熊谷秀島さんから、見た目にわかりにくい障碍(がい)は自己責任と解釈され、より強い偏見や差別にさらされるというお話がありました。症状に波があれば、自己管理を問われることもあります。
酒井富田さんのスピーチでは、周囲に気づかれにくい軽度障碍ならではの困難さのお話もありました。一般に理解が得られにくいからこそ、患者さんや支援者からの継続的な働きかけは重要です。
秀島自分はなぜこんなに苦しいのかと長く悩んできましたが、熊谷先生のお話で、自分の置かれた状況が理論として理解でき、自分を肯定することができました。学問は大事ですね。
富田自分の心理状態を客観的に把握することは重要です。学問的に学ぶことで、自分の障碍や偏見に対する向き合い方も進むと思います。一方、多様性を掲げながら、自分の経験のみからの発信になってしまうことに葛藤があります。あらゆる偏見に働きかけるためには、どうすれば……。
熊谷過大でも過小でもなく正直に自分の経験を語ることが、最も偏見や差別を減らすとわかっているので、富田さんのお話はとても良かったです。話を一般化しようとすると、ラベリングにつながってしまいます。
酒井学会でも同じ疾患の患者さんだけでなく、疾患領域を超えた患者さんの個々の発信が大きな学びとなることがあります。異なる疾患でも共通の課題は多い。偏見について理解を深める機会を持つことが大切ですね。
――当事者ではない者が患者さんと接する際に自覚したいことは?
秀島会話を積み重ね、相手を知ろうとすることが大切ではないでしょうか。
富田普段から対等な立場で信頼関係を築いておくことが大切。誰もがある種のマイノリティーであり、自分の弱さを自覚することで対等な関係を築けるはずです。
――最後にメッセージを
酒井まずは理解することですが、理解すれば解決というわけではありません。理解したうえで行動に移せるかどうか。日本人は思いやる気持ちがありながら、公に行動に移すことがやや苦手。恥ずかしがらず、変わることができれば。
熊谷頑張りすぎなくてよい社会、病気があってもなくても弱さをオープンにできる社会。それが偏見や差別をなくす一つのソリューションになると思います。