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読売EXPOフォーラム ~万博で輝く未来社会とSDGs~<前編>

PR SDGs 中島さち子 宮田裕章

2025年大阪・関西万博開催を翌年に控え、その意義や見どころ、その先の未来について考える「読売EXPOフォーラム」が3月11日、立命館大学大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)で開かれ、オンラインでも配信されました。「万博で輝く未来社会とSDGs」をテーマに、万博のプロデューサーや企業関係者、学生らが取り組みと未来に描く夢とを語り、会場は期待と熱気にあふれました。

※登壇者の所属・肩書は、イベント時のものです。

 

開会あいさつ

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 副事務総長
高科 淳 氏
2025年大阪・関西万博の重要な意義の一つは、国内外の様々な関係者が一丸となり、一緒に未来社会を創造、発信する場を提供することです。万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」、コンセプトは「未来社会の実験場」。単に展示を見るだけではなく、世界中の人が一堂に会して「いのち」について考えるとともに、様々なアイデアを交換し、未来社会を共創していく場となることを目指しています。

本日のフォーラムは、万博のテーマ事業プロデューサーである中島さち子さん、宮田裕章さんの講演、民間企業の事例紹介、宮田プロデューサーと学術機関のセッション、学生の皆さんの活動報告など幅広いプログラムです。大阪・関西万博で皆様と世界とのつながりを強化、あるいは新たなつながりを作るためのヒントとなることを祈念しています。

髙科副事務総長のあいさつには、2025年大阪・関西万博 公式キャラクターのミャクミャクが駆けつけた。
 

【特別トーク】 いのちを高める<揺らぎのある遊び> ~「いのちの遊び場 クラゲ館」の旅路と目指すもの~

■音楽家、数学研究者、STEAM教育家/大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー 中島 さち子 氏
東京大学理学部数学科卒業。高校2年生の時に国際数学オリンピックインド大会で日本人女性初の金メダルを獲得。幼少時よりピアノ・作曲に親しみ、大学時代に本格的に音楽活動を開始する。2017年、株式会社steAmを設立、STEAM教育の普及に取り組む。25年の大阪・関西万博ではテーマ事業「いのちを高める」のプロデューサーを務める。


大阪・関西万博では、遊び・学び・芸術・スポーツを通じて生きる喜びや楽しさを感じ、共に「いのち」を高めていく共創の場を創出するというテーマ事業「いのちを高める」のプロデューサーを担当しています。私たちのテーマ館の名前は「いのちの遊び場 クラゲ館」。いのちや創造性にとって大事なのは“揺らぎのある遊び”、建物も生きている、時に言葉で説明しきれないものの中にこそ大事なものがあるのでは……そんな会話の中から、クラゲというイメージが立ち現れてきました。

クラゲ館は2階建てで、入り口となる2階へは、いろいろな遊具を置いた丘「プレイマウンテン」を登っていきます。2階は象徴となる「創造の木」を中心にした、予約なしで入れる「五感の遊び場」。世界中のいろんな人の創造性が見られ、皆さんも遊べる空間になります。1階は予約制で、いのちや祭りをテーマにしたシアターなどを楽しんでいただけます。

生きとし生けるものは全て、多様な創造性にあふれています。社会や文化の中でそれを十分に発揮できる「創造性の民主化」を目指し、クラゲ館の旅路は、聞こえない方や見えない方、車いすの方など、国内外のいろいろな人と一緒に進めています。

例えば昨年はガーナに行き、ゴミを使って作品を作るアーティスト、長坂真護さんと一緒にゴミ拾いをしました。ガーナには先進国からたくさんのゴミが届き、そのためにスラムが生まれています。こうしたゴミ・環境問題について考えるきっかけになればと、クラゲ館ではペットボトルのゴミを集め、館内につり下げる大きなアート作品「海月(うみつき)」を真護さんと共に作ります。これには世界中の子どもたち、大人たちを巻き込んでいきたいと思っています。また先日は大阪で開催された「大和川・石川クリーン作戦」に参加し、持ち寄った楽器を鳴らしながらゴミ拾いをするという活動もしました。いろんな活動が重なり合い、社会を動かす一つの大きな力になればいいなと思っています。

「つくることで学ぶ」という考え方があります。ただ受け取るだけでなくつくる、何かをつくり出す。そうすると何か“自分らしさ”が見えてきたりするので、それを構築していくと。今は「つくる」と「つながる」がすごく大事な時代。与えられる勉強よりも、自分で何かをつくり出す科学者や芸術家、経営者、発明家のような学び方、生き方を小さいうちからしていこうという考え方が、科学や技術など教科横断的なSTEAM教育のベースにあります。

クラゲ館でもそんなワークショップができるかもしれません。この間、大阪府立桜和高校の皆さんと「自分の『好き』が世界を変える」というワークショップをしました。自分の「好き」をベースにした15分間の体験型ワークショップで、子どもたちが企画・運営したものです。クラゲ館「五感の遊び場」で、実際に彼らにやってもらおうと考えています。万博という大きな機会に世界と対話する体験をしてほしいし、それをきっかけにみんなが考えたり、動き出したりすることに期待しています。

他にも「未来の地球学校」と称していろんな先生たちや学校をつないだり、学び・遊びをつないだコミュニティーを構築したり、バーチャルクラゲ館の遊具をみんなで考えたりと、「つくる」に参画していただける仕組みをたくさん考えています。

生きているということは鼓動があるということ。それは音楽の種であり、重なり合って一つの大きな音楽になります。私たちはクラゲ館を未来の楽器だと考えながら作っています。その旅路は、クラゲ館から夢洲、大阪、日本、地球全体へと広がっていき、会期前から後まで、脈々と続いていく何かになるのではないでしょうか。そこに集う人たちといろんな会話をしながら、「いのち輝く未来社会」を一緒に作っていきたいと願っています。

 

【特別トーク】 Co-being いのち響き合う中で未来を描こう

■慶応義塾大学 教授/大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー 宮田 裕章 氏
1978年生まれ。専門はデータサイエンス、科学方法論、Value Co-Creation。データサイエンスなどの科学を駆使して社会変革に挑戦し、現実をより良くするための貢献を軸に研究活動を行う。専門医制度と連携し5000病院が参加するNational Clinical Database、LINEと厚労省の新型コロナ全国調査など、医学領域以外も含む様々な実践に取り組むと同時に、アカデミアだけでなく、行政や経済団体、NPO、企業など様々なステークホルダーと連携して、新しい社会ビジョンを描く。宮田が共創する社会ビジョンの1つは、いのちを響き合わせて多様な社会を創り、その世界を共に体験する中で一人ひとりが輝くという“共鳴する社会”である。


これまでの万博は経済発展を示すことが優先され、人工物が中心に置かれていました。人間は特に産業革命以降、経済の中にどっぷりと飲み込まれ、国も文化も企業も、いろいろなものが経済合理性を追求してきました。しかしこれからは、一人一人が響き合う未来をどう作るのかを考えていかなければいけません。どういう未来を作るのかという問いを立て、その上で課題解決策を持ち寄る。それがこれからの万博の姿なのではないでしょうか。

今回の万博は人工物ではなく、つながりの象徴として「静けさの森」という森を中心に置きました。ものを生み出し、かつ分かち合い、個体であるだけでなく生態系の一部として生きる植物。つながりの中で未来を共に作るという万博の理念、人だけではない「いのち」を感じられるものという意味において、この森は一つの象徴になっています。

世界中の国や地域から人々が半年間にわたって同じ場所に集うという機会を生かし、万博ではテーマウィークというものを設定しています。それぞれの利害を持ち寄って足元の価値だけを調整するのでは、どうしても相容れない部分が出てきます。そうではなく、目指すべき未来に向かって共にどう歩むのか、そのビジョンを共有するための取り組みです。

1週ごとに「文化」「コミュニティーとモビリティー」「食と暮らし」「健康とウェルビーイング」「学びと遊び」「平和と人権」「地球の未来と生物多様性」と続き、最後がまとめのウィークです。サステナビリティー(持続可能性)というと環境問題ばかりが注目されがちですが、それ以外にも大事な“未来の軸”を日本から6つ出し、その中でSDGsの先を考えていきます。万博の非常に重要な要素になるのではないかと考えています。

私たちのパビリオンのテーマは「Better Co-Being」です。ウェルビーイング(心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態)という概念がありますが、1人だけがご機嫌でも世界の未来がむしばまれるようではだめですし、サステナビリティーが担保されても、そこにいる人たちが苦しんでいるようでは長続きしません。ウェルビーイングとサステナビリティーが調和された中で共に生き、未来へ向かう。それが「Better Co-Being」という言葉に込めた考え方です。

ではパビリオンをどんな場にするのか、世界トップの建築家ユニット「SANAA」の妹島和世さん、西沢立衛さんと徹底的に議論しました。これまでの建築は壁を作り、それが公私を分け、時には力の象徴となる役割を果たしてきました。しかし、つながりの中で共に生きる社会においては、「広がりながら、つなげていく」ということが象徴的に重要な役割なのではないか。そう考えた結果、天井も壁もない、森そのものと溶け合うようなパビリオンになりました。

雨のときは雨のときで、夜は夜で、訪れた人は違う体験をすることになります。屋根がないことを心配される方は多いでしょうが、雨も体験の一部として心を動かされるようなものを作ろうと考えています。Co-being、共に生きるという感覚をこの中で体験しながら、一人一人がそこに共鳴し、未来につながっていく体験をしていただこうということです。

この万博は、誰かが何かを表現するという以上に、未来につながる一つのきっかけの場になるといいなと思っています。ここに来てくださった人たちが未来を感じる、あるいは一緒に何かを作る。会期が終わる6か月先に、未来につながっていくものが作られていくと、すごく素敵なんじゃないでしょうか。関わった企業が万博を通して、SDGsの次、新しい未来につながるようなビジネスを作っていくことも一つです。ただ、それ以上に子どもたちを含めた来場者の人たちが、未来の多様な可能性を感じながら感動し、ワクワクして次の時代を作る。そういう対話の場になるといいなと思っています。

 

【事例紹介】 森羅万象をデジタル化する~リアルな時空を未来へ~

■クモノスコーポレーション株式会社 代表取締役社長 中庭 和秀 氏
長崎県生まれ。1995年、阪神淡路大震災の復興寄与を志して創業。“測れないものを測る”をモットーに、多数の特許技術を駆使して測量のデジタル化を牽引するとともに、日本でいち早く3次元計測を取り入れたパイオニア。国宝や文化財のアーカイブなどにもフィールドを広げ、日本で圧倒的No.1の実績を誇る。大阪・関西万博では「会場整備参加」第1号協賛契約を締結し、3D技術を用いて会場全域の基盤測量を担当。開幕に向けて全パビリオンを3Dデータ化し、バーチャル万博の公開を目指す。

中庭 和秀 氏

熊本城の「奇跡の一本石垣」は、2016年の熊本地震の際、微妙なバランスで城を守った石垣です。修復工事はとても難しく、倒壊した状況をデジタルデータ化してシミュレーションする必要がありました。それを行ったのが弊社です。11年の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故の際も、弊社の技術で原発内の事故状況を精巧に3次元化し、復旧・復興に活用されました。15年にネパールで大震災があった時には、現地へ測量に行っています。なぜ弊社は復興支援のためにまず駆けつけるのか。それは弊社が1995年、阪神・淡路大震災の復興支援のため大阪府箕面市で創業した会社だからです。

「森羅万象をデジタル化する」というコーポレートミッションの下、文化財や歴史的建造物、スポーツ施設、さらには街全体まで、3000件を超える様々なものをデジタル化してきました。360度カメラで撮影しながら1秒間に200万点を1ミリ精度で計測するため、対象物をリアルに感じながら、自由視点で能動的に見ることができます。アバターを作れば、たとえば京都・清水にある高級ホテル「ザ・ホテル青龍」の中を見て回るような体験ができ、さらに前身の小学校時代の画像を重ね合わせ、往時へ“タイムスリップ”していただくことも可能です。

計測スピードも上がってきており、150㌶の大阪・関西万博会場であれば、24 時間でデジタル化することが可能になりました。私たちはこの技術を生かして2025年大阪・関西万博の全てのパビリオンをデジタル化し、1000年後の未来まで伝えたいと思っています。






<主 催> 読売新聞社
<協 力> 読売テレビ
<協 賛> クモノスコーポレーション、小豆島ヘルシーランド、住友電気工業、西尾レントオール、パソナグループ、村田製作所、リーフ・パブリケーションズ、立命館大学
<後 援> 大阪府、茨木市、関西経済連合会、関西経済同友会、大阪商工会議所、2025年日本国際博覧会協会、 関西SDGsプラットフォーム