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トップ>オピニオン>ダイバーシティと大学 連続公開講座「LGBTをめぐる法と社会─過去、現在、未来をつなぐ」

オピニオン

長島 佐恵子

長島 佐恵子 【略歴

ダイバーシティと大学

連続公開講座
「LGBTをめぐる法と社会─過去、現在、未来をつなぐ」

長島 佐恵子/中央大学法学部准教授
専門分野 イギリス小説、ジェンダー/セクシュアリティ論

中央大学ダイバーシティ宣言

 中央大学が2017 年10 月に「中央大学ダイバーシティ宣言」を策定したことをご存知の方はどのぐらいいるだろうか。「豊かな感性と人間力を備え、高度な専門性を有して国際社会に貢献できる人材の育成に今後も取り組む」ための指針として公表されたこの宣言の全文は大学公式ウェブサイトのhttp://www.chuo-u.ac.jp/usr/diversity/new window にあるので、未読の方はぜひ目を通していただきたい。

 こうしたダイバーシティに関する取り組みを表明する大学はここ数年大きく数が増えており、中央大学の宣言は他大学にやや遅れを取った感さえある。各大学がどのような取り組みを進めているのかをまとめた記事が、本年2月に「大学通信」から出ている。(https://www.u-presscenter.jp/2018/02/post-38811.htmlnew window

 これを見ると各大学がここ2、3年、様々な取り組みを「ダイバーシティ」という概念の下に位置付けてきていることがわかるだろう。

 中央大学の「ダイバーシティ宣言」では、大学という教育機関におけるダイバーシティへの取り組みは、具体的に「障害、病歴、経済状況、家庭環境、性別、性自認、性的指向、年齢、国籍、人種、言語、信念、宗教などによって、学びの機会が損なわれることがないような環境を整え」る責務として説明されている。このように、そうした環境が実現してはじめて、多様な人々が皆「個人の能力を最大限に発揮できる」ようになり、そこから「新しい価値が生まれる」という考え方は、教育機関だけでなく広く社会におけるダイバーシティに関する取り組みの基本理念と言えよう。

連続公開講座 LGBTをめぐる法と社会

 さて、「宣言」は具体的な行動につながってこそ意味がある。そしてそのためには、環境が整わないままではどのような人たちの学びの機会がそれぞれどのような形で損なわれるのか、逆に多様な人たちが皆個人の能力を最大限発揮できるとは具体的にどのような状態なのか、さらに言えば、取り組みの結果として生まれる新しい価値とはどのようなものなのか、個別にイメージを共有していくことが重要となる。その一助となるであろう企画が、上記の記事でも触れられている、本年5月より本学で開催される連続公開講座である。ダイバーシティに配慮した取り組みにおいて具体的な課題を考え理解する機会として、ここに紹介させていただきたい。

 筆者もコーディネーターとして関わっているこの講座「中央大学・LLAN 連続公開講座LGBT をめぐる法と社会─過去、現在、未来をつなぐ」は、「LGBT とアライのための法律家ネットワーク」(略称LLAN)という企業法務に関わる実務法律家のネットワークと本学が共催し、上述の多様性の中では主に「性別、性自認、性的指向」の領域で様々な側面から課題を検討する企画だ。5月から12 月まで、原則月に一回、全8回、土曜の午後に後楽園キャンパスで開催し、学生や教職員だけでなく誰でも無料で聴講可能である。(なお講座の詳細は以下のウェブサイト掲載のチラシでご確認いただきたい。http://www.chuo-u.ac.jp/aboutus/efforts/diversity/activity/lecture/llan/new window

 この講座の特色は以下のようなものだ。まず、法学・政治学・法律実務という領域は、社会的公正を考えるのに不可欠であるにもかかわらず、ご存知のとおり専門家の助けがないと学ぶことが難しい。その第一線で活躍する研究者と実務家が、それぞれの専門性を活かしながらかつ一般参加者にもわかりやすいように具体的な社会の課題を解説するという内容で、全8回という規模も合わせると画期的なものだと思う。そして、現在だけでなく過去の重要な出来事を振り返る内容も盛り込むことで、LGBT をめぐる現在の課題が解決される未来に向けて有益なコンテクストを提供する機会ともなる予定である。

 たとえば5月12 日(土)の第一回は、多くの方が判例としてご存知だろう「府中青年の家」事件の裁判について、当時大学院生ながら原告となった風間孝氏と原告側の弁護団を務めた中川重徳氏に当時を振り返っていただく。実は風間氏は中央大学文学部の出身だ。風間氏だけでなく、全体コーディネーターの谷口洋幸氏も学部から博士課程まで本学の出身である。お二人を筆頭に、講師陣には中央大学で学んだ後に各所で活躍している方も多く揃え、広く社会におけるダイバーシティの取り組みに寄与する人材育成の場としての大学の役割を可視化できればとも思っている。

 第二回(6月9日)はLLAN の主要メンバーが登壇し、ダイバーシティと企業法務の関わりについて最新の情報を提供する。その後も、行政の取り組み、立法の意味、法曹の役割等、多くの重要なテーマが続く。ダイバーシティの取り組みの最前線から、具体的問題を掘り下げ課題の解決に向けて考える場、「ダイバーシティと法と社会」について学びを深めるまたとない場となるこの講座に、ぜひ多くの方々にも足を運んでいただけるよう、心より願う。

長島 佐恵子(ながしま・さえこ)/中央大学法学部准教授
専門分野 イギリス小説、ジェンダー/セクシュアリティ論
東京都出身
1994年東京大学文学部卒業
1997年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了
2000年ヨーク大学(英国)修士課程修了
中央大学法学部専任講師を経て2008年より現職
現在の研究課題は、主に20世紀前半の英国の小説におけるジェンダー/セクシュアリティにまつわる表象分析
専門分野はイギリス小説、ジェンダー/セクシュアリティ論、クィア批評

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