都市・地域のスマート化(次世代スマートシティ形成メカニズム)と 企業経営(スマートビジネス)
郭 天宝(かく てんほう)/中央大学専門職大学院戦略経営研究科助教
専門分野 経営学(サービス起業・スマートビジネス・DXイノベーション)
1. 都市のスマート化(次世代スマートシティ形成メカニズム)
今日、日本が抱える大きな問題点は、「失われた30年」に象徴される様に、未来に向けた基幹となる強い産業・経済の明確な政策が不明確な点であります。さらに、首都圏への極端な人口流出(日本の総人口1/10が東京に居住)による地方人口の過疎化や、今後益々加速される高齢化(2040年には高齢者人口が35%を超えると予想)、さらには政府・自治体の財政の脆弱化等、深刻な課題が多く存在します。
このような背景において、政府は、スマートシティ形成に向けた政策や、地域発ベンチャー起業、グリーンDX等の新たなイノベーション政策を掲げています。
私が強い関心を持っているのは、都市や地域のスマート化であり、未来の新たな産業の1つとして、スマートシティ領域におけるDXソリューションやサービス起業等の新しい産業や企業を創出することであり、経営学の視点から、これらの研究活動をしております。
2. 新都市型スマートシティとレトロフィット型スマートシティ
日本は、2005年頃からスマートシティ形成に向けた取り組みをしてきており、既に278か所程度のスマートシティプロジェクトが存在してきました。日本のスマートシティの共通点は、国土が狭いといこともあり、都市の再開発(レトロフィット型)がほとんどであります。日本のスマートシティの特徴は、産学官民が連携して、スマートシティを拠点としたDX化やサービス起業によるベンチャー起業等が新しいビジネスを創出している点であります。
一方、中国では、「千年大計」をスローガンに、千年に1度の巨大な新都市型のスマートシティ形成が進んでいます。それが、雄安新区のスマートシティであります。雄安新区は、北京、天津から105キロメートル、河北省の石家荘(せっかそう)から155キロメートル、保定から30キロメートル、北京新空港(大興空港)から55キロメートルの距離にあり、立地条件、便利・スムーズな交通、優れた自然環境、資源環境、既存開発度の低さ、豊富な開発スペース、高い出発点と高水準の開発・建設の基礎条件などの面も競争優位性を持っています。
私の研究テーマは、日本のレトロフィット型スマートシティと中国雄安新区の新都市型スマートの形成メカニズムを経営学の視点から比較研究をすることで、都市のスマート化に関する領域の普遍的なモデルを検討することです。
3. スマートビジネスモデルの優位性
次世代のスマートシティ形成や地域創生(グリーンDX・スマート農業等)の課題として、課題発見~課題解決に向けた取り組みが行われています。スマートシティや地域創生の領域においは、生成AI・ビックデーター解析・自動運転・デジタルツイン等のDXテクノロジーの役割が重要視されています。これらの新領域における戦略的協創や、産学官民連携の特徴、さらには、サービス起業(スマートビジネス創生)に向けた課題の抽出や、学術的研究に基づく政策的提言等の活動を目指しております。
4. 企業のDX化と経営変革
企業の成長においてDXイノベーションは、必要不可欠な課題であります。日本の企業はDXを利活用したスマートビジネスを展開することで、経営革新・変革に取り組んでいます。また、GAFAMやチャイナ・デジタル等の新興ベンチャー企業の台頭により、企業の競争環境は大きく変化しています。
このような背景において、企業のDX化の進行における課題発見~要件定義~マネタイズ(プラットフォーム戦略)~アプリ開発における特徴の抽出と、DXイノベーション領域における競争優位性に関するメカニズムの研究をしております。
郭 天宝(かく てんほう)/中央大学専門職大学院戦略経営研究科助教
専門分野 経営学(サービス起業・スマートビジネス・DXイノベーション)大学時代は日本語専攻を卒業。2019年に横浜市立大学大学院国際マネジメント研究科にて修士(経営学)を取得。2019年から日立製作所グループ会社で国際営業職を経験後、設立者として教育関係のベンチャー企業を立ち上げ、2022年から中央大学大学院商学研究科博士課程後期課程商学専攻に入学。中央大学企業研究所研究員、明治大学サービス創新研究所研究員、中国清華大学日本研究センター研究助理、2023年より現職。
研究課題は、スマートシティ形成メカニズム、地域創生(グリーンDX・スマート農業等)、企業のDX化(スマートビジネス)領域における経営課題(戦略・組織・人財)の特性に関する研究