「耐震住宅」

2018.11.30

耐震基準だけではない〝地震に強い家〟とは?

 大切な家族と暮らす住まい選びでは、大きな地震が来たときのことを頭に入れる必要があります。地震で壊れないことはもちろんですが、その後も住み続けられるかどうかで、人生設計はがらりと変わってきます。注文住宅では、家主の要望に合わせて、地震に強い住まいにできます。

地震大国日本 「耐震基準」とは

 日本はもともと地震の多い国と言われてきましたが、近年はとりわけ増えている印象です。日本のどこに住んでいても地震に対する備えは欠かせません。

 建物が地震に持ちこたえる最低水準を示しているのが耐震基準です。かつては震度5強程度の地震でほとんど損傷しないこととされていましたが、1981年に導入された新耐震基準はそれに加え、震度6強~7程度の地震で倒壊しないことを求めています。

 日本建築学会が2016年の熊本地震で大きな被害を受けた熊本県益城町で木造住宅を調べたところ、新耐震基準以前の家屋では28.2%が倒壊しました。この比率は、新耐震基準導入から2000年まででは8.7%、基準がさらに厳格化された2000年以降では2.2%に下がっています。

 ただ、2000年以降でも無被害だったのは61.4%で、被害が軽微~中破は32.6%、大破も3.8%ありました。耐震基準を満たしていれば、万全というわけではありません。

耐震等級にも注目

 住宅性能を客観的に数値化する住宅性能表示の項目の一つに耐震等級があります。耐震性能をより細かく表示しています。耐震等級は、耐震基準を満たしていれば耐震等級1ですが、耐震基準で想定する地震の1.25倍の大きさの地震に耐えられれば等級2です。公共性の高い学校や病院などに匹敵する水準です。1.5倍の地震に耐えられるのが等級3で、防災拠点となる警察署や消防署並みです。耐震等級が高いほど頑丈ですから、地震後に大きな補修が必要になる可能性は低いと考えられます。

 ただし、耐震等級の表示は義務ではありません。どの程度の耐震等級にしたいのかは、住宅の工法や間取り、屋根の材質などの影響も受けるので、ハウスメーカーや工務店などとよく相談しましょう。

「耐震」「制震」「免震」それぞれの利点

 地震に強い住宅を建てるには、主に「耐震」「制震」「免震」という三つの方法があります。

 耐震は、柱や壁を強化したり、骨組みの中に筋交いを入れたりして、建物自体を堅くして、揺れに対する強度を高めます。ただ、建物自体は揺れますので、家具の固定などの対策は必須です。

 建物内にダンパーなどの制震部材を組み込み、揺れを吸収するのが制震です。ダンパーには金属製やゴム製、油圧を活用したものなど様々なタイプがあり、メーカーによっても特徴が異なります。免震は、建物と地盤との間に免震装置を置き、建物に地震の揺れを伝えないようにするやり方です。耐震より制震や免震の方が効果は高いですが、費用は増えます。

 木造や鉄骨、鉄筋コンクリートなど工法による違いは、地震への強さにどう影響するのでしょうか。木造ならば壁の多さ、鉄骨や鉄筋コンクリートならば鉄骨の厚みやコンクリートの強度など、様々な条件で変わってきますので、一概には言えません。

 建物以外で、重視すべきなのが地盤です。埋め立て地や斜面に盛り土をして造成した土地などは、地震での揺れが大きくなることがあります。しっかりとした地盤改良工事がされていれば過度に心配する必要はありませんが、地盤調査がされているかなどはよく確認しておくべきです。

万一に備えて「地震保険」も

 地震への備えという面では、地震保険も検討すべきです。地震の揺れだけでなく、地震を原因とする津波や火災による被害は、火災保険では補償を受けられないからです。

 地震保険は火災保険とセットで入ることが条件です。保険金額は火災保険の30~50%の間で任意に設定できますが、建物は5000万円、家財は1000万円が限度になります。保険料は建物の構造や住んでいる地域で異なりますが、保険金額を1000万円とした場合、東京都ではコンクリート造りや鉄骨造りで年2万5000円、木造で年3万8900円となります。

 耐震等級について評価機関から認定を得ている場合、保険料が割引されます。等級3で50%、等級2で30%、等級1で10%安くなります。

専門家からのメッセージ

 どこまで地震に強い住宅にするのかは、各家庭の考え方によって変わります。地震への備えを万全にしたいという考え方もあれば、家が倒れさえしなければなんとかなるという考え方の人もいるでしょう。ほかにも、いざというときに動けないお年寄りがいるなど、個々の事情によっても考え方は異なるでしょう。注文住宅であれば、全体予算の中で耐震性にどこまでお金をかけるのか決められますので、早めに要望を整理することが大切です。

<監修> 住宅ジャーナリスト 山本 久美子さん
リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナー等の講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「All About(最新住宅キーワードガイド)」等のサイトで連載中。

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