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● 三菱商事 ハノイ事務所・ホーチミン事務所
● フーミー1号発電所/ベトナム・シンガポール工業団地
● ユニマート1号店/ヴィナコフコーヒー精選所
● そのほかの見学先/生活文化体験
総合商社として 必要とされている技術の紹介や企業誘致
ベトナムが今後発展をしていくためには、深刻な電力不足という問題を解決しなければならない。そのために、国内にはいくつかの発電所が開発されてきた。その中のひとつにフーミー地区の発電所群がある。ここには6つの火力発電所があり、3850MW(メガワット)の発電量をもち、ベトナム発電量全体の28%を占めている。なかでもフーミー1号発電所は日本のODA案件として三菱商事と三菱重工が共同で建設した、1090MWというフーミー地区内最大の発電量を有する火力発電所である。
フーミー1号のガスタービン。発電量は同発電所内では最大
フーミー1号は、蒸気でタービンを回す一般的な汽力発電方式ではなく、高温・高圧のガスを直接タービン内に送り込んで回すガスタービンを用い、さらにガスタービンから出た排熱を再利用して蒸気タービンを回すコンバインド・サイクル方式を採用している。これにより、従来の火力発電所に比べ15%程度熱効率が上がり、より多くの発電量を確保することに成功した。日本では、三菱重工だけがガスタービンの設計から製造を一貫して手掛けるノウハウを持つ企業で、その技術と知識を三菱商事がベトナム電力公社に紹介した。この方式は初期投資を低めに抑えられ、立地場所を選ぶ必要も少ない。またベトナムは原油が豊富で、国内には製油所が建設され始めているので、将来自国の石油を利用した発電を行うことができる。二酸化炭素の排出量削減、さらなる熱効率の向上など、取り組むべき課題はまだまだあるが、ベトナムの現状を踏まえた上で、最も適切な発電方法を手掛けたと言えるのではないだろうか。
24時間体制のフーミー1号発電所コントロールルーム
ベトナムとシンガポールの両国が推進するビックプロジェクトとして、ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)がある。私たちは、5日目にここを訪れ、広大な土地を見て回り、VSIPの森田さんに説明を受けた後、ショールームを見せていただいた。ショールームにはジオラマや入居企業の製品ディスプレイがあった。
VSIPはこの工業団地に進出する企業に対し、設立から通関、人材確保から水道や電気といったインフラの提供を一貫して行う。そのほかにも、ワンストップで許認可が取得できるなど、進出企業が活動しやすいようにサポートする仕組みが数多くある。現在23カ国367社のうち、日系企業は83社あり、三菱商事はその一部の企業の誘致支援を行っている。
VSIPのショールーム。中央にはジオラマが
ベトナムには海老、香辛料などの原料と廉価な労働力が豊富で、また人口が増えることもあって、今後有力な市場となることが期待されている。三菱商事がVSIPにおいて、優良な日本企業の誘致活動をしていることで、ベトナムは強みを活かしつつ雇用や税収によって豊かになり、さらに日系企業はその技術や知識をベトナムの人々のために役立て、さらなる活躍の場が増えるなど、相互にメリットが生まれている。より多くの人のためになるように、三菱商事は商社として最善の仕事をしているとわかった。
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光る日本の技術力
ツアー4日目。路面状況は想像を絶するほど悪く、文字通りデコボコとした道路をバスに乗って走り続けること約2時間。時折、体が宙に浮くほどの激しい上下の揺れに耐えながら私達が向かったのは、ホーチミンから東に75kmの所に位置するフーミー地区の発電所群だった。
フーミー1号発電所の外観
このフーミー地区には、86haあるその敷地の中に6つの複合火力発電所がある。ここでの発電にはベトナム産の天然ガスのみが使用されていて、これら6つの発電所の合計出力は3850MW(メガワット)と、ベトナム全体の実に3分の1の電力を供給しているのだそうだ。中でも最も供給量の多いフーミー1号発電所は、日本のODAを資金として三菱重工と三菱商事が共同で建設した最新鋭のガスタービン・コンバインド・サイクル発電所である。
このガスタービン・コンバインド・サイクル発電というのは、燃料のガスと空気圧縮を燃焼させ、その際、排出される熱の再利用により、ガスタービンと蒸気タービンの2つのタービンを回す発電方法で、効率の良い、しかも環境にもやさしい発電が可能だ。
フーミー1号発電所のガスタービンについている三菱のマーク
今回、私達はまず、フーミー1号発電所の事務所でスタッフの方からプレゼンテーションを受け、その後実際に発電所内に入り、コントロールルームとタービンハウス、さらに発電所群全体の見学を行った。
私が特に印象に残ったのは、非常に大きな音に包まれていたタービンハウス。ここのガスタービンには、三菱のマークや「Made in Japan」の表記があり、世界における日本の技術力に対する信頼の高さを改めて感じた。
ここ数年、ベトナムでは電力不足の問題が顕在化し、サマーピーク時には地域ごとの計画停電も行われているという。そのため、国内では既に新たな火力発電所の建設や、東南アジア初の原子力発電所の建設も検討・計画されているそうだ。まさに日本企業の代表としての三菱商事には、日本の優れた技術を生かして、それらの計画の推進や支援を行っていって欲しいと思う。
ベトナム最大級の工業団地
工業団地として充実したインフラ
ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)は、ベトナムとシンガポールの両政府がビックプロジェクトとして推進するベトナム最大級の工業団地である。VSIPは、三菱商事を含む7つの外資系複合企業体と地元国営企業との合弁企業で、三菱商事はここで日本企業の誘致支援を行っている。
ホーチミンから北に17kmの場所に500haの広大な敷地を持つVSIPには、現在世界各国から367の企業が入居しており、そのうち日系企業が占める割合は約4分の1。第1期が完成したのは1997年で、その際の最初のテナントも日本の会社だったそうだ。以後も拡張が続けられ、今では生産総額が年間20億ドルを超える。
そんなVSIPは、工業団地としての電気、水道、排水処理、通信など充実したインフラを提供し、入居企業を支援している。周辺地域の豊富かつ廉価な労働力があることなども背景としてあり、ベトナム南部への進出企業に絶大な人気を誇るという。
さらに、ワンストップサービスも人気の理由の一つ。これは、団地内に各種許認可手続きを行う役所を持つことで、入居企業は団地内にいながらにしてスムーズに業務運営ができるサービスで、他の工業団地には見られないVSIPならではのものだ。
ここへの訪問では、ベトナムの産業発展に寄与している日系企業の活躍や工業団地の仕組みを学ぶことができた。
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ベトナムの産業を支える三菱商事
フーミー地区にある6つの発電所は、ベトナムの電力需要の3分の1ほどの電力を作り供給している、とても重要な任務を背負う発電所だ。ベトナムでは主に火力発電と水力発電の二つの発電方式が使用されており、比率は半々程度という。
フーミー地区の中でも最大の出力を誇るのが、日本のODA案件として三菱商事と三菱重工業が共同で建設したフーミー1号発電所である。高圧送電網、取水口等を含めたインフラ全般が日本からのODAによって整備されている。
フーミー発電所のコントロールルーム
燃料はベトナム国内で採れる天然ガスと石油を利用している。火力発電というと環境に悪いイメージがあるが、環境負荷軽減のための取り組みが行われている。例えば、天然ガスでの火力発電にはコンバインド・サイクル発電方式が用いられている。これは、ガスタービンを使って発電した後、従来捨てられていた排熱を有効活用して再度発電する方法で、51%と高い熱効率を実現することができる。
ベトナムは、このフーミー地区の発電所をもってしても、まだまだ電力不足の状況で、計画停電なども行われているため、さらなる発電所増設が待たれている。
発電機。スリーダイヤが目立つ
ツアー5日目、ホーチミン市から17キロ、車で40分の便利なところに位置するベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)を訪れた。ここはベトナムとシンガポールの両政府主導により設立された工業団地で、豊富な工業団地開発実績を誇るシンガポールのセムコープ社が中心となって運営している。三菱商事は一部資本参加して、日本企業誘致の窓口の役割を果たしている
VSIPには、現在367社が入居していて、そのうち日本企業は83社で、4分の1を占めている。入居企業は日本、台湾、シンガポールの企業が50%を占めるという。
生産されている製品が展示されている
生産している物は、部品など輸出用の加工品が多い。
ここでは、ワンストップサービスを実現していて、政府の許認可施設が団地内に設置されているため、投資申請や許認可の手続きを団地内で行うことができるほか、通関手続きも行うことができ、スムーズにビジネスを行うことができる
また、ベトナム・シンガポール技術訓練学校がVSIPに隣接して設けられており、優秀な技術者育成にも力を入れている。生徒は6ヶ月間の集中授業を受けて、機械保守、機械加工、電気、電子、コンピューター制御などを学ぶことができ、年平均340人の卒業生は、その約95%がVSIPのテナント企業に就職する。
ベトナム・シンガポール工業団地の全体模型
貿易の仲介だけではなく、外国企業のベトナム進出の前提となるインフラである工業団地の運営にまで三菱商事は関わっている。発電所や工業団地のような基礎インフラを整備することによって、三菱商事がベトナム発展の一助を担っていると思った。また、コーヒーなどの身近な物から発電所・工業団地などの巨大な物まで関わっているのを見て、総合商社の幅広い事業を例えた「ラーメンからロケットまで」という言葉を実感した。
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火力発電と企業誘致―ベトナムの産業発展のために
フーミー地区にある発電所群は、ベトナム全体の発電量の3分の1を発電している。火力発電は世界の発電の中心で、大規模な発電が可能である。しかし、ベトナムは発電の約半分を水力発電に頼っていて、今後の国の発展に不可欠な火力発電への移行が必要だ。実際にベトナムには、国全体の発電量、13500MW(メガワット)ではまだまだ足りない現状がある。
排熱から蒸気を作る排熱回収ボイラー
フーミー地区には6つの発電所があり、私達が見学したフーミー1号は、三菱商事と三菱重工が共同で建設したものである。フーミー1号は、フーミー地区の発電所全体の合計出力3850MWのうちの1090MWを占めていて、6つの中で一番大きい。運行初期に比べて発電量が8.6倍に増えているそうだ。このような巨大な発電所の建設費用が日本のODAによるということは、日越関係の良さの表れだと思う。
また、ベトナムは原油や天然ガス、石炭などの資源が豊富だ。そのため発電には、国内でとれた天然ガスをパイプで運んできてそのまま使っているという。そして、まだ使われたことはないというが、万が一、ガスの供給が途絶えた時に備えて、ディーゼルオイルが大きなタンクに貯蓄してあった。
発電機の青に三菱の赤いマークが映える
フーミー1号発電所は、最初の発電の際に出た高温の排熱により蒸気を起こし、再び発電するコンバインド・サイクルという方法を採用している。この方法により、わずか1%を上げるだけでも大変な熱効率を、通常よりも15%程度も上げることができるという。ガスまたはディーゼルオイルでしか発電できないことや、1400~1500度の高温ガスによりタービンが痛みやすいことなど、欠点もあるが、エネルギー問題や地球温暖化といった問題解決に向けて、広げていくべき技術だと思う。
ツアーの最終日、私達は"最も成功した工業団地"の一つとも呼ばれるベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)を訪れた。広さはベトナム最大の500ha。日本の最大の工業団地の広さ、200haと比べてもかなり大きい。
模型を見ると、全体がまるでテーマパークのようだ!
VSIPは、ベトナムとシンガポール両国の企業の合併で始めたプロジェクトで、工業国化を遂げたシンガポールのインフラ開発のノウハウが導入されている。三菱商事はVSIPに一部出資し、日本企業の誘致を支援している。現在、日本企業は誘致された海外資本の4分の1を占めているといい、見学させていただいたショールームでは、実際に文具、医薬品、飲料メーカーなど、数々の身近な日本企業が入居していることがわかった。
海外企業を誘致することは、国内企業の競争力が低下するというデメリットはあるが、雇用が拡大し、税収が上がるという大きなメリットを兼ね備えている。ベトナムでは、2005年からVSIP2が建設され、さらに1000haの増設と、北部にも700haの建設を予定しているといい、そこからベトナムの海外企業の誘致への力の入れようを感じる。また、ベトナムはただ企業を誘致するだけでなく、VSIP内にシンガポールのODAにより学校を作り、ベトナムで活躍する人材の教育も行っている。卒業生の95%は、VSIP内の企業に就職するという。
アパートや病院、消防署から、ショッピングモールまで、タウンシップ開発により一つの街となりながら、VSIPはベトナムの産業発展に寄与しているのだ。
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