若者の提案 次代につなぐ
慶応大教授 宮田裕章氏
読売新聞大阪本社版朝刊
2025年大阪・関西万博では、「いのち輝く未来社会のデザイン」を具体化する八つの「シグネチャーパビリオン」が建設される。「Better Co‐Being」と名付けたパビリオンでプロデューサーを務める宮田裕章・慶応大教授は「一人ひとりが豊かに輝いて生きるために未来はどうあるべきか。(万博は)その手がかりになるはず」と話す。
宮田氏は、データサイエンスが専門で、医療政策などを研究。コロナ禍では、厚生労働省と無料通信アプリ「LINE」による全国調査にも関わった経験があるほか、JR大阪駅に直結する再開発エリア「うめきた2期」(グラングリーン大阪)のアドバイザーも務めている。
パビリオンは、万博会場の中央に設けられる緑地「静けさの森」の一角にあり、あえて天井や壁をつくらない。一般的な建物の概念を超えた異色のデザインを採用する。名称の「Better Co‐Being」には、より良い未来に向かって共に歩くという意味を込めた。
人が何らかの行動をすると、人工的に「虹」をつくり出す仕掛けも用意するなど、来場者の体験も重視している。宮田氏は「環境問題は、我々の負の行動の積み重ねによって引き起こされた。人々が共鳴し、好ましい行動を積み重ねることによって、前向きな未来をつくることもできる」と話す。協力して虹をつくり出す体験を通して、人が共鳴し、実現できる未来を描きたい考えだ。
宮田氏は、今回の万博には、これまでとは違った意義があると指摘する。「従来の万博は経済的なプロダクト(製品)を持ってきて広める意義が大きかった。これからは経済のための技術ではなく、人権意識を高めたり、ウェルビーイング(心身が健康で幸福な状態)につながったりする『未来につながる手段』を持ち寄ることが重要だ」と訴える。
特に、来場する若者たちには期待を寄せている。「若者には感じるだけでなく、提案してもらいたい。彼らが感じたことを次の世代につなげていくことができれば、ポジティブな何かは生まれていく。万博が、そのプロセス(過程)になればいい」と話す。
(寺田航)