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● 三菱商事 ハノイ事務所・ホーチミン事務所
● フーミー1号発電所/ベトナム・シンガポール工業団地
● ユニマート1号店/ヴィナコフコーヒー精選所
● そのほかの見学先/生活文化体験
世界の食の安全に商社の活躍あり
さぬきうどん。こしひかり。冷凍たこ焼き。日本酒。
数多くの日本の食品が陳列された棚。「ここは日本?」と疑いたくなるくらいだ。ハノイ市内にあるスーパーマーケット、ユニマート。
日本語で表記された『こしひかり』
ユニマートの前身は三菱商事が現地の食品会社等をパートナーとして1999年に開業したスーパーマーケット。現在は台湾企業、統一超商も加わりユニマートと改名して営業中。つまりひとつのスーパーマーケットに3つの国の企業が関わっているのだ。2006年にはハノイ市から小売り優秀店として表彰された。昨年には2号店もオープンし、今後も次々に出店するものと思われる。
一体、この不況といわれる世界で、どうしてユニマートはこんなに勢いがあるのであろうか? 私なりの答えが取材する中で見えてきた。
精選前と精選後のコーヒー豆
従来ベトナムの人々が食べ物を購入するのは、市場が主流であった。もちろん現在もベトナムには市場は存在する。近年ベトナムはアジアの中でも目を引く大成長を遂げている。そんな成長とともに人々の暮らしにも変化が現れた。所得も増え、車に乗る人も現れた。同時に人々の食生活にも変化が現れたのだ。人々は「食の安全」を求めるようになった。それは、やはり金銭面で余裕が出来たからだと思う。やはり安全を求めるとなると、スーパーマーケットの方が市場よりも上回る面が多い。ベトナムの人々が必要とする「食の安全」をユニマートは毎日提供しているのである。そして、この「食の安全」に対する需要は、これからますます高まるはずだ。
さて、ここで休憩にコーヒー1杯。というのは冗談で、次はベトナムコーヒーについて。ベトナムは世界第2位のコーヒー生産国。日本でも年間およそ45,303トン輸入している。三菱商事ではスイスのコーヒー輸出会社とパートナーシップを組んで、日本への一部上質品の独占販売契約を結んでいる。こちらのスイスの会社では「量より質」を重視しており、そのポリシーに共感した三菱商事が最大のバイヤーとして、日本向け商品全体の半分以上を買い付けているという。やはりこちらでも「食の安全」は非常に重視されている。
実際に味わって検査するテイスティング
ブース社長に工場内を案内された際に、まず倉庫の大量のコーヒー豆が現れた。それは農家から届いた、チェック済みの品質の高いコーヒー豆ばかりだ。次に多くの精選設備を見せていただいた。石除去機や重量選別機、研磨機にサイズ別機、色彩選別機など。どれもこれも小さなコーヒー豆一つ一つを丁寧に選別する。石ころや豆の皮、ほんの数ミリ単位のゴミまで、事細かに処理されていた。さらに「食の安全」への取り組みはこんなものでは終わらない。生産地から一貫したトレーサビリティー(流通経歴)追跡システムを確立し、流通経路が把握された完璧な品質管理を目の当たりにした。
私達が安全など意識せずとも、食卓にはおいしいコーヒーが並んでいる。その背景には、このように「食の安全」に対して真剣に向き合う人たちが存在する。三菱商事の皆さんのお陰で、世界の食の安全は今日も守られている。
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新しい庶民の台所~ユニマート登場!!~
ツアー2日目、私たちはハノイ市内にあるスーパーマーケット、ユニマート1号店へ向かい、そこで三菱商事の河内さんに店内の案内をしていただいた。
ユニマート入り口。私たちを歓迎してくれた
1999年、三菱商事は現地の卸・食品会社と提携してスーパーマーケットを開業した。そして2004年、台湾企業の「統一超商」が加わり、現在の「ユニマート」となった。
スーパーマーケットが出来る以前の庶民の台所は市場であった。品物が安く手に入る市場に対し、スーパーは人材育成や安全・衛生面にコストがかかるため値段は高めだ。そこでユニマートでは多くのお客さんに来てもらうための工夫を凝らしている。
例えば、新鮮な肉、魚を置くことはもちろん、商品の流通過程を知ることや、検疫を受けたものを置くこと、店内の衛生にも気をつけている。
また、他のスーパーには無い、肉を細かくカットするサービスなども行っている。
今は2店舗あるだけだが、今後ますます発展していくだろうユニマートの活躍が楽しみだ。
ベトナムコーヒーは甘い香り?!
色彩選別の段階。機械が大活躍
4日目、一行はホーチミン市郊外ロンタンにあるヴィナコフコーヒー精製所に赴いた。
ベトナムでのコーヒーの生産は、1888年にフランスが北、中部高地の農園で始めたことをきっかけに、2003年度には生産量が90万トンになり、以降、ブラジルに次ぐ世界第2位の生産を誇っている。また、日本への輸出も1990年から2008年にかけて約300倍と大幅に伸びている。
スイスのコーヒー輸出会社であるヴィナコフ社は、高品質品の安定した供給に力を注いでおり、生豆を生産者から、約60社の仲介業者など通して買い付け精選加工し、輸出している。
また、ベトナム中部の農家と提携し、定点観測と呼ばれる正確な生産状況の管理システムにより、他社との差別化が可能になっている。
麻袋に穴を開けて、検査した跡
ユーモアセンスたっぷりのブース社長と三菱商事の高橋さんに工場案内をしていただき、今回私たちが見学したのは、精選加工の工程だった。
精選加工には、異物除去、重量選別、サイズ選別、生豆より軽い異物の除去、色彩選別、研磨の6つの段階があり、段階を追うごとに普段日本で売られているコーヒー豆のような美しさに近づく。
写真の麻袋に穴が空いているのが分かるだろうか。これはインスペクターといって、売り手と買い手の間に入って客観的に判断する人が精選加工後の豆の状態を調査した跡だ。調査では、実際に飲むこともある。このように徹底した管理を経て、やっと輸出される。
私たちも精選加工する前と、した後の豆を挽いたコーヒーを飲ませていただいたが、コーヒー通ではない私にはベトナムのコーヒーが甘いことしか分からなかった。日本人の細かいニーズに応えるべく、今日もヴィナコフ社は頑張っている。
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この国の食の安全を守る!
2日目、私たちは三菱商事の河内さんの案内のもと、ユニマートを訪れた。ユニマートは1999年にできた、台湾の統一超商とベトナム国営企業のハノイ食品会社、そして三菱商事の3社による合弁会社だ。ベトナムでは、市場が主な食品の購入先だが、近年の食の安全に対する意識の高まりや、日本人をはじめ外国人が国内に増えていることから、そのニーズに応えるために誕生した。ユニマートは、(1)産地の確認(2)検疫ほか、審査をきちんと受けたものに限った販売(3)徹底した衛生面の管理を原則として運営する近代的スーパーマーケットだ。
日本とほとんど変わらない内装だった
お店の中に一歩足を踏み入れ、まず思ったのは、「外観も内装も日本にあるスーパーと特別変わらない」ということだった。野菜や魚など生鮮食品がきちんと包装され、冷蔵商品ケースで新鮮かつ安全に保たれている。床には埃も落ちておらず、衛生面にかなり気をつかっていることがすぐにうかがえた。市場で無造作に売られている食べ物に抵抗を感じる私も、ここでなら安心して買い物が出来ると思った。
しかしながら、見学を進め、細かい所を観察していくうちに、少しずつ日本のスーパーと違う点が浮かび上がってきた。
様々な種類のお茶が並ぶ。私は蓮茶(はすちゃ)がお気に入りだ
私が気付いた違いの全てを書くことはできないので、ここでは値段に焦点を絞りたいと思う。
まず、値段の表示がユニマートではかなり小さい。日本のスーパーは、セールでなくても、一目で分かる大きさの文字で書いているのが一般的だが、ユニマートでは、よく目を凝らして値札のシールを見ないと分からないものばかりだ。これは、1円でも安く買い物をしたいと思いがちな日本人と、楽観的で大らかなベトナム人との文化や考え方の違いの表れだろうか?
また、野菜コーナーに何気なく売られていた「ゴボウ」の値段の高さにとても驚いた。なんと、日本円で1本900円もするのだ。高値の理由は、国内で採れないために、中国で栽培して輸入しているため。そのゴボウは日本のものよりも随分太かったが、それにしても、「やっぱり、高いことには変わりないな」と、私は思ってしまった。さらに驚きなのは、こんなに値段が高くても、このゴボウに需要があるということだ。裕福なベトナム人や外国人が買い求めていくという。ちなみに、このゴボウの値段も前述の通り、小さなシールで表示されているのみだった。
また、見学後に、ユニマートで買い物を体験させていただいた。その際、レジで、使った後のかごをどこに戻せばいいのか分からず困っていると、店員さんが笑顔でさりげなく、そのかごを片付けてくれた。その時は、そのサービスが当たり前だと思っていたが、その後宿泊したホテルのレストランや空港の免税店で従業員と接してみて、ベトナムの中で、やはりユニマートが従業員教育で一歩先をいっていることを強く感じた。
さらに4日目、今度はヴィナコフコーヒー精選所を訪問した。ベトナムとコーヒーでは、あまりイメージが結び付かないかもしれないが、実は、ブラジルに次ぎ、ベトナムは世界第2位のコーヒー生産量を誇っている。そして、野菜や魚のように、直接は口にしないコーヒー豆でも、いずれ、安全に対するニーズが高まっていくとの読みから、今回見学したヴィナコフコーヒー精製所がつくられた。
精製前(左)と精製後(右)。違いが一目瞭然だ
ヴィナコフ社は農家と契約し、常に栽培状況を細かく把握出来るようにしている。農家との固い連携、それに伴って得られる高い精度の産地情報が、他社との差別化のポイントだそうだ。三菱商事はヴィナコフ社とパートナーシップを結び、日本向けに一部上質品の独占契約を結んでいる。
次に、コーヒーの精選の役割について説明したい。それはずばり、農家で丹精込めてつくられたコーヒー豆をいかに"高級品"に仕上げるかということだ。ヴィナコフ社では、大きく分けて6段階の作業を行い、豆の大きさと色を均一に揃え、細かい異物を繰り返し除去していく。このように長い過程を踏むことで、雑味のない、良質なコーヒーの安定した供給ができるのだ。そのため、品質に厳しい日本のバイヤーの評価も飛躍的に上がっているとのことだ。
日本のユーザーに向けて、徹底した管理・調査の下、良質のコーヒーを作り出す生産者、その豆を精選加工して質を高める工場、生産から販売までの全工程を管理し、独自の販売のネットワークで輸出を行う商社、3つそれぞれの働きが上手く組み合わされているからこそ、良質なコーヒーの安定した供給ができるのだ。ここでも、三菱商事の役割の大きさを痛感した。
どちらの事業においても、キーワードは"品質で売る"である。品質を守りながらコストをいかに下げることが出来るか。そこには、ベトナムの人が気付かない、日本人ならではの、いや、三菱商事ならではの知恵が生かされている。これにより、ユニマートやヴィナコフコーヒー精製所もどんどん進化し、成長していくだろう。両事業の今後が非常に楽しみだ。
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キャッチフレーズは徹底的な品質管理!!
「食の安全」を提供するスーパーマーケットとして市民の食生活を支えるのが、1999年開業のユニマートだ。ユニマートは、日本企業の三菱商事、ベトナムの国営企業ハノイ食品会社、台湾企業の統一超商の3社が共同で運営している。2006年にはハノイ市から小売優秀店として表彰され、2008年には2号店もオープンした。
店内の様子。右には野菜コーナーが見える
今回、私たちは、ユニマート1号店を見学させていただいた。スーパーマーケットということで、店舗は市街地の中にあった。店内の形式は日本を参考にしたらしく、入口、野菜・果物コーナー、魚・肉コーナー……というように続いていた。米の生産が多い国ということもあってかお酒の人気も高く、輸入した日本酒も陳列されていた。今では、現地の米から作った酒も売られているそうだ。また、2階一面には生活雑貨のコーナーもあった。
ユニマートは店の方針として、食の安全に特に力を入れている。
精選所の入口。面白いロゴがある
仕入れている野菜の一部は、農家に対して生産方法を指定し、そうして収穫されたものが売り出されている。日本や中国など近隣の国から輸入された商品もあった。魚や肉などの生ものは切り分けてあるものが売られており、店員が調理してくれるサービスもある。
これまでは、街中にある市場が食料品の主な購入場所であったため、それとの差別化を図るために徹底した品質管理と店員の教育などが行われている。商品の値段は上がったものの、最近はベトナムの消費者も品質を意識し始めたため、スーパーマーケットという文化も徐々に定着しつつある。
今後はさらに「心」を込めたサービスを重視し、店舗数を拡大していくことが目標だそうだ。
ヴィナコフコーヒー精選所は、ホーチミン市郊外にある。ここではコーヒー豆を農家から買い付け、精選し、輸出している。徹底した品質管理のために農家と提携して、生産地の仲介業者から一貫したトレーサビリティを確立し、生産状況を観測、把握する。
大量に積まれた、輸出用のコーヒー
工場内では数多くの機械が稼動しており、とても暑く、騒音がすごかった。しかし、それだけ多くの機械を用いて石などの異物除去、サイズ選別、薄皮の除去、さらに色による選別などを行うことは、日本のバイヤーや消費者のニーズにこたえるものであり、コーヒー豆にさらなる付加価値を付けて販売することができる。そのため、農家の人々にもその利益は還元され、コーヒー産業のさらなる発展につながっていく。この、スイスのコーヒー輸出会社であるヴィナコフ社の"量より質"という精神に共感し、現在、三菱商事はこのコーヒー精選所の一部高品質な商品を日本へ独占的に販売する契約を結んでいる。
また、コーヒーの輸出はベトナムにとって、重要な外貨取得の手段でもある。ベトナムは日々経済発展を遂げているが、いまだに輸出品目は一次産品がほとんどで、米・ゴム・胡椒などの農産物とともに、コーヒーはとても重視されてきた。そして、いまではブラジルに次ぐ世界第二位のコーヒー生産国としての地位を確立し、維持している。
これからもより多くの量のベトナム産の高品質コーヒーを、日本の家庭やコーヒーショップで飲めるようになっていくだろう。
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