【特別対談】“交流”創出による「豊かな未来」の実現を目指して

2014年11月21日

 昨年、日本を訪れた外国人旅行者が1千万人を突破した。「訪日外国人旅行者2千万人時代」という“未来”に向けて、どのように取り組むべきなのか。株式会社ジェイティービーの髙橋広行社長と元マラソン選手の有森裕子さんが語り合った。

交流を深めるきっかけを提供

ジェイティービー 代表取締役社長 髙橋広行氏

髙橋 かつての旅行は「観光地へ行くこと自体」が目的でしたが、近年では「訪れた先で何かを学んだり、体験したりすること」が目的であり、旅行はそれらを達成するための手段となってきています。有森さんは競技を通じ、各地で様々な体験を重ねてこられたのでしょうね。

有森 マラソンは競技場の外に出て走るスポーツですから、各地の人々に応援してもらいながら、それぞれの土地を自分の足で知ることができました。ある意味で〝観光的な要素を持った競技〟だからこそ、最近は「旅行も兼ねて各地のマラソン大会に参加する」という人が増えているのだろうと思います。

髙橋 JTBグループは旅行を核に、「交流」を切り口とした事業を展開しています。「交流」にはいろいろな形がありますが、スポーツもその一つだと考えており、各地の「ご当地マラソン」をご提案したり、お手伝いしたりもしているのです。最近は競技の途中で地元の特産物を味わいながら走る「グルメラン」も話題になっていますが、これらも参加者同士、あるいは参加者と地域の人々が交流を深められる良いきっかけだと考えています。

旅行者増加のカギは地域の魅力づくり

「ハードとソフト両面の魅力向上を」

元マラソン選手 有森裕子氏

髙橋 日本は2020年までに、年間2千万人の外国からのお客様を迎えるという目標を掲げていますが、そこで考えなくてはいけないのが「いかにしてお客様に、各地域の魅力を伝えるか」ということ。いま訪日外国人旅行者が1千万人を少し超えただけでも、既に都内や大阪、京都のホテルなどが飽和状態で予約できない状況が生じています。これは東京から京阪神にいたる、いわゆる「ゴールデンルート」と呼ばれるエリアにお客様が集中しているからなのです。今後さらなる訪日外国人旅行者の増加に対応するには、各地域の魅力を掘り起こして外国人のお客様にご提案することが欠かせません。

有森 地域の魅力を高めるためには、まず地元の人たち自身が地域の良さを知ることが大切ではないでしょうか。例えば、地域でマラソン大会を企画する際、「この土地ならではの、こんな大会にしたい」という意見がなかなか聞こえてこないことがあります。せっかくその土地ならではの素晴らしい魅力があるのですから、まずそれを認識して、よそとは違う独自性を打ち出せると良いですね。

髙橋 その通りだと思います。JTBグループでは地域に埋もれた様々な魅力を地域の人たち自身に気づいてもらい、それを商品化して国内外からお客様を呼び込むよう努めています。そうすることで、全く新しい観光コンテンツが生まれることもあるのです。東大阪には、日本が誇る多くの町工場がありますが、そこを修学旅行生が訪れるプログラム「モノづくり観光」を地元とともに開発しました。学生たちは、社長や職人さんの話を聞き、本物のモノづくりを体験します。職人さんも自分たちの仕事を見直すきっかけになる相乗効果が表れ、訪れる修学旅行生は数十倍にもなりました。

「おもてなし」を磨いて観光立国ニッポンへ

髙橋 50年前の海外渡航自由化以降、JTBは世界中でネットワークづくりに励み、日本人が海外に出かけやすい体制を整えてきました。長年の貢献が評価されたハワイでは、2014年10月1日を「JTB DAY」として制定いただきました。

一方で、日本にお客様を呼び込むことも大切です。私たちは1912年の創立時から訪日外国人をお迎えするノウハウを蓄積していますから、外国人旅行者の増加にも尽力し、双方向の交流を生み出したいと思います。

有森 人種や価値観などの違うたくさんの人々に来てもらうためには、ハードだけでなく、私たちの意識など、ソフトの面でも大きく変わらないといけませんね。障がいを持つ人や困っている人を見かけたときには、すぐに「こちらですよ」とケアできるような感覚を養わなければいけないと思います。

髙橋 それはとても大切なことですね。私たち日本人は、もっと世界の人々について知ることが必要です。そのうえで、日本が誇る素晴らしさを世界に発信していき、相互理解を深めたいと思います。

JTBグループは、日本で培ったノウハウを世界各地での地域活性に活かし、世界規模での交流創出に貢献したいと考えています。人々の交流は、平和で心豊かな社会の実現につながっていくと信じています。

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