新たなデザイン「共創」で
Co―DesignChallenge アドバイザー 服部滋樹氏
読売新聞大阪本社版朝刊
万博での特別プログラムとなる「Co―Design Challenge」は、会場運営に、企業や団体の「共創」から生み出されたモノやサービスを活用していく試みだ。58の企業・団体から寄せられた計79件の提案の中から、ベンチやゴミ箱、トイレなど十数件のプログラムに絞り込んでいる。未来社会の推進につながる、できるだけたくさんの事例を体感できるように取り組んでいく。
畑違いの人たちが協力し合い、異なるジャンル(分野)の技術を組み合わせる共創からは、新たなものが生まれる。例えば、サプライチェーン(供給網)を見える化する試みだ。
具体的には、会場内に30台の木製ベンチを設置する。腰掛けた人が、QRコードを読み取れば、使われた木材がどこでどんな林業家に育てられ、どういったルートで製材されたのか。デザイナーは誰で、どう製作されたかがストーリー仕立てで分かるような仕組みだ。
それによって、SDGs(持続可能な開発目標)で言うところの「つくる責任」を達成できるし、植林をする人や木を切る人、工場で作る人、来場者らの間に新たなつながりも生み出せる。会期後に、移設することで、レガシー(遺産)にもなる。
他にも、大量に廃棄されているホタテの貝殻を材料にした防災用ヘルメット、浄化水を作る技術者らと協力し、下水を浄化して肥料として使えるようにするトイレといったプログラムの実現も目指している。
簡易トイレや飲み物に使うカップなどに限らず、大規模イベントではその場しのぎのものが多い。そこに再利用という意識が芽生えるような体験を取り入れるだけで、意識を変えるきっかけになる。そうして、「環境」や「製造」に対する考え方がこれまでと違う流れになっていけば、新たな産業が生まれる可能性も出てくるのではないか。
戦後、デザインは社会の不便を解消し、便利にしていく役割を担ってきたが、消費者の意識は変わってきた。万博の来場者には、共創から生み出される多くの事例を通じて、「私ならこんな未来を選択する」と思ってもらえるような新たな社会のデザインを見せたい。
(聞き手 升田祥太朗)