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中倉 隆道さん

中倉 隆道さん【略歴

コミュニケーションを知る

中倉 隆道さん/フリーアナウンサー、メディアプロデューサー

 アナウンサーとして言葉に携わる仕事をして15年になりますが、ここ数年は、学生さんや社会人の方、取材先の方から『どうやったら上手にコミュニケーションを取る事ができるようになりますか?』という質問をよく受けるようになりました。時には共演しているタレントさんからも。

 みなさんも「コミュニケーション力」という言葉を最近よく聞くようになったと思いませんか?

 コミュニケーションとは、毎日誰もが行っている「会話」のことで全く難しいことではないのです。話す事ができない赤ちゃんですら泣いたり笑ったりすることで親とコミュニケーションをとっているのです。毎日無意識に話をしているけれど、話し方を専門的に学んだことのある人は殆どいません。話すことは、食べることや歩くことなどと一緒で、意識して見直して、自然にできるまで練習することで、ある日自然に振る舞えるようになってくるものなのです。

 では、なぜ今こんなにも「コミュニケーション力」が必要と言われるようになったのでしょうか。

 それはコミュニケーションの文化的社会的変化が背景にあるといえます。

日本人は「人前での話」が得意ではない

 元来日本には「波風を立てない」「寡黙は美徳」「阿吽の呼吸」という言葉があるように、「1言えば10伝わる」という「察しの文化」の伝統が日本的な感性のコミュニケーションを作り上げてきました。このようなコミュニケーション土壌で育った日本人は、人前で自分の話しをしたり会話をリードしたりする事が得意ではないと言われてきました。

 一方で、欧米でのコミュニケーション方法は「端的に言う」「自己主張する」「対立こそ発展」が主となっていて、日本文化にはない明快なやりとりが求められています。

 この違いを例えるならば日本人は「天気の話題や社会情勢など」を会話の最初によく入れます。

 例えば『いい天気ですね』など、その後を相手に察してもらうような文末にいつのまにかしているのです。しかし欧米では、『今朝僕は天気が良かったからジョギングをしてきた。君は何をしたんだい?』というように、「より具体的に」そして「自分の話」を入れて会話を進めます。これがコミュニケーションにおける文化の大きな違いなのです。この例を見て「自分も同じことしている!」と思う方も多いのでないでしょうか。

コミュニケーション力の国際化

 日本の感性的コミュニケーション方法は、フワフワした会話が続くため「会話の時間が長くなる」というデメリットが発生しますが、「相手を深く知る事ができる」というメリットも生まれてくるので、相手との信頼関係を築く上ではとても大切な手法です。しかし、国際化が進むにつれ、どの企業も海外との取引や連携は必要不可欠になってきている中、時間とコストがかかる日本的コミュニケーション方法だけではなく、簡潔で物事をハッキリと明確に伝える事ができる欧米的コミュニケーション方法をも求める企業が多くなってきているのです。言ってみれば「コミュニケーション力の国際化」が今求められていることなのです。

 経団連が毎年発表している「選考時に重視する要素」によると、企業が学生に求める力の1位は「コミュニケーション能力」で12年連続1位となっています。就職活動の時期になると、各社揃って『弊社はコミュニケーション能力のある人材を求めています』と説明会で話しているのをよく聞きます。それだけ「コミュニケーション力」とくに自己表現や主張ができる欧米のコミュニケーション方法ができる人材が求められているのです。では、私たち日本人がどうすれば欧米のような直接的表現力を身につける事ができるのでしょうか。実は、意外と簡単なことなのです。コミュニケーション方法を改めて学び、自分の表現方法に自信を付けるだけです。

コミュニケーションを知る

 コミュニケーションとは、「話す・聞く・伝わる」それぞれの総合力です。

①話す・・・呼吸、声量、音程、速度、間、緩急、発音、明瞭
②聞く・・・理解、質問、相槌、姿勢
③伝わる・・構成、具体性、共感、表情、目線、表現、語彙

 欧米のコミュニケーション方法は、これらが明確になって表現されているだけなのです。私たちも日常やっていることではありますが、1つ1つどのように自分が行っているか気にしたことはないでしょう。そこでチェックをしてみてください。「相手と話す時の声の大きさや速さはどうなのか」「話している時の目線や姿勢はどうなのか」「伝えたいことを表現するための語彙を持っているか」など。そうすると自分の話し方や伝え方の悪い点や良い点がたくさんでてくるはずです。それらを直すだけでコミュニケーション方法は格段とUPします。

プロの話術「ショートセンテンス」

 誰でも簡単にできるプロのアナウンサーの話術があります。それは「短いセンテンスで話す」ことです。どうしても日本人の表現方法は形容詞が山ほど付いてしまい1文が長く長くなってしまいます。その結果「何を言っているのか分からない」「発言が伝わらない」ということに陥ってしまうのです。

 告白する時を思い出してください。「あなたのことが好き!」と言いますよね。とても分かりやすいはずです。日常会話でもぜひショートセンテンスを用いてください。時に「あっ!自分の喋りの一文が長くなっている」と思ったら、途中で。(まる)をつけて喋りをバッサリと止めてみてください。意外とそこまでの喋りだけでも伝わるものです。それを何度も繰り返していると、「短いセンテンス」で会話する事が自然とできるようになり、直接的表現にちかい欧米コミュニケーション方法になっているはずです。

中倉 隆道(なかくら・りゅうどう)さん
神奈川県横浜市出身。1977年生まれ。
2002年 中央大学大学院理工学研究科電気電子情報通信工学修士課程修了。
2002年 NHKへアナウンサーとして入局。以来、報道番組や情報番組、バラエティー番組のキャスターなどを務めるとともに、プロデューサーとして数々のテレビやラジオの番組制作も担当。
2015年 NHKを退局し、フリーアナウンサー/メディアプロデューサーとして活動を始める。
アナウンサーの経験を活かし『コミュニケーションコンサルタント』として企業や大学、個人などへ技術指導を行っている。
無類の「アニメ好き」で年間300本近くのアニメ作品を試聴していて、ストーリーや描写、音楽などについて論評する『アニメ研究家』としてもメディア出演中。
ホームページ http://www.ryudo.tokyonew window
公式ブログ http://ameblo.jp/nakakura-ryudonew window
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