キャッシュレス社会へ好機
日本国際博覧会協会 参事 谷川淑子さん
読売新聞大阪本社版朝刊
2025年大阪・関西万博は、会場内の支払いを全面的にキャッシュレスにする初めての万博となる。日本のキャッシュレス化は世界的に遅れていると指摘されており、経済産業省近畿経済産業局から日本国際博覧会協会(万博協会)に出向して、キャッシュレスの取り組みを担当する谷川淑子氏は「万博を機に日本のキャッシュレス化を強力に推進したい」と意気込む。
会場内では、クレジットカードや電子マネー、スマートフォンを使ったコード決済を含め、国内外の約60種類が利用できるようになる予定だ。これらを持っていない人には、会場内に設置する専用端末でプリペイドカードを購入して使ってもらう。
キャッシュレス推進の一環で、万博協会は独自の電子マネー「ミャクペ!」を用意している。スマートフォンにアプリ「EXPO2025デジタルウォレット」をダウンロードすると使える。会場内では、専用サイトに顔の画像を登録しておくと、決済端末に顔を近づけるだけで支払える「顔認証決済」も可能となる。
「ミャクペ!」は今年7月から、全国のコンビニやスーパーでも利用できるようになっている。万博協会は、電子マネーの利用状況に応じて、会場内で特別な体験やサービスが受けられるプログラムを検討中だ。谷川氏は「手ぶらで決済できる顔認証は、とても未来感がある。アプリのサービスやベネフィット(利益)を通じて万博に関心を持ってもらい、来場のきっかけを作りたい」と話す。
キャッシュレス決済は釣り銭のやりとりが必要なく、レジの混雑緩和につながるほか、現金を管理するコストが減ることで店側の負担が軽くなり、スリなどの盗難被害が軽減できる利点もあるとされる。世界的に導入が進んでおり、キャッシュレス決済の割合は、韓国が9割、中国は8割、米国や英国も5~6割に達している。一方、日本は4割弱と遅れているのが実情だ。
万博は国内外から約2820万人の来場を見込む。谷川氏は「万博で得られた膨大なデータはレガシー(遺産)となる。万博後は民間の力で有効に生かし、キャッシュレス化をさらに進めてもらいたい」と期待する。
(都築建)