新技術の社会還元 宿題
関西経済連合会会長 松本正義氏
読売新聞大阪本社版朝刊
大阪万博が開催された1970年に関西の域内総生産(GRP)は日本全体の約20%を占めていたが、今は16%を下回っている。2025年大阪・関西万博をスプリングボード(跳躍台)として関西経済を活性化させ、GRPをもう一度20%以上に引き上げたい。
しかし、「万博をやったから関西が良くなる」というのは少し甘いんじゃないか。1970年の万博後、関西経済は良くなると言われたが、全く反対になった。2025年の万博では、健康や医療、水素、AI(人工知能)、多言語翻訳といった様々な技術やアイデアが披露される。これらをいかに社会実装していくかが大きな宿題だ。
今年9月に先行開業するJR大阪駅北側の再開発区域「うめきた2期」でイノベーション(技術革新)創出の役割を担う「うめきた未来イノベーション機構(U―FINO)」を活用し、万博で示される技術を発信していきたい。万博閉幕後に実用化のプロセスを考えたり、全国に浸透させたりするための組織づくりも検討する。
歴史と伝統があり、観光資源が集積している関西の魅力発信も必要だ。関西経済連合会が参画する近畿2府4県と福井、三重、鳥取、徳島4県の観光地域づくり法人(DMO)の関西観光本部では、万博の来場者に各地域への観光を促すため、それぞれの見所を紹介する動画や旅行商品づくりに取り組んでいる。
昨年は機運醸成のための活動で全国の経済団体を回ったが、まだ盛り上がりは関西に限られていると感じた。北海道や東北、首都圏でも機運を高めていかなければいけない。万博会場の夢洲(ゆめしま)でパビリオンが出来上がってくることが強力な機運醸成になるので、スムーズに建設してもらいたい。
今年は開幕に向け、重要な詰めの作業をする1年になる。日本国際博覧会協会(万博協会)や、万博に深く関わっている人たちが決意して取り組まないと間に合わない。前売り入場券の販売目標は1400万枚で、経済界は700万枚を担当する。関経連は先頭に立ち、最大の努力をして達成したい。
(聞き手 升田祥太朗)