大阪・関西万博開催2年前特集 世界が描く 未来のカタチ
読売新聞全国版朝刊
開幕まで13日で2年となった2025年大阪・関西万博。国内の万博では過去最多となる150以上の国や地域が参加を表明し、同日には会場の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)で、パビリオンなどの起工式が行われる。特色豊かな各国の展示計画を紹介する。
開催概要
大阪・関西万博には今月3日時点で153の国・地域が参加を表明している。政府が目標に掲げていた150は達成し、今後もさらに増える可能性がある。一方、参加する国際機関は欧州連合(EU)など8機関にとどまる。政府は25機関を目標に働きかけを強める方針。
ウクライナを侵略するロシアも参加を表明しているが、政府は受け入れに慎重姿勢を示している。表明していないウクライナには参加を呼びかける。
「最軽量」館 ハイジお出迎え
スイス館は、「革新的なスイス」をテーマに、生命科学や人工知能(AI)などの最新技術のほか、アルプスの豊かな自然を紹介する。
見所は「魔法の球体」と呼ぶ五つの連なった形状が目を引く建物だ。分子や細胞をイメージし、特殊な樹脂を膨らませて仕上げていく計画で、総重量は400キロ・グラム以下。「万博史上最も軽い建物をデザインした」(建築家)という。資材は全てリサイクル可能で、万博終了後は、家具などに再利用する。
建物の最上部には、大阪湾を見渡すバーを設ける予定で、日本人になじみの人気アニメ「アルプスの少女ハイジ」の主人公・ハイジに来場者が出会える仕掛けも用意されている。
アマゾン 空からの恵み
ブラジル館の名称「空飛ぶ川(Flying Rivers)」は、南米アマゾンの熱帯雨林上空で発生する大量の水蒸気を指す。ブラジル全土に雨の恩恵をもたらすことにちなみ、生命の源である水をテーマにした展示を計画している。
3階建てで、スロープをつたって上階へ。ルート沿いのスクリーンでは、森の中の様子を再現したアニメーションを流し、雨のように水が降り注ぐ空間も設置される。
レストランでは、オオオニバスの酢の物など、日本料理にアマゾンの食材を活用したメニューを提供する予定だ。
K-POP 会場沸かせる
韓国館は、韓国の文化を紹介する多彩なイベントを計画している。入り口の円形ステージでは、「K-POPコンサート」を開催。前回のドバイ万博では「江南(カンナム)スタイル」などのヒット曲で知られる男性歌手PSY(サイ)さんらが登場し、人気を集めた。
建物正面に大型スクリーン「メディアファサード」を設置し、展示内容の一部を流すことを検討している。
韓国が目指す2030年の万博誘致が今年、決定すれば、会場候補地の釜山市と大阪をオンラインで結ぶ企画も準備するという。
成功へ ともに努力
大阪・関西万博に参加する韓国の金亨駿(キムヒョンジュン)・駐大阪大韓民国総領事(57)がインタビューに応じた。
大阪の道頓堀に行くと、グリコの看板の前で韓国人旅行者が写真を撮っています。ここは韓国ではと勘違いするほどです。万博にも多くの韓国人が来場し、各国が提案する未来技術に触れてもらいたい。韓国の経済界の関心も高く、企業が韓国館に自社の製品を紹介するブースを出展する準備を進めています。
昨年5月に発足した尹錫悦(ユンソンニョル)政権は、日韓関係の改善に積極的に取り組んでいます。日韓が万博の成功に向けてともに努力する中で、両国の未来志向的な協力の可能性がより鮮明になる。それは、世界への重要なメッセージになる。
私の出身地である釜山市は次回、2030年の万博誘致を目指しています。実現すればアジア経済全体の発展に貢献し、日韓の交流もさらに深まるでしょう。 (聞き手・福永正樹)
万物 巡る、つながる
日本館のテーマは「いのちと、いのちの、あいだに」。〈1〉循環を見据えたものづくり〈2〉はかなく小さな生き物〈3〉次のいのちへのリレー――の三つを展示の柱に据えた。
館内では、万博会場で出た生ゴミを微生物で分解して作った電気で藻類を育てる過程を紹介するなど、循環にまつわる複数のストーリーを提供。来場者には、最先端技術や古くからの日本文化を通して「循環型社会」を体験してもらう。
建物は地上3階、延べ床面積1万1360平方メートルで、デザインはつながりや循環をイメージした。