「温故知新」から生まれるデザイン 高山寺執事長 田村裕行氏

万博公式グッズ

読売新聞は、日本の伝統文化を守り、次世代に伝えるため、伝統的な技術やデザイン、美術品等を用いた2025大阪・関西万博公式ライセンス商品を制作、販売している。現在発売中の、京都・高山寺を代表する国宝「鳥獣人物戯画」とのコラボレーション商品と、高山寺、万博への思いについて、執事長の田村裕行さんに聞いた。

栂尾山 高山寺 田村裕行執事長

 私の師匠は「文化は滅びない」と仰っていました。高山寺の石垣は800年前に築かれたものも残っていますが、今の感性で見ても美しいと感じます。「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」。今回のように、高山寺に伝わる「鳥獣人物戯画」から、新しいデザインが生まれることもあるわけです。

 鳥獣戯画については、私にもわからないことが多い絵巻物です。絵巻の中でも特に親しまれ、人気も高い鳥獣戯画を見に来られる方も多いですが、これを通じて当寺の中興開祖である明恵(みょうえ)上人のすばらしさも知ってもらいたい、という思いがあります。
 
 明恵上人は多くを語らず、生きざまを見せる僧でした。後鳥羽上皇や藤原定家といった文化人も明恵上人を訪ねたとされており、当時から非常に慕われていたことがうかがえます。自分に厳しく、人に優しいところがその理由ではないでしょうか。
 
 ぜひ、鳥獣戯画が使われている今回の商品をきっかけにご来山いただき、こうした明恵上人の魅力を知ってもらいたいと思います。

 万博といえば、前回開催された1970年の頃、ケベック州館のディスコで踊ったことを思い出します。万博には夢がありました。今回の大阪・関西万博も、若い方たちがたくさん集まって、私のように楽しい思い出を作ってもらえればと願います。

 国宝「明恵上人樹上坐禅像」(左・複製)と国指定重要文化財「木彫りの狗児」(右・複製)

【高山寺(京都市右京区)】

 1206年に明恵上人が再建した寺院。栂尾山(同区)にあり、現在の寺号は後鳥羽上皇から「日出先照高山之寺」の勅願を得たことが由来とされる。1994年には「古都京都の文化財」として世界文化遺産に登録された。 石水院(国宝)は、明恵上人の住居跡と伝えられており、鎌倉時代初期の寝殿造の面影を残す。広く開け放たれた南縁の前には、初夏に青もみじ、秋に紅葉の景色が一面に広がる。明恵上人が、栄西から贈られた茶種を栽培し、この茶が宇治へと伝わったことから、茶の発祥地としても知られる。境内の茶園には現在も「日本最古之茶園」の碑が立つ。

拝観時間     8:30~17:00
拝観料(石水院) 一般:1,000円、小学生:500円、障がい者・修学旅行生:600円
         ※秋期別途入山料500円

【鳥獣人物戯画絵巻(国宝)】

 高山寺に伝わる代表的な宝物で、甲乙丙丁の4巻からなる紙本墨画の絵巻物。平安時代から鎌倉時代にかけて、複数の作者によって段階的に描かれたとされる。一方で、いつ、誰が、何のため描いたかはっきりせず、謎が多い。有名な甲巻には、擬人化された動物たちの遊戯を躍動感あふれる筆致で描いている。乙巻は実在、空想上を組み合わせた動物図譜。丙巻には人間風俗画や動物戯画、丁巻は勝負事を中心に人物が描かれている。

※大阪・関西万博公式ライセンス商品は高山寺では販売されていません。販売中の店舗はこちら