤羽健さん(法学部1年)
Chuo-DNA
本学の歴史・建学の精神が卒業生や学生に受け継がれ、未来の中央大学になる様を映像化
Core Energy
世界に羽ばたく中央大学の「行動する知性」を大宙に散る無数の星の輝きの如く表現
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