ごみからメタン 脱炭素
大阪ガス執行役員 幡中宣夫氏
読売新聞大阪本社版朝刊
2025年大阪・関西万博で、大阪ガスは会場内の生ごみから出る二酸化炭素(CO2)を使って都市ガスの主成分となるメタンを作り、会場内で活用する事業に取り組む。担当する幡中宣夫執行役員は「カーボンニュートラル(脱炭素)につながる技術を通して、都市ガスの未来像を示したい」と意気込む。
「メタネーション」と呼ばれる技術で、CO2と水素を合成してメタンを作り出す。メタンを燃やすとCO2が発生するが、原料のCO2と相殺されるため、大気中のCO2は増加しないとされる。再生可能エネルギー由来の水素を使えば、化石燃料の使用をゼロに抑えることができる。
都市ガスは元々、メタンを混ぜて作られており、合成メタンにはガスを使う機器や配管をそのまま利用できる利点がある。大ガスは50年に供給する都市ガスの90%を合成メタンに置き換える方針を掲げており、幡中氏は「大きな再投資が必要なく、社会的なコストを最低限に抑えられる。『知らない間にメタンに移行していた』というのが理想だ」と強調する。
こうした取り組みの一環として、大ガスは万博会場にメタネーションの設備を設ける。会場内の生ごみのほか、大気中から集めたCO2を活用して一般家庭170世帯分の消費量に相当するメタンを生産し、調理場や、ガスから電気と熱を作るコージェネレーション(熱電併給)設備に供給する計画だ。幡中氏は「エネルギーの地産地消を実現したい」と力を込める。
すでに会場隣の人工島・舞洲(まいしま)(大阪市此花区)にメタネーションの設備を整備しており、実証実験を進めている。設備は年内にも万博会場内に移設し、来年4月の開幕に合わせて稼働させる予定だ。
万博の会期中、来場客にメタネーションの設備を見学してもらうことも検討している。設備と合わせて、日本ガス協会が出展する「ガスパビリオン おばけワンダーランド」を巡るツアーを組むことを想定している。
幡中氏は「見学してくれた子供たちの中から、メタンを進化させる『未来の技術者』が生まれれば、これほどうれしいことはない」と目を輝かせる。
(寺田航)