高校2年時に徐々に視力が低下する網膜色素変性症が発覚し、症状の進行とともに様々な偏見や差別を経験しました。現在の視力はわずかに光を感じる程度です。偏見や差別は、社会の制度上のもの、周囲からのもの、自分自身が抱えてしまうものと三つありますが、障碍(がい)の程度によっても変わってきます。軽度のときは、制度の死角となって優遇措置が受けられない、病気が理解されないといった困難さがありました。自分自身も視覚障碍者に対する偏見から絶望し、症状が進行したときにはうつ症状にも陥りました。
しかし、パラ水泳に出会ってから、自分の病状や要望をどう伝えれば周囲の協力が得られるのかと考えるようになり、自ら積極的に発信することで偏見や差別を少しずつ解消できるようになりました。また、様々な障碍を持つ方と共に取り組むことで自己肯定感も向上し、将来にも前向きになりました。今後も多様性のある社会の実現を目指して、多くの人とつながりながら活動していきたいと願っています。
外見ではわかりにくい病気であるため、周囲から理解が得られず悩んでいる患者は多くいます。急に体調が悪くなり休んだことを「サボりでは?」と疑われたり、体調を崩さないよう仕事をセーブしていて「今、体調悪いわけじゃないよね」と言われたり。近年、支援や配慮を必要としていることを知らせることができるヘルプマークがJIS規格となりましたが、必要な配慮や理解が得られているのだろうかと思います。
実は、多くの患者が病気を言い訳にせず、頑張りすぎる傾向にあります。患者もまた一人の生活者であり、生きるために、また生きがいを求めて働くことを選択します。身を削るようにして頑張らなくても生きていける社会にならないだろうかと思います。昨年、私たちが抱える困難さ、つらさを多くの人に知ってほしいと、IBDネットワークから「未来を拓(ひら)く声明」を発表しました。難病があっても安心して生きていけるために、患者やその周囲の人、そして社会に何ができるのか、皆さんと一緒に考えられたらうれしいです。