防災も 環境も 未来紡ぐ繊維
帝人フロンティア 産資戦略マーケティング部 小林令奈氏
読売新聞大阪本社版朝刊
帝人フロンティアは、帝人グループの一員として、繊維製品や産業資材などを扱っている。繊維といっても、衣類に限らず、インテリアや建物の断熱材、自動車などにもプラスチックの補強材料などに使われており、産資戦略マーケティング部の小林令奈氏(42)は「縁の下の力持ちの素材」と話す。
2025年大阪・関西万博では防災、環境をテーマに、3種類の商品を提供していく。
一つは、災害時に仮設テントとして使える「陰圧エアロシェルター」で、空気を入れるだけで簡単に設置できるのが特徴だ。非常に軽量で取り扱いやすく、災害時の対策本部用として使える。
内部の空気を外に漏らすことなく、浄化してから排出する仕組みも備えており、多くの人が集まる万博会場では、「二次感染リスクを低減できる救護用テントとしても活用可能」(小林氏)という。
もう一つが、普段は毛布として使い、けが人や病人が出たときには担架に早変わりさせられる毛布「もうたんか」。穴に手を差し込むだけで「もう担架になる毛布」ということで名付けたもので、普通の担架では移動しづらい狭い階段などでも動きやすい。
傷病者の体を冷やさない機能面だけではなく、火災発生時にも使いやすいよう難燃素材を用いる工夫も凝らした。
万博は夏場を通して開催されるため、日差し対策が欠かせない。会場の休憩場所などに常設するパラソル「SOLSOL(ソルソル)」は、布地に特徴を持つ。同社が、リサイクル素材の用途拡大や繊維から繊維を生み出すリサイクル技術の開発を手がけてきたことをいかしたもので、ペットボトルからリサイクルした素材を使っている。
様々な素材が紡がれ、つながることで繊維という素材になる。それを織物にすることで、風合いや機能といった魅力を生み出す。小林氏は、「万博も、世界中の人々や文化が交わり、つながることで、新たな未来を紡ぎ出すきっかけとしたい。在阪企業として、万博を盛り上げ、世界に対する日本の発信力を高めることにもつながれば」と意気込む。
(久米浩之)