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高校生特別セミナー レポート 再生医療のいまを知り、これからを考える ~高校生10人、大学病院と製薬会社を訪問~
読売新聞大阪本社版朝刊
未来を担う世代に再生医療の現状や取り組みを知ってもらおうと、「日本再生医療学会」と再生医療関連企業などで構成する「再生医療イノベーションフォーラム」は7月29日、高校生特別セミナー「再生医療を知ろう、考えよう」を大阪府吹田市で開催しました。大阪府と兵庫県の計3校から、医師志望や医療分野に関心のある1、2年生10人が参加。大学病院での講義、製薬会社の施設見学などを通して再生医療への理解を深め、その可能性について学びました。
午前の部 大阪大学医学部附属病院
心不全治療を支える 「細胞シート」
大阪大学医学部附属病院に集まった高校生たちはまず、心臓血管外科で再生医療に20年以上取り組む宮川繁教授の話を聞き、心不全に対する外科治療を例に、再生医療の可能性を考えました。
宮川教授はまず、重症化した心不全の治療法が、かつては「人工心臓」と「心臓移植」の二つだったことを紹介。人工心臓は、昔使用されていた体外式の場合は行動制限が強いられていたものの、近年は、植え込み型人工心臓が開発され、「帰宅できるなどのメリットは広がったが、感染や脳出血などの課題がある」ことを説明しました。心臓移植は深刻なドナー(臓器提供者)不足により、「移植登録後、欧米なら数か月で手術されるのに日本では5年以上待ち、その間に亡くなってしまう人もいる」という厳しい現実を紹介しました。
こうした課題に対し、宮川教授は「再生医療」の可能性に早くから着目。培養した細胞を1枚のシート状にして心臓の表面に貼り付ければ、心臓の動きを助けられるのではないか。東京女子医科大学と共同で2000年頃から基礎研究を重ねた結果、07年、体外式の人工心臓をつけていた心不全患者に、筋肉細胞から培養した細胞シートを初めて投与。手術は成功し、人工心臓を外して生活を行えるようになりました。(※)
当時は「世の中のコンセンサス(合意)を得るのに非常に苦労した」と振り返る宮川教授。これまでなかった技術だったため、「手術の許可を得るために、何回も何回もデータを大学の倫理委員会に出して安全性を説明した」そうです。
※現在、阪大病院では同様の手術・治療は行っておりません。
再生医療で臓器つくり 困っている患者を救う
また、06年に京都大学の山中伸弥教授が発表したiPS細胞(人工多能性幹細胞)について、宮川教授は「再生医療における革命」だったと説明。神経や目、軟骨など様々な細胞をつくれる点で、その後の再生医療の進歩につながっていることを紹介しました。
「再生医療を始めたのは、(移植する)臓器がなかったから。細胞シートができて、今は細胞から臓器をつくる技術の研究も進んでいます。みなさんの中で医師になる人がいたら、20年後ぐらいに(その臓器が臨床に)応用されているかもしれません。これをやるんだ!と目標を定め、困っている患者さんを救ってください」と宮川教授がエールを送ると、高校生たちはうなずきながら聞き入っていました。
高校生たちはこの後、手術着に着替えて手術室に移動。手術ロボットが外科医の動きを忠実に再現する様子などをモニター越しに見学しました。
午後の部 住友ファーマ株式会社
企業が取り組む再生医療 その現場を知る
午後は、製薬会社「住友ファーマ」の施設に移動。高校生たちは、再生医療への企業の関わり方を学びました。
2018年に完成した同社の再生・細胞医薬製造プラント(SMaRT)は、世界初のiPS細胞由来製品の商用製造施設です。プラント長の米田健二さんは、細胞の培養は無菌状態で行う必要があり、「作業室への入室には徹底した衛生管理を行っている」ことなどを紹介。また、一般の薬には「1日に10万錠」製造できるものもありますが、細胞製品は「数か月かかって数人分」しか培養できず、大量生産できない大変さにも触れました。
「再生医療製品の提供を可能にするために製薬会社単独ではなく、原材料、投与用器具、輸送など様々な企業からこれまでの薬以上に多くの技術協力を受ける必要があります」と連携の必要性にも力を込めました。
プラント見学では、VR(仮想現実)ゴーグルを着け、入室できないエリアにも〝潜入〟。見学後は、iPS細胞を顕微鏡で観察したり、作業服を着て細胞培養を疑似体験したり。高校生たちは初めての作業に楽しみながら取り組みました。
参加した高校生からは、「大学病院と製薬会社の両方を訪問でき、幅広い連携を間近で見ることができた」「iPS細胞を利用した治療は可能性が無限大。僕も将来は再生医療で世界に貢献していきたい」などの感想が寄せられました。
再生医療って何?
再生医療とは、病気や事故などでダメージを受けた組織や臓器を再生させ、機能を回復させる治療です。「臓器移植や人工臓器という方法があるのでは?」という話になりますが、臓器提供者と受け取る移植希望者双方の身体に負担がかかります。また移植できない臓器もあります。このため、重い疾患や障害に対する新しい治療手段として再生医療の期待度が高まっているのです。
体験後の感想~わたしたちが感じたこと~
◆ 再生医療は夢のある医療だと思いました。でもそれは医師だけではできなくて、製薬会社をはじめとする企業との関わりが大事だと知りました。僕も連携の取れる医師になりたいです。(甲陽学院高校 2年・男子)
◆ 医師の先生方や製薬会社の方々が患者さんと真摯に向き合っていることがよく分かりました。清潔を保つ努力にも感激しました。私も医療に関わる人になって、少しでも世の中の役に立ちたいと思いました。(四天王寺高校 2年・女子)
◆ いろんな職種、たくさんの人が関わって、一つの薬や治療法が確立されていました。再生医療はまだまだ可能性のある分野だなと実感しました。(神戸女学院高等学部 2年・女子)
一般社団法人日本再生医療学会(JSRM)
日本再生医療学会は、再生医療の発展と普及を目指す学術団体です。再生医療に関わるバリューチェーン全体をカバーし、基礎研究から臨床応用、産業化に至るまで多様なステークホルダーが協力して活動しています。研究者、医療従事者、企業、政府機関が連携し、再生医療の実用化を推進するとともに、規制整備や倫理的課題にも対応しています。これにより、患者への新たな治療法の提供と医療産業の発展を促進しています。
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一般社団法人再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)
FIRMは200社近くの企業が参加し、再生医療の普及・産業化を目指して活動している団体です。一般の方々に再生医療をご理解いただく活動の一環として、オリジナルキャラクター「ファーミン」「ケロロン」とともに再生医療についてわかりやすく学ぶことができるYouTube動画シリーズを公開しています。ぜひ、ご視聴ください。
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