人と人が重なる楽しさ
三菱総合研究所 万博推進室長 今村治世 氏
読売新聞大阪本社版朝刊
三菱総合研究所は、日本国際博覧会協会(万博協会)から受託した基本計画の策定業務などを通じて、万博と関わっている。このほか、万博についての全国意識調査を半年ごとに実施し、国民の関心度の高まり具合を調べている。
大阪・関西万博の開催が決まった時、私は別の企業から大阪府庁に出向中だった。その後、万博協会に出向した経験もある。運営する組織の「内部」を身をもって感じつつ、万博に向けて何ができるかについて考えてきた。
その中で浮かんだキーワードが、「人の博覧会」だ。大阪はもちろん世界には面白い人たちがたくさんいる。国と国が張り合うのではなく、その境を超えて人と人とがつながりあうことはとても楽しいはずだ。世界の国や地域が参加する催しとして長い歴史がある「万国博覧会」で、今回は人同士が有機的につながるような状態を作り上げていきたい。
私は三菱総合研究所での立場とは別に、一般社団法人「demoexpo(デモエキスポ)」の理事としても万博に関わっている。色々な会社や組織の人が参加して、「せっかくの万博なので新しいことをやってみよう」というのが活動の趣旨だ。
万博に興味がある人たちが集まって語り合うイベント「エキスポ酒場」はその一環で、既に50回ほど全国各地で開催した。万博を新しい事業につなげるきっかけ作りの場となっている。このほか、多くのメーカーが企画や製造に参加し、大阪の新しい土産を作るプロジェクトを進めている。
デモエキスポでは、大阪の街そのものをパビリオンに見立てた仕掛け作りにも取り組んでいる。万博の来場者には、会場だけでなく街中にも足を運び、地元の人たちともぜひ話してもらいたい。会場と街が一体となる新しい万博の形を示すことで、来場者が大阪の普段の魅力を感じ、万博が終わった後でも大阪のファンが増え続けられるようにすることが大事だ。
今回の万博は大阪を舞台にした全国イベント。訪日客たちに「日本はやっぱりすごいな」と思わせるとともに、「そう来たか」と言わせるような場面を作りたい。今、色々な人たちが必死になって開催に向けて取り組んでいるので良いものができると信じている。
(聞き手 山村英隆)