2014年6月15日
2020年に開催される東京五輪・パラリンピックをきっかけに、活力ある日本を作り上げていく道筋を考える「未来貢献プロジェクト キックオフイベント」(主催・読売新聞社、後援・国土交通省)が5月14日、東京都渋谷区の津田ホールで開かれた。
日本オリンピック委員会の竹田恒和会長が「東京2020オリンピック・パラリンピック開催に向けて」と題し、オープニングスピーチを行った。その後、「観光の未来」をテーマに第1回のシンポジウム(協賛・ジェイティービー)が開催され、原田宗彦・早稲田大学教授の基調講演のあと、観光に携わる企業や行政関係者らと原田教授が話し合った。
オープニングスピーチ
東京2020オリンピック・パラリンピック開催に向けて
竹田 恒和氏(日本オリンピック委員会会長)
昨年9月、2020年の東京五輪・パラリンピック開催が決定した。
大会には三つのキーワードがある。安全・安心な大会を開催する「デリバリー」、活力あるダイナミックな祝祭を世界に披露する「セレブレーション」、ファッションから技術まで世界に発信する日本が、さらに革新をもたらして未来に貢献する「イノベーション」だ。
大会によって大きな経済効果が生まれる。東京都の試算では3兆円、15万人の雇用を生むと言われる。今後6年間、日本と東京は世界中から注目を浴びる。日本の素晴らしい文化、伝統、芸術、技術を世界に発信するまたとないチャンスだ。
日本の五輪であり、決して東京一極とは考えていない。全国のスポーツ施設を参加国の事前の合宿場として利用してもらい、各国との国際親善を地域おこしにつなげてほしい。聖火リレーでは、(ランナーたちが)東日本大震災から復興した東北を、世界中から受けた支援に対する感謝の気持ちを込めて走れることを願っている。
五輪後にどんなレガシー(遺産)を残せるかが最も大事だ。有形のものとしては、1964年の五輪で使った施設を改修し、11の新しい施設を造る。五輪後も多くの国際大会が開催され、子供たちに多くの夢を伝えることができる。
無形のものとして、次代を担う若者にスポーツの素晴らしさ、五輪の価値をぜひ伝えたい。スポーツを通じた健康的なライフスタイルは、医療費の削減にもつながる。
64年の五輪は敗戦から復興した姿を世界に広く示し、日本に大きな希望をもたらした。ただ、20年の意義は、新幹線を走らせたり、高速道路を造ったりすることではない。国際社会における日本のリーダーシップ発揮につながることが、大きな意義になる。
日本選手団の活躍も非常に重要だ。各競技団体と総力を結集して強化活動を行っている。ロンドン五輪ではボランティアの貢献が評価された。日本には「おもてなし」の感性があるので、もっと素晴らしいことができると期待している。
大会成功のため、オールジャパン体制でご協力いただけるよう、心からお願いしたい。
特別講演
藤井 健氏(国土交通省官房審議官)
2050年を目途にした、新しい国土のグランドデザインを策定している。一番の問題は人口減少で、もう一つは地方だ。人口が増える地点は全体の2%で、大部分は減少すると推計されている。
解決には、街をコンパクトにしてお互いをネットワークで結ぶという方法が考えられる。地方の半分以上の雇用を支えるサービス業は、一定の都市規模がないと成り立たない。複数の都市圏を高速道路で結んで一つと考えると、サービス業を残すことができる。さらに、技術革新も必要だ。
人口が減る中で、日本は、世界中から人に集まってもらえる場所にしなければ、存在感を維持できない。高齢化すると消費が減るが、外国人旅行客は多くのお金を落としてくれる。観光は極めて重要だ。
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