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Rare Disease Day 2021 シンポジウム

希少疾患への偏見をなくし、
多様性のある社会を目指して

共催:武田薬品工業株式会社 RDD日本開催事務局

キーノートスピーチ

東京大学
先端科学技術研究センター
准教授
小児科医
熊谷 晋一郎
(くまがや・しんいちろう)1977年生まれ。新生児仮死の後遺症で脳性まひに。大学時より障碍者の高等教育支援、自立生活支援に関わる。東京大学医学部医学科卒業後、小児科勤務、研究生活を経て2015年より現職。専門は小児科学、当事者研究、発達障害。
(くまがや・しんいちろう)1977年生まれ。新生児仮死の後遺症で脳性まひに。大学時より障碍者の高等教育支援、自立生活支援に関わる。東京大学医学部医学科卒業後、小児科勤務、研究生活を経て2015年より現職。専門は小児科学、当事者研究、発達障害。

弱さをさらけ出せる関係が
社会的偏見をなくす第一歩

私たち人間には、十人十色であるはずの人々を十把一絡(じっぱひとから)げにカテゴリー化し、ラベリングして、隔離、偏見、差別を行う、認知や行動の癖のような現象(スティグマ)があります。障碍(がい)を抱える人は、こうした偏見や差別を社会や周囲から様々な形で受けますが、特に厄介なのは、当事者が自分自身にネガティブなレッテル貼りを行う現象です。そこから抜け出すための対処行動にはいろいろありますが、その中で重要なのは、理解ある他者と一緒に自分の価値を取り戻し、他人の評価から自由になるという方法です。
偏見や差別は、それらを負った者とそうでない者が、対等な関係で共通の目標に取り組み、それをバックアップする体制が整えられたときに減らすことができます。マジョリティーもマイノリティーも弱さを抱えた当事者です。弱さをオープンにできる組織は心理的安全性が高く、組織全体のパフォーマンスやウェルビーイング(幸福度)を高めることも証明されており、近年はこうした見地からの組織マネジメントも始まっています。

大阪大学大学院
医学系研究科保健学専攻
教授
小児科専門医・
臨床遺伝専門医
酒井 規夫
(さかい・のりお)1959年生まれ。東京大学理学部天文学科、大阪大学医学部医学科卒業後、94年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。同研究科小児科講座の准教授を経て2015年より現職。専門は先天性代謝疾患、遺伝カウンセリング、小児看護学ほか。
(さかい・のりお)1959年生まれ。東京大学理学部天文学科、大阪大学医学部医学科卒業後、94年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。同研究科小児科講座の准教授を経て2015年より現職。専門は先天性代謝疾患、遺伝カウンセリング、小児看護学ほか。

患者さんがよりよく生きるために
医療同様に、社会も進歩を

難病患者さんの中には、学校や職場において十分な支援や理解が得られず、退学や退職を余儀なくされたり、婚約相手の家族に遺伝性疾患が見つかって結婚を諦めた方がおられます。希少疾患に遺伝性疾患が多く、偏見の原因となっていることは事実ですが、遺伝因子と環境因子との関わり合いで発症する生活習慣病などの普通の病気(コモンディジーズ)も、発症原因として遺伝的背景が関与しているということがわかってきました。
現在、希少疾患の研究は未来の医療を変える大きな潮流となっているとともに、不治の病とされてきた疾患においても様々な治療法が開発されつつあります。こうした医療の進歩に比べ、希少疾患の患者さんを受け入れる社会はまだまだ発展途上といえます。すべての人がより良く生きるためには、ただ生きるだけでなく、生活の質(QOL)の向上が大切です。「健常者が当たり前にできることをできない人がいる」ことを社会の当たり前として認知し、多様性のある社会を広げていくことが課題だと考えています。