<< 体験リポートバックナンバートップへ戻る
● 三菱商事 ハノイ事務所・ホーチミン事務所
● フーミー1号発電所/ベトナム・シンガポール工業団地
● ユニマート1号店/ヴィナコフコーヒー精選所
● そのほかの見学先/生活文化体験
安全な商品をお届けするユニマート
ツアー2日目、僕たちはハノイ市内にあるユニマート1号店に到着した。三菱商事の河内さんやユニマートのスタッフの方々が店内を案内してくださった。そこで僕が目にしたものは、普段自分が買い物に行くような日本のスーパーマーケットで見かけるのと同じ商品陳列や売り場の配置、レジ、加工場であった。スーパーマーケットがベトナムにもあると、正直驚いた。
ユニマート食品売り場。日本とそっくり
ユニマートは、ベトナムと台湾の企業と三菱商事の合弁企業で、各国のスタッフが集まって共同で経営している。店の品揃えは肉や魚や野菜といった生鮮食品から、冷凍食品や菓子、日用雑貨など一通りのものがそろっており、その種類や量も豊富だ。日本で売られているような菓子や日本酒なども扱っている。肉や魚は、その場で調理や加工がなされ、ラップなどでしっかり個別包装されている。レジでの精算は、バーコードを読み取っていき、コンピューターが自動的に合計金額を算出する。このように、店内の雰囲気は日本のスーパーマーケットとほとんど変わらない。
コンピューターによるスムーズなレジでの精算
三菱商事がユニマートで一番重点を置いていることは、「食の安全」を市民に提供することである。その実現のために、店内および商品の衛生管理を徹底し、不良品があればすぐに撤去したり、食料品の原産地を表記したシールをはって、お客様が商品を吟味して選ぶことができるなど、様々な配慮がなされている。こうした努力が積み重なって市民の支持を獲得して、2008年には第2号店がオープンし、さらなる店舗増を目指している。
ベトナムの人々の中にも高所得者が増え、市民生活が向上してきたと同時に、食に対して求める水準も上がってきている。ユニマートは、そんな市民の声にしっかりと耳を傾けてその要求に応える、ベトナムの食品小売業界として先端を行く会社であると、今回の見学で直に感じ取ることができた。
学生交流会とアオザイ文化体験
アオザイの仕立てる寸法を書き込むトゥン先生
ツアー5日目、アオザイ製作を学んだ。落ち着いた店内の雰囲気のなか、アオザイ講師のトゥン先生が、僕たちの目の前で実際にアオザイを製作してくださった。
アオザイはベトナムの伝統民族衣装で、上着はひざ丈か、それよりいくぶんか長く、腰から裾まで両脇にスリットが入っているのが特徴だ。男性用、女性用それぞれがあり、主に儀礼用として着られ、また女子学生、銀行員、キャビンアテンダント等の制服としても着用される。時代によってその形は変化してきており、また地方によって、身頃の端の折り方や纏(まつ)り方が違うなど、実に様々なスタイルが生み出されてきている。
トゥン先生によれば、アオザイにも流行があり、近年では襟なしのものに人気が出てきているという。アオザイに施されるデザインも豊富で、婚礼の時には青竹の柄と、漢字の「喜」を組み合わせた中華の印がよく施されるという。
アオザイを通じて、ベトナムの人々の繊細な美しさ、日本の着物とはまた違った魅力を感じた。
最後まで親しくしてくれた学生達と先生方
2日目、学生交流会が行われたハノイ国家大学外国語大学附属高等学校は、1969年に設立され、ベトナム中から選りすぐりの学生が毎年1000人入学する国内有数の進学校である。日本語のほか英語やフランス語などを第二外国語として学んでいる。クラブ活動が盛んであり、また水質保持の活動やボランティア、社会活動の支援など、様々な取り組みを積極的に行っている。
最初に学生たちがベトナムの文化や学校について日本語で紹介してくれた。とても流暢に日本語を話していて、そのレベルの高さに驚いた。次に僕たち日本の高校生の自己紹介をした後、中庭で様々な踊りやダンス、劇などを披露してもらい、その後、彼らと一緒にサップ踊りなどの遊びをしたりココナッツのデザートなどを食べたりして交流を深めた。
彼らはとても陽気で元気があり、積極的に僕に話しかけて仲良くしてくれた。日本での生活や文化について尋ねられたりもした。日本語だけでなく英語も通じるので、言葉の面は思ったよりも苦労せず、そのため彼らと楽しく打ち解けることができた。最後には別れるのが惜しいくらいだった。
異なる国の人々と交流する楽しさというのを、この交流会が僕に教えてくれた。また今まで漠然としていた、英語の重要さも改めて感じた。今度外国の人々と交流するときは、もっといろんなことを伝えられるようにするためにもこれから英語をしっかり勉強したいと思った。
▲ ページのトップへ戻る
ハノイ駅前から未来を眺めて
ハノイ市内を見学した際にハノイ駅を訪れる機会があった。現在ベトナムには鉄道が一つしかなく、国が運営している。私は急成長を遂げる国の鉄道なのだから、さぞかし立派なのだと期待していた。ところが、案内された駅は首都の駅とは思えない、こぢんまりしていて大変シンプルなものだった。
36時間の長旅をする車両
また、車両も日本で30年程前に走っていたようなディーゼルで走るタイプのもので、私がイメージしていたものとはかけ離れていた。従ってハノイから南部のホーチミンまで特急を使っても丸々1日以上かかるといった状況である。そんな状況を打破するためにも、日本政府がベトナムに開発協力中なのが南北高速鉄道。ハノイ-ホーチミン間を約8時間で結ぶ予定だ。
駅の正面がこちら
私には疑問があった。どうして外国のために日本は資金援助をするのか。答えは三菱商事の方から教わった。それは一つではないが、私がもっともだと感じた答えは戦争を防ぐため。貧しさが戦争の要因になることがあるそうだ。昔、日本が戦争に踏み切ったのも資源の貧しさからだと聞いたことがある。一概にそうとは言えないが、あまりにも物質的に貧しいと、人間は他人の持ち物がうらやましくなると思う。そこから争いは生まれるかもしれないのだ。日本の政府開発援助によって、そういった戦争の火種が消えるかもしれない。この話を聞いて、私は、日本政府のことを少し見直した。
さらに話を聞いていると、ベトナムにバイクが多いのは交通機関が十分に整理されていないからだという。日本では電車で通勤、通学が一般的だが、ベトナムでは鉄道は貨物輸送や里帰り、旅行がメインだという。通勤、通学はやはりバイク。よく見かけた光景は親子のバイクの二人乗り。私はあの光景がベトナムらしくて大好きだ。ベトナム人は個人主義だが、家族を非常に大切にするという。きっと毎日、両親の背中を間近で見ながらバイクに乗り、育つからではないだろうか。しかし、この光景も交通機関の変化で消えてしまうのかもしれない。個人的に少し悲しい気持ちになりながら、駅前のバイクとハノイ駅を眺めた。
ベトナム人と共に歩めた日
鮮やかな衣装で踊る生徒達
今回のツアーが初めての海外だった私には何から何まで新鮮で、心が動かされた。そして最も心を動かされたのがハノイ国家大学外国語大学附属高等学校を訪問した時である。学生の皆さんは私達をとても歓迎してくれた。伝統的な踊りや楽しい劇を演じてくれ、ベトナムの遊びも教えてくれた。そして、たくさんの話をした。お互いの国のことや、家族の話、学校の話などなど。日本語と英語を交えた、片言のコミュニケーションだった。だから、非常に自分の考えが伝わりにくいときもあったが、その分、意思疎通が出来た時の喜びは一際大きかった。私は皆さんに多くのことを教えてもらった。向こうの学生はとても積極的に私に話しかけてくれた。純粋に知りたい、学びたいという気持ちがこちらにも熱く伝わるパワーを感じた。そして、その積極的姿勢は学習にも通じているのだと、私は肌で感じた。このように感じたのも、彼らと出会えたお陰だ。
この出会いは一生忘れられないものとなった。
学生達との交流会の際に、彼らが着ていた独特の衣装があった。アオザイだ。ベトナムといえば北部では温帯性の気候であるが、赤道近くの南部では熱帯性気候に属し、1月や2月でも30℃前後という非常に厳しい暑さだ。私達が訪れた3月の後半で、32℃くらいだった。さて、そんな暑いベトナムで古くから着られていた伝統民族衣装がアオザイ。「アオ」が上着の総称で、「ザイ」(南部の発音ではヤイ)は長いという意味。現在では普段着としてよりも、高校生やキャビンアテンダント、銀行員などの制服に使われている。
最終日、私達はアオザイの製作の工程を見せてもらった。一見、中国のチャイナドレスにも似ていると思ったが、チャイナドレスのようにピッタリと身体に密着しているというよりは、身体に心地よい程度にフィットしているように感じた。それはやはり、この暑いベトナムで過ごす為に人々が考えた工夫なのだろう。見学させていただく中で、ベトナムの人々の長い歴史とアオザイが歩んできた道のりを、私も少しだけ共に歩めたと思う。
▲ ページのトップへ戻る
ベトナムへ日本企業が進出 ! ! at VSIP
都心部ではあまり見かけなかったトラックの数が増えてきた道路沿いに、それはあった。
ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)は500haの敷地にインフラ設備を持ち、工場運営に最適な工業団地で、三菱商事は一部資本参加し、日本企業の誘致の役割を果たす。
入居企業の製品が並ぶショールーム
VSIPは1994年にベトナム、シンガポールの両政府間のプロジェクトで、両国の両首脳会談で設立が決定し、1996年に発足。現在では、日系企業83社を含め、367社が進出し、最も成功した工業団地の1つだ。また近い将来増設も予定されている。
海外企業がVSIPに進出する理由は大まかに2つあり、1つは立地条件にあった
ベトナム第2の都市ホーチミン市から約17kmのVSIPはインフラ設備が整い、また、賃金が安く、競争力のある労働力が豊富だ。港へのアクセスも容易で、生産した物を輸出することができる。
もう一つはVSIPの最大の特長であるワンストップサービスだ。ワンストップサービスとは、関税や入居、または運営上の問題をすべてVSIP内で解決できるシステムだ。
VSIPの入り口。意外と目印は小さい
以上が外資企業進出の大まかな鍵であるが、個人的には、VSIPならではの、敷地内や隣接地に学校、消防署、病院、ショッピングモールなどなんでも揃っていることも魅力的だと思った。
施設を案内していただいたVSIPの森田さんにお話をうかがうと、最もこの工業団地で有名な企業は日本の医薬品メーカーだという。
ベトナムの人々は地域によるが、製品の名称をその代表的企業ブランドで呼ぶことも多いようで、日本でよく知られているブランドが代名詞になっている
知っている企業の名前を聞いたり、看板を見る度に何だかこちらまで嬉しくなった。こういった浸透されやすい部分もベトナムで仕事をする外資企業にとっては醍醐味なのかもしれない。
今後も日本企業のベトナムでの活躍に期待したい。
ベトナム人はユーモア満載!?
私が今回のプロジェクトで楽しみにしていた訪問先の1つが、ハノイ国家大学外国語大学附属高等学校での交流会だった。
本校は、英、仏、独、露、中、日の6つの外国語を学ぶ優秀な生徒が集められ、大学への進学率は96~98%と高い進学率を持つ。ボランティア活動も盛んで、病院訪問や留学生の支援なども行っている。
説明を受けた後に、校庭へ移動して約100人の日本語専攻の生徒による歓迎を受けた。そのパワーに圧倒されながらも、ベトナム伝統の踊りを教えてもらった。
とても印象深かったのが、日本語でのシンデレラの劇だった。
脚本が非常に愉快で、いじめられっ子のシンデレラの下にやる気のない神様が現れ、舞踏会へ行って住所の紙を入れた靴を置いていくが、王子様ではなくゴミ拾いのおじさんに拾われてしまうというあらすじだった。
またベトナムでの友達は皆、勤勉で、ハングリー精神が旺盛であった。日本語のスキルを上げるべく、ネイティブである私の言葉に熱心に耳を傾けているのがこちらまで伝わってくるほどだった。彼らから見習うべきものは多い。
ベトナム語は、発音が命で、間違えると意味が違ってしまうのが難しい。
例えば、「シン チャオ」(こんにちは)は語尾を上げて発音すると、"お粥をください"になってしまう。
今度彼らに会う時は、少し話せるようになっていたい。
ベトナムの着物、アオザイ
流行に合わせて、様々な形が生み出される
市場のアオザイ屋さん。ほれぼれする美しさ
いよいよ最終日、ベトナムの民族衣装、アオザイについて学んだ。
"アオ"は上着、"ザイ"は長いという意味で、通常は正式な行事の際に着用するが、女子学生は通学にも使用する。
柔らかくて薄い、光沢のある布で作られるアオザイはとても美しく、8人の結婚式はアオザイで出席しようと冗談を交わした。 また、街中ではアオザイのストールを発見し、日本で売れば流行するのではないかと思うほどの可愛さだった。
▲ ページのトップへ戻る
経済発展の基盤、発電所と工業団地事業
電力不足。ベトナムで最も深刻な問題の1つである。私たち日本人は、普段の生活で、「もうすぐ電気が切れるかもしれない」という不安に駆られることは、ほとんどといってない。しかし、この国ではそれが現に有り得てしまう。そのため、世界的不況の中でも、ベトナム政府は発電所建設など電力ビジネスに対して積極的姿勢を崩しておらず、むしろ電力不足が景気衰退につながる可能性を危惧しているとのことだ。この国の経済は、近年目覚しい成長を見せているが、依然として、国民の約60%は農業に従事しており、一次産品の農作物の生産に頼る面が大きい。今後、重化学工業を興していく上で、工場へのスムーズかつ安定した電力供給が急務となっている。
発電所のコントロールルームに潜入!
今回訪問したフーミー1号発電所では、発電の方法の1つであるコンバインド・サイクル発電方式を採用している。この方式では、まず燃料の天然ガスを燃やし、火が燃える力を利用してガスタービンの羽根車を回し、発電する。このとき、約600℃の高温のガスが流れるので、その排熱を排熱回収ボイラーに送り込むことで、再度発電を行っている。説明してくださった久米さんいわく、"一粒で二度おいしい"発電法とのことだ。けれど、単に排熱を再利用できるだけでなく、環境にもやさしいので、実質"一石三鳥"といえるかもしれない。
このような環境に配慮した発電技術をサポートしているのは、三菱商事だ。環境規制の厳しいベトナムで、環境に配慮しつつも、海外企業との競争に勝つために、できるだけコストのかからない発電技術は欠かせない。日本の優れた発電システムの設計、製造、販売に至るまでを一貫して、三菱商事は、管理・サポートしている。また、コンバインド・サイクル方式の弱点は、高温のガスを扱うため設備が傷みやすく、一定期間おきのメンテナンスに費用がかかることだ。そのため、効率を考えた運用が、発電所にとって必要不可欠となっている。近年の経済発展も目覚しい。しかし、戦争中に壊れてしまった橋や道などをはじめとする、いわゆるインフラの整備に遅れがあるのが、この国の現状だ。
三菱商事と三菱重工は、日本のODAの支援を得て、発電所を建設した。いわば、国の威信をかけた重大プロジェクトだ。そんな事業に日本企業が重責を担って、活躍していることを、私は日本人として誇りに思う。
VSIP敷地内で生産している製品の展示コーナー
5日目には、ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)を訪れた。広さは500ha。ベトナム最大の規模を誇り、今後はさらに1700haほどに拡大の予定だ。敷地内には工場が立ち並ぶ以外に、ここで働く従業員のための住居、ショッピング街、インターナショナルスクールに、幼稚園まであるそうだ。そして、技術訓練学校では技術者育成にも注力し、ここを卒業した生徒の95%がVSIPに就職している。
また、この工業団地は、入居する企業にとって多くの魅力を持つ。その中の1つ、ワンストップサービスは、雇用・納税・消防・環境などの基準を守り、政府の許認可を取ろうとする企業に代わって、手続きを一括して行うものである。これにより、企業は各役所に出向く必要がなくなり、効率のよい運営が可能になる。
これらのサービスの他、インフラ整備、技術、ノウハウで圧倒的強さを持つVSIPに、工場建設を希望する企業は当然多い。こうした激しい競争の中で、三菱商事は、社会貢献に寄与するきちんとした会社を見極め、積極的な企業誘致を行い、VSIPの発展に携わっている。実際、敷地内に工場を構える企業、367社中83社が日本の会社だが、誘致は三菱商事も担っている。
ベトナムでの工業団地ビジネスは、シンガポールに倣い、グングンと成長しているのが肌で感じ取れた。では、日本の工業団地は一体どうなっているのだろう? 機会があれば、是非こちらも見学して、比較してみたいと思った。
実感!異文化に触れる喜びと感動
ツアー前から最も楽しみにしていた訪問先の1つ、ハノイ国家大学外国語大学附属高等学校との交流は、私の期待をいい意味で裏切った。
衣装も然ることながら、踊りも美しかった
まず、とにかく学校全体がエネルギーに満ちあふれていた。学校に到着してすぐ、割れんばかりの拍手と歓声で、熱烈に迎えられ、学生の目はキラキラと輝いていた。また、『校長先生』といえば、貫禄ある、多少お年を召された人物を想像するが、この学校の校長先生はかなり若く、パワフルな女性だった。生徒たちは意欲と好奇心であふれ、交流中、なかなか私を一人にしてくれなかった。時折、BOAや東方神起など日越共通のアーティストの話題になると、日本の友達と話している時と変わらない、もしかすると、それ以上の盛り上がりだったかもしれない。
そして、もう一つ私を驚かせたのは、想像以上に学生の日本語がうまいことだ。ベトナムの国や学校の紹介、歓迎会の司会進行、案内役の学生が私に話し掛ける言葉、すべてが流暢な日本語だった。特に感動したのは、白雪姫とシンデレラを合体させたオリジナルの劇だ。台詞はもちろん日本語で、日本人の私たちでも考えつかないような見事なストーリー展開で、何度も笑ってしまうシーンがあった。外国語で外国人を笑わすことはなかなか容易ではないので、ひたすら感心するばかりだった。
学校に居る間は時間を忘れ、本当に楽しく、充実していた。学生のみなぎるパワーをたくさん分けてもらった、素敵な一日だった。
笑顔がすてきな先生に、アオザイの作り方を教わった
ツアーの最後に、ベトナムの伝統的民族衣装・アオザイを作る過程を見学した。アオザイの歴史は非常に古く、はっきりとしたことは判明していないが、起源は数千年前に遡るとみられる。ベトナムでは1人あたり、平均2着ほど持っているらしく、結婚式などのおめでたい席や正式な席でよく着られるとのことだ。また、制服としても用いられ、私たちもツアー中、白いアオザイを着て自転車に乗る学生や、赤く艶やかなアオザイに身を包むキャビンアテンダントを幾度も見かけた。その姿は正にアジアン・ビューティー。アオザイは、ベトナムの女性のスタイルの良さをとても引き立てていた。
このように、この国では、現在でもアオザイが広く親しまれ、また、流行もあるそうだ。今回、実際に着てみることはかなわなかったが、いつかこの美しいアオザイに袖を通してみたい。
▲ ページのトップへ戻る
ベトナムが教えてくれたもの
私達は、ベトナムに対してどんなイメージを持っているだろうか。
人それぞれ個人差はあるだろうが、私が今回このツアーに参加するまでベトナムに対して持っていたイメージというのは、必ずしも良いものばかりではなかった。例えば、かつてのベトナム戦争、それによる大量の難民流出、枯葉剤の後遺症、経済困難。
活気あふれるハノイの街並み。それにしてもバイクの数の多いこと!
また、自分には馴染みのない社会主義の国、共産主義の国であることなど、(語弊はあるかもしれないが)言ってみれば暗いイメージを持っていた。
ベンタン市場。商品が所狭しと並べられていた
しかし、実際に行ってみて、そんな暗いベトナムはどこにもなかった。輝く太陽、あふれんばかりの物資、野菜、果物……。人口約8600万人と世界で第13位の大国であり、その人口の約6割が30歳以下の若い世代で占められているという、まさに若い力があふれるベトナム。改革・開放政策の「ドイモイ」を推進し、2008年もGDP比約6.23%と高度経済成長を維持するなど、著しい発展の真っただ中にあるベトナム。私が行ってきたベトナムとは、そんな活気あふれる国だった。
果物屋さん。左端に積みあがっているのがドリアン
その上で、それらのいわば明るいイメージと、それまで持っていた暗いイメージ。この2つのイメージのあまりにも大きなその差に気づいた時、私は今まで自分の考えだと思ってきたものは、単なるメディアなどの外部からの受け売りに過ぎないのだと気づいた。そしてそこから、正しい理解に裏打ちされた真の自分の意見を持つためにも、自らその地その場所に行って、この目で現場を、現実を実際に見てみることが何より欠かせないものなのだと感じた。これほどまでにテレビやインターネットが普及し、居ながらにして簡単にありとあらゆる情報に接することのできる便利な現代社会に生きる私達。だからこそ、この姿勢を大切にしていかなければならないということを、何よりこの身をもって教えられた気がしている。
「日本語は難しい言語。だからこそ挑戦したかった。」
「こんにちは!」という大きな声で出迎えてくれたのは、私達8人のメンバーに対してなんと100人もの現地の学生達。ツアー2日目、私達はハノイ国家大学外国語大学附属高等学校を訪れ、日本語を学んでいる現地の学生との交流会を行った。
現地の学生と。彼女が着ているのがベトナムの民族衣装アオザイ
まずは会議室に案内され、そこでプロジェクターを使って両国の学生がそれぞれ自国の文化や生活について紹介。続いてステージがある校庭へと移動し、ここで現地の学生によるベトナムの伝統的な踊りや日本語劇などを観賞した。そして、会もちょうど半分を過ぎた頃、今度は私達8人のメンバーがステージへと上がり、日本の歌を披露した。現地の学生の中には、一緒に歌ってくれたり踊ってくれたりする人もいた。この後は、両国の伝統的な遊びでそれぞれ親睦を深め、フリートークやプレゼント交換などの時間がもたれた。
驚いたのは、現地の学生の日本語のレベルの高さだ。特に、上級生ほど流暢できれいな日本語を話す。3年生の中には、今回の交流会で同時通訳をしてくれた学生もいた。
また、なぜ日本語を勉強するようになったのかという私の質問に対し、日本語はとても難しい言語だからこそ挑戦したかったから、と答えた学生が1人や2人ではなかったことが、なによりとても印象的だった。ベトナムの人々の前向きな明るさや積極性を実感した。
普段の生活では海外の同じ高校生と接する機会はほとんどないが、この様な貴重な時間を過ごせたことは、とてもよい刺激になったと感じている。
採寸したサイズを手際よく布に書き込み、裁断していく
そして、ツアー最終日は、生活文化体験としてベトナムの民族衣装であるアオザイの製作過程を見学した。
アオザイはチャイナドレスにも似た長袖のワンピースで、上は身体にきっちりとしているが、下はウエストの上までスリットが入り、前後2枚の布に分かれている、ベトナムに古くから伝わる伝統的な衣装だ。現在では行事の際や学校、会社の制服として着用されていて、男性用のものと女性用のものがある。
アオザイの製作過程は、大きく分けて採寸、裁断、本縫いの3段階。いずれも技術としては一般的なものを使うそうだが、採寸は全身の15箇所を行い、より身体に合ったものとなるようにすること、また縫製などでは当然のことながら正確さが要求される。
伝統の中に今もしっかりと息づく工夫と確かな技術を感じた。
▲ ページのトップへ戻る
食の安全を追求し続ける
ベトナムは世界第二位のコーヒー生産国ということを知って驚いた。意外にベトナムのコーヒー生産の歴史は古く、1888年にフランスが北部および中部の農園で生産を始めたと言われている。
ドイモイ政策により始まった著しい経済発展により、工業化が進んではいるが、今も主要産業の一つが農業であるベトナムでは、コーヒーの輸出は貴重な外貨獲得手段となっている。
ベトナム製の機械も導入されている
私たちが訪れたヴィナコフコーヒー精選所は、「量より質」を重視して高品質品の販売に注力しているスイスのコーヒー輸出会社だ。食の安全が叫ばれる今、幾多の安全に対する取り組みを行っている。
ブース社長はカナダ人で、とても気さくな方だった。ジョークなども交えながら、コーヒー精選の仕組みや、安全性への取り組みについて説明してくださった。
カップテスト。意外と難しい
ヴィナコフ社はベトナム中部の農家と提携し、正確な生産状況を管理。産地の仲介業社から一貫して流通履歴追跡システムを確立している。このシステムにより品質管理された安全な生豆原料を買い付け、精選加工を行い、輸出している。
精選加工は巨大な体育館のような場所で行われていて、多くの機械が轟音を立てながら稼働していた。ここで、異物の除去、研磨などの品質向上や、サイズや重量、色彩で豆のグレードの選別が行われる。外国から輸入した機械や、ベトナム製の機械も導入されていた。
三菱商事はヴィナコフ社とパートナーシップを組んで、日本向けの上質品で独占販売契約を結んで輸出している。日本の消費者ニーズをとらえ、製品に反映させる機能も果たしている。
輸出する豆は、ホーチミンの機関で検査を行い、日本でも検査を行うという万全の体制をとっている。また、スタッフによるサンプルの味覚チェックを行うカップテストもあり、品質や味の最終確認が行われている。
ベトナムのコーヒー農園の人々は、以前は安全意識が希薄だった。その農園の人々に高いコストをかけても安全を追求すること、そうすれば、付加価値が上がり、結果的にコーヒー豆の値も上がるんだということを理解してもらうのが、一番大変だったそうだ。
付加価値の高い製品を作るようになれば、生産者の人々の収入も向上させることができる。しかも、人々に安全でより美味しいコーヒーが届けられる。三菱商事はその手伝いをしていると感じた。
ベトナム文化体験 ~アオザイと学生交流会~
日本語の劇。みんな自分の役になりきっていた
ツアー2日目、いよいよ待ちに待った現地の学生との交流会。僕にとって、こういった国際交流は初めてだったので、とても楽しみにしていた。
訪れたのは、ベトナムのトップ校の一つ、ハノイ国家大学外国語大学に特設された外国語専門高校。ここには、英語、ロシア語、フランス語、中国語、ドイツ語、日本語を学ぶ優秀な生徒が全国から集められ、1000人が学んでいる。そのうち日本語を専攻しているのは約100人。さらに100人以上が第2外国語として日本語を学んでいる。
まず、教室でベトナム文化の紹介を受け、私たちは日本での生活を紹介した。みんな日本語がかなりできるらしく、とても流暢な日本語で話し、こちらの日本語もみんなうなずきながら聞いてくれて、理解している風だった。
その後、屋外に移動し、学生のみんながダンスや日本語の劇を披露してくれた。日本語の劇からはとても一生懸命に練習をしてくれたと言うことが読み取れて、感謝したいと思った。
2時間の交流会は、あっという間に終わってしまった。他国に住む同世代の仲間と一緒に過ごす時間は、とにかく楽しかった。次の機会には、彼らと日本で再会し、今度は僕達が日本を案内してあげたいと思う。
大学で教えているプロの技を見ることができた
ベトナムの伝統文化といえば真っ先に挙がるのが、アオザイだろう。ツアー5日目、アオザイの歴史と実際の仕立て方について学んだ。現在ではアオザイ姿を見掛けるのは女性がほとんどで、アオザイは女性のみの民族衣装と思われていることが多いが、男性用もある。ベトナムの女子高生の制服はアオザイで、ベトナム航空の客室乗務員の制服にも使われている。
残念ながら、機能性の低さからアオザイを着る人は少なくなってきてしまっているというが、ベトナムの美しい文化の一つとして残っていってほしいと思った。
▲ ページのトップへ戻る
"気持ちのいいサービス"目指すは店舗数拡大
ユニマートは、ベトナム、台湾の企業と、三菱商事の3社の合弁事業。私たちはベトナム人で副社長のズンさん、台湾人で経理部長のハンクさん、そして日本人である三菱商事の河内さんをはじめとする方々に、店内を案内していただき、ユニマートについてのお話をうかがった。
朝8時半、開店時間きっかりにオープン
ベトナムにスーパーができ始めたのはここ10年以内のことで、それまでの買い物は市場が中心だったという。日本と同じスタイルをとるユニマート1号店は、1999年の開店以来需要は高く、運営も順調だ。ユニマートのようなスーパーは市場に比べて値段が高いので、私は利用客のほとんどがベトナム在住の外国人だと思っていた。しかし、予想に反して、実際は利用客のほとんどがベトナム人だという。
棚に陳列するお菓子。日本からの輸入品
店の中に入ると、まず目についたのはお米。あきたこまち、コシヒカリなどの日本米が売られていた。ベトナム北部には在留邦人が3000人ほど住んでいるが、日本人は個人の消費単価が高いために、今後は彼らからの評判を高めることも重要である。店内には日本人向けに、お菓子やカップスープ、さらにはふりかけなどたくさんの日本製品が取り揃えられていた。実際に売り上げ全体の30%は日本などからの輸入品であるという。
魚はきちんとパック詰めされていて、新鮮
ユニマートは、必ず原産地がわかるものしか仕入れない。そして、検疫を受けているかを必ず確認する。このように、食の安全を徹底することで、人々からの支持を得ているという。さらに、価格や安全以外に大事なこととして、すべてのお客様に"気持ちのいいサービス"を提供することを心がけているそうだ。魚売り場の"お魚調理致します"の看板を見て、サービス精神の高さに驚かされた。
これからのユニマートの目指すものは、店舗数を現在の2店舗からどんどん拡大していくこと。ベトナム、台湾、そして日本という言語の違う3カ国でのコミュニケーションは大変だが、そんな中でも3社で頑張っている、とおっしゃった河内さんの笑顔が心に残った。
民族衣装アオザイと、国境を超えた人と人とのつながり
ハノイ国家大学外国語大学附属高等学校で出会った約100人の日本語専攻の学生は、日本から来た私達を熱く歓迎してくれた。何人もの生徒が作ったアーチをくぐって通された部屋は、日本の学校よりも開放的な雰囲気があり、生徒たちが目を輝かせてこっちを見ていた。
現地学生達が、ベトナムの踊りで歓迎してくれた
交流を通して、現地学生の皆さんは、私達の手を引いて積極的に遊びのルールを教えてくれたり、日本の生活について質問を持ちかけたりしてくれたが、彼らの日本語は本当に達者で感心してしまった。ベトナムの人々は非常に勉強熱心だと聞いていたが、それが彼らの日本語からも感じられた。そしてその積極的な姿勢は、日本人にはあまり見られないほどエネルギッシュだった。彼らの持つ、学んだことをフルに試そうとする姿勢に心打たれ、私も積極的に勉強しよう、とやる気が湧いた。
ベトナム人と日本人が、ベトナムの地で日本語を使って楽しく会話し合ったことは、後から考えると不思議な感じがするが、日越の国境を超えてわかり合えた経験はとても素晴らしいことで、かけがえのない思い出だ。この交流会で得ることのできたベトナムの学生とのつながりをこれからも大切にしていきたい。
またいつか会える日を楽しみにしている。
アオザイを縫い合わせる先生。もうすぐ完成!
日本人の着物や浴衣以上に人々に馴染んでいるベトナムの伝統的民族衣装、アオザイ。最終日に私たちは、アオザイの伝統と仕立て方を学んだ。ベトナム独特な雰囲気が感じられるアオザイは、高校の制服や結婚式、キャビンアテンダントの制服などで広く着られていて、私達も街で何度か見かけた。
アオザイを作る過程を実際に見せていただいたが、アオザイは型紙を使わず、直に布に線を描いていって裁断するので、洋裁に比べて時間がかからない。どんどん手を進めていく先生を見ていると簡単そうに見えるが、アオザイの型を一つマスターするだけでも、とても長い時間を要するそうだ。
見せていただいたアオザイは、結婚式用のものや、最近の流行りの襟のない物など様々であったが、どれもとても美しかった。次にベトナムに行くときは、是非自分用に仕立ててもらいたい。
▲ ページのトップへ戻る
国内の移動をもっと便利に! 新たな交通手段
ベトナムの道路にはオートバイが多い。中にはマスクを着用して、排気ガスから身を守る人もいた。健康のみならず、環境への影響も心配だ。また、1台のバイクに複数人が乗っていることもしばしばであった。特に、通勤・通学の時間帯は道路がバイクで埋め尽くされている。では、なぜバイクでの移動が多いのであろうか。バイクが車よりも安く、購入しやすいという点以外にもう一つ考えられる。それは、鉄道網が未発達であるということだ。これは、日本での通勤・通学と比べてみたときに、最も異なる点だ。
ハノイ駅の入り口
現在、ベトナムには国の南北、ハノイとホーチミンを結ぶ鉄道が1本のみある。しかし、その動力は電気ではなく、ディーゼル。さらに、線路は単線。そのため、始発駅から終点までおよそ30時間もかかってしまい、寝台列車となっている。また、その本数も限られたものとなっている。
国内唯一の鉄道
私たちは、ツアーの前半に市街地見学としてハノイ駅を訪れた。国内で最大の駅ではあるが、そこにいる人は少なく、日本の駅とは大きく印象が違った。また、ホームもあまり整備されておらず、レールと同じ高さの位置にあった。
そんな現状を打開すべく、日本政府はODAなどの資金を使い、ベトナムの南北高速鉄道の開発に協力中だ。この鉄道は新幹線で、ハノイ~ホーチミン間を現行の所要時間の3分の1程度、約9時間で結ぶ予定である。そして、そのために、複線化、動力の電化、経由駅の建設や、各駅の周辺の開発が必要とされている。
私はこの鉄道の完成を手始めに、新たな経路を通る鉄道の建設が徐々に進んでいき、いずれは鉄道も主要な移動手段としての地位を確立していくのではないかと思う。そうなることで、ベトナムの人々の暮らしはよりよいものとなっていくだろう。
全身で感じた、ベトナムの文化
交流会の様子。独特の踊りを見せてくれた
ツアー2日目、ハノイ国家大学外国語大学附属高等学校に通っている現地学生との交流会があった。ここでは、日本語を専攻している学生から、ベトナムの風景やベトナムの文化、外国語専門高校についてスライドショーによる説明を受けた。また、民族舞踊や喜劇、ダンスなども交流会のためにわざわざ準備をしてくださっていた。私たちは、日本での生活に関する説明と日本語の歌の合唱をした。
この交流会の中で特に印象に残ったことは「サップ踊り」というベトナムの伝統的な遊びだ。これは、一定のテンポで動かされる竹の棒を上手に飛び越えるようにステップしていく遊びだった。単純だが、とてもリズミカルな遊びでとても面白かった。また、コーンが入ったヨーグルトのようなお菓子を馳走してくれたことも印象に残っている。
市場の様子、人が多くにぎやか
みごとな出来栄えのアオザイ
ホーチミンでは、市場の見学もした。狭い通路の中に多くの店があり、非常ににぎやかで活気のある様子だった。私が特に驚いたことは、値切りの文化だ。交渉によって値段を下げるのが当然という人々の考えには、普段の暮らしとのギャップを感じた。お土産を買うときに、交渉しながら品物を買っていくことを体験したが、普通の買い物よりも面白みを感じた。
ベトナムの伝統民族衣装であるアオザイの仕立ても見学した。アオザイは上下2着で構成されており、上着はひざ程度までの長さがあり、裾から両脇にスリットが入っている。また、シルクのような生地には美しい模様がデザインされている。細身仕立ての服なため、人に合わせてオーダーメイドで作られるそうだ。通常は、大事な行事の際に着用するが、通学時の女学生や飛行機の客室乗務員も着用していた。
これらのような自らとは異なる文化を体験したことで、日本の文化をやや客観的に見つめる視点を持てた気がする。
▲ ページのトップへ戻る
▲ ページのトップへ戻る
TOP