[PR]スイス時計見本市レポート④「モノ作りの原点」を見つめ直して
![©SIHH2019](https://yab.yomiuri.co.jp/topics/wp-content/uploads/2019/10/top.jpg)
毎春、スイスのジュネーブ(SIHH)とバーゼル(バーゼルワールド)で開かれる時計見本市は、新作発表会という枠を超え、国際的なラグジュアリーマーケットの動向を占う場としても注目されてきた。ところが、今年は有力ブランドが見本市から相次いで撤退し、見本市の意義そのものが転換期を迎えているように感じた。そうした中、各ブランドが「モノ作りの原点」を見つめ直して企画したユニークな商品に加え、女性用の新作についても触れておこう。
最初に取り上げたいのが、シチズンの新作だ。昨年のバーゼルワールドで年差±1秒というムーブメントを開発。それを今年は腕時計に搭載し、量産化することを予告していた。それが「ザ・シチズン キャリバー0100」として発表された。量産型としては最高峰のクオーツ式時計だが、見た目はいたってシンプル。 デジタル全盛の時代に、どんな時計作りができるのか? シチズンは「正確さ」に焦点を定め、実直な作業を通してハイスペックな腕時計を開発してみせた。その取り組みは、海外の時計ジャーナリズムの関係者からも高く評価された。
![シチズン「ザ・シチズン キャリバー0100」¥1,800,000(税別)、発売中](https://yab.yomiuri.co.jp/topics/wp-content/uploads/2019/10/シチズン500-1.png)
グランドセイコーも、手仕事の痕跡を強くとどめた限定商品が注目を集めた。機械式とクオーツ式の利点を融合させ、独自に開発した「スプリングドライブ」が20周年を迎えたのを記念した「SBGZ001」がその商品だ。信州の山々に積もった雪をイメージした「雪白(ゆきしろ)」という細密な装飾が文字盤に施され、レトロな雰囲気も漂わせて印象に残った。
![](https://yab.yomiuri.co.jp/topics/wp-content/uploads/2019/10/SEIKOアップ画像.png)
今年は、機械式時計の機構と密接な関係にある天体や宇宙をテーマにした新作も目に付いた。メテオライトと呼ばれる隕石(いんせき)を文字盤に使ったり、宇宙を連想させるブルーをキーカラーにしたり、様々な取り組みがある。
「アース・トゥ・スカイ」を今年のテーマにしているジラール・ペルゴは、直径47ミリのケースの中に12星座を描いた天球儀とデイ&ナイトを示す地球儀を内蔵した「コスモス」という新作を見せた。トゥールビヨンも搭載し、宇宙をそのままケースに閉じ込めたような超複雑なムーブメントはブランドの技術の高さを誇らしく象徴した。
![ジラール・ペルゴ「コスモス」¥38,020,000(税別)、11月発売予定](https://yab.yomiuri.co.jp/topics/wp-content/uploads/2019/10/ジラールペルゴ500.jpg)
以前に人気のあった商品の復刻や過去のデザインを参照した新作が目立つ中、オーデマ ピゲは全く新しいシリーズ「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」を発表した。「11.59」は日付の変わる1分前のことで、26年ぶりとなる新コレクション。3針、クロノグラフ、そして永久カレンダーなどの複雑時計もそろう。一見、普通の円形の時計だが、側面にミドルケースが隠されたユニークなデザイン。市場にこの時計がどのように受け入れられるか、しばらく目が離せない。
![オーデマ ピゲ「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ・クロノグラフ」 ¥4,450,000(税別)、発売中](https://yab.yomiuri.co.jp/topics/wp-content/uploads/2019/10/オーデマピゲ500.jpg)
ウィークリーカレンダーを搭載したのはパテック フィリップの「カラトラバ・ウィークリー・カレンダー5212A」。時刻や曜日に加え、先端の赤いT字型の長針が1年かけて53分割された週を表示する。ケースはステンレススチール製で、文字盤の手書き風フォントが独特の味わいを演出している。
![](https://yab.yomiuri.co.jp/topics/wp-content/uploads/2019/10/パテックアップ画像.png)
ファッションブランドからも注目すべき新作が発表された。シャネルは、2000年に誕生したJ12を全面リニューアル。セラミックのブレスレットとケースで話題となった時計の象徴的なデザインを引き継ぎながら、ムーブメントもより高機能なオリジナルに変えた。
![](https://yab.yomiuri.co.jp/topics/wp-content/uploads/2019/10/シャネルアップ画像.jpg)
また、近年のコレクションでトレンドセッターとなっているグッチは、イエローゴールドPVD ケースに配された3つの小窓から時刻や日付を確認できるレトロ風の腕時計を提案した。
![](https://yab.yomiuri.co.jp/topics/wp-content/uploads/2019/10/グッチアップ画像.png)
女性用の新作で華やかさを強調したのがショパールの「ルール・ドゥ・ディアマン」。オパールとダイヤモンドを組み合わせ、ハイジュエリーのデザインコードと自社製自動巻きムーブメントを絶妙のバランス感覚で融合させた。エレガントな印象だが、30メートル防水機能も備えている。
![](https://yab.yomiuri.co.jp/topics/wp-content/uploads/2019/10/ショパールアップ画像.jpg)
ロレックスの「オイスター パーペチュアル デイデイト 36」はブラウンダイヤルのグラデーションが美しく、華やかさを強調する。
![](https://yab.yomiuri.co.jp/topics/wp-content/uploads/2019/10/ロレックスアップ画像.jpg)
センチュリーの「ボレロ」はストラップの意匠が面白い。素材はカーフだが、特殊な加工を施し、表面がきらめく。時刻を知るという実用性に加えて、アクセサリーとしての要素も満たす新作だ。もっとも、ここ数年、デザイン上のジェンダーの境界線はあいまいになり、ケースの素材も従来品を小ぶりにすることで、男女で共用できる腕時計を出すブランドも目立つようになった。
![センチュリー「ボレロ」 ¥490,000(税別)、発売中](https://yab.yomiuri.co.jp/topics/wp-content/uploads/2019/10/センチュリー500.jpg)
ブルガリは、アジアの小柄な女性の腕に合わせて、「セルペンティ トゥボガス」を小ぶりにした新作を日本と韓国で限定発売する。
![ブルガリ「セルペンティ トゥボガス」ミニモデル¥1,159,000(税別)、発売中](https://yab.yomiuri.co.jp/topics/wp-content/uploads/2019/10/ブルガリ500.jpg)
今年、関係者を驚かせたのが、バーゼルワールドで中心的な存在だったスウォッチグループの見本市撤退。オメガやブレゲ、そしてブランパンなどの高級ブランドを数多く抱えていることもあって、見本市の存在意義が問われた。実際、グループが出展していた場所がレストランやプレスセンターになるなど雰囲気は大きく変わった。SIHHでも今年、リシュモングループ傘下のヴァン クリーフ&アーペルが出展せず、来年以降、オーデマ ピゲとリシャール・ミルが撤退を発表。
来場者の利便性を図ろうと、異なる時期に開かれていた両見本市を来年は同時期に連続して開催するという。ただ、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを活用した情報発信が一般的になり、富裕層への個別の手厚いマーケティングが増える中、高級品を扱う大規模な見本市の役割が変革期を迎えていることは間違いなさそうだ。
YOMIURI BRAND STUDIO Creative Editor / Writer 高橋直彦
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