松本 浩二 【略歴】
松本 浩二/中央大学理工学部教授
専門分野 熱工学
コンピュータ等の精密機器の高機能化に伴う、その内部で発生する熱の排出、部品の高精度加工のための温度制御など大変重要となっています。さらに、社会的キーワードである“エネルギーの有効利用”及び“環境負荷低減”の実現するため、熱の貯蔵技術や廃液の処理技術の確立は重要かつ緊急な課題です。また臓器及び食品等の凍結保存・解凍技術の確立なども重要かつ緊急な課題であり、ここでも熱の知識が重要となります。これらはほんの一例ですが、この様に現在多くの状況下で熱(伝熱現象)に関わる問題が起こり、それら重要な問題を解決するのが“伝熱工学”です。そして、今後益々先端技術を含む広範囲な境界領域において伝熱工学的立場からの検討が重要かつ不可欠になってくると考えられます。
本研究室では、”エコアイス”のコマーシャルで有名な氷蓄熱システムに関する研究を行ってきました。電力需要は、昼間に偏在しており、電力付加平準化を目的とした深夜電力を利用した氷蓄熱システムが普及すると日本全体でCO2が約62万トン削減できるとういう試算もあり、環境負荷低減に大変役立つ技術です。また、効率的コールドチェーン(食品の冷蔵保存・輸送)の構築を目的とした新たな機能性氷・氷スラリーの開発を行っています。さらに、マクロ及びマイクロ・ナノスケールでの氷の固体面への付着現象、付着力を制御するための薄膜の開発、霜の形状/分布と霜のかき取り力の相関の解明、氷結晶の方向を制御した廃液処理及び食品の凍結濃縮の技術の確立など伝熱現象との広範囲な境界領域を研究対象としています。
本研究室では大学の研究を紹介する日本最大の見本市であるイノベーション・ジャパンへ6年連続して研究内容の出展を行っており、さらに、複数の企業との共同で研究も行っております。
現在、生鮮食品の鮮度保持において殺菌・脱臭作用のあるオゾンガスを水に溶解させたオゾン水が効果的であることが確認され、その利用が拡大している。しかし、オゾンは時間経過により酸素に分解することから、安全である反面、その効果の保持が困難である。そこでオゾンの保持と保冷効果を目的としてオゾンガスを氷中にマイクロバブルとして封入させたオゾン氷を開発することで、効率的コールドチェーン(生鮮食品の保存・輸送)を確立し、食品流通システムに変革を与える。
氷蓄熱システムは主に大規模ビル空調に利用されてきた。しかし、空調に必要な冷却水温度と氷の融点には5~7℃程度のギャップが有り、氷の冷熱の有効利用のためには、空調より食品冷蔵が有望であると考えられる。そこで、氷・氷スラリーの食品冷蔵への展開を提案する。
氷の付着現象は、私たちに身近な生活から工業分野に渡るまで様々な状況で発生する。氷の付着について、多くの場合、付着力の抑制が望まれているが、近年では、氷の利用の拡大に伴い、付着力を増加させる技術にも注目が集まっている。そこで、氷の付着力を制御する様々な方法を検討する。
氷は、我々の極めて身近な物質ですが、非常に大きな冷熱を蓄えることができ、環境に対する負荷もありません。それ故、例えば、省エネでCO2抑制効果の高い”エコキュート“で知られるヒート・ポンプシステムでの蓄熱方法としての氷蓄熱など、氷による蓄熱は、今後益々発展していくことが予想されます。そのような氷の利用の一環として、2010年9月より、本研究室が主体となり、学会と企業との共同研究プロジェクトを立ち上げました。そのプロジェクトの中で、氷・氷スラリーの食品冷蔵への展開を促進するための様々な高機能氷・氷スラリーを開発し、氷・氷スラリーによる効率的コールドチェーン(生鮮食品冷蔵・輸送システム)の構築を目指しています。また、氷の付着抑制・防止技術の確立は、多くの企業から高いニーズがあり、その技術の早急な確立も目指していきます。