食べて生き生き 原点表現
大阪外食産業協会会長 中井貫二氏
読売新聞大阪本社版朝刊
大阪外食産業協会は外食関連企業で構成している。2025年大阪・関西万博に出展するパビリオンでは、大阪らしく「コテコテ」の食文化を表現するとともに、全世界に食の素晴らしさを発信したい。一時は辞退を検討したが、昔から天下の台所と言われ、食の都である大阪で開かれる万博には、なんとしても出展しようと決めた。
パビリオンは2階建てで、1階は来場客に八つのブースで食事を楽しんでもらえるフロアにする。万博でしか味わえないメニューも考えている。2階は展示フロアで、多くの人が関わって食べ物が提供されていることがわかるような、食にまつわる裏側を体験してもらう内容を予定している。大阪の食の歴史にも触れてもらえるようにしたい。
前回の大阪万博が開かれた1970年は、日本初のファミリーレストランが開業するなど「外食産業元年」とされている。食に関連する様々な企業が勃興し、ファストフードやファミレスが急速に普及するきっかけとなった年だ。それから55年後となる今回の万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」やSDGs(持続可能な開発目標)に沿った未来の食を提示する。
万博にとって食は重要な要素だと思っている。食の素晴らしさは食べる人、提供する人、すべての人たちが幸せになれる点にある。おいしいものを食べて、笑って、それが生命力につながっていく。食の原点である「食べる」「笑う」「生きる」の三つの要素をパビリオンで表現したい。
コロナ禍からインバウンド(訪日客)が回復し、街はにぎわいを取り戻している。2年後が楽しみだが、人手不足や原材料高の影響により、今年に入って飲食店の倒産が急増している現状もある。
今までの外食産業のあり方の延長では、将来生き残っていけない。従業員の労務管理など店舗運営ではDX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化を進めつつ、対面サービスによる付加価値も高める必要がある。万博だけでなく、その5年後に予定されているカジノを中核とする統合型リゾート(IR)の開業に向けても弾みがつくような環境整備を進めたい。
(聞き手 藤井竜太郎)