未来へアイデアの種まき
堀場製作所常務執行役員 堀場弾 氏
読売新聞大阪本社版朝刊
計測機器メーカーである堀場製作所の技術や製品は、普段の生活ではなじみが薄いかもしれないが、ありとあらゆるところで息づいている。例えば安全で健康な生活に寄与するため、水や空気が汚れていないかを調べたり、スマートフォンや自動車に欠かせない半導体の品質検査にも使われたりしている。
万博は、最先端の技術やアイデアなど未来社会につながる種が世界中から集まる場だ。当社は、アンドロイド(人間型ロボット)の第一人者として知られる石黒浩・大阪大教授がプロデューサーを務めるパビリオンに協賛する。
当社の起源は、祖父の堀場雅夫が1950年に開発した水の性質を計測するpHメーター。パビリオンは、水が建物全体をベールで覆うように流れる外観が特徴で、水という共通点がある。水の大切さや、どうすれば生活にメリットをもたらすかを感じてほしい。
パビリオンのテーマは、50年後の未来や生き方を、「いのち」を通じて考えようということ。企業活動のように3年、5年といった少し先の未来ではなく、50年先の未来の世界を作るためにどういう貢献ができるかを考える。
そのために、社内では70年の万博後に生まれた20~40代の若手メンバー27人でプロジェクトチームを作った。今までにない発想や考え方を取り入れ、今後の事業の方向性を導くきっかけを模索している。当社の70年余りの歴史の中でも大きな実験の舞台になる。
当社が得意とする自動車の排ガスを分析する装置は、当初は人間の呼気を分析する医療用機器を転用して始まった。世界的に需要が伸びている半導体製造装置向けの機器は、ガス分析に使われていたものが起源だ。当社の社是である「おもしろおかしく」を貫くことで、当初は思いもよらなかった方向へ花開いている。
以前と比べて、現在は技術の進展のスピードが非常に速いが、これまで培ってきた技術は車の電動化やエネルギーの多様化、医療などにも応用できる可能性がある。さらに、今は思いつかないようなアイデアの種を見つけ、「おもしろおかしい未来」を実現するきっかけとしたい。
(聞き手 仁木翔大)