曽根さんを取材する学生記者の佐伯綾香さん
全国で約600万世帯と視聴契約を結ぶマーケット・経済専門チャンネル(CS放送)の日経CNBCで、メーンキャスターを務める曽根純恵さんは中央大学経済学部の卒業生。
刻々と変わる世界情勢をさばき、視聴者へ役立つ情報を伝えている。月曜から金曜までの帯番組『ラップトゥデイ』のほか土日も仕事が入る。多忙な曽根キャスターの素顔にアナウンサー志望の学生記者が迫った(聞き手:学生記者 佐伯綾香(文学部3年))。
――現在のお仕事についてお聞かせ下さい
東京証券取引所
東京市場は午後3時に取引を終えます。番組では今日のマーケットで何が起こったのか、投資家の動きは昨日からどのように変わったのか。株式市場の情報や経済情報をお届けしています。
週末は『日経ヴェリタス 曽根純恵のナルホドそ~ね』というラジオ番組の収録や、ナレーションの仕事が入ったり、司会の仕事が入ったりします。このラジオ番組は担当して2年目になるのですが、前任はテレビ東京の大江麻理子さんで、『大江麻理子のもやもやトーク』という経済番組でした。大江さんも時々、ビデオレターを送ってくださいます。
大江さんの後任ということでプレッシャーはありましたが、尊敬している方でもあるので、彼女の後を引き継いで、リスナーの方に楽しんでもらえるように頑張っています。
――アナウンサーになったきっかけは?
アナウンサーを志望したのは大学1年生の時。高校時代にモデルタレント事務所に所属しており、大学に入ってからはミュージカルをやりたいと思っていました。でも結局その道をあきらめ、ミュージカルと同じように、声を使った仕事がやりたいって思っていた矢先、付けていたテレビ画面にたまたま『アナウンススクール生募集』という文字を見つけました。
アナウンサーは声を使う!と応募したところ、選ばれて、就職活動をする3年生の中で、ひとりだけ1年生の私が混じって学んでいました。そこで授業を受け持ってくれたアナウンサーの先生方が素晴らしくいい人たちで、アナウンサーの仕事は、いろいろな人に会って、いろいろなことを発信できる魅力的なお仕事だなあと実感し、目指すようになりました。
――日々、これ勉強ですね
もう日々経済漬け、経済に毎日触れていますね。資料も読みますし、日経ヴェリタスも読んでいます。番組では専門的な方、知識の深い方をゲストとしてお招きしますので、お話しする時に恥ずかしくないように、失礼に当たらないように、また視聴者の知りたいことを解決したいとの気持ちから、私の方でもしっかり勉強していこうと思っています。
私の一日は、一般紙と日経新聞を読むことから始まります。その後インターネットでニュースを見ます。中には“ 経済ニュースと絡みそうだな”と引っかかる出来事があります。政情が経済に波及することがよくありますから。まず朝までの世界経済の動きを振り返り、世界を動かすような会議ではどういったことが話題に上ったのかなぁ…と。まるで世界各国を旅しているかのようですね。そして午前の取引が始まったら、個別銘柄の株価の動きなどを見て相場の雰囲気を捉えます。
一瞬の発信のために、時間をかけて準備する
笑顔で語る曽根さん
常に頭はフル回転。自分の中に引き出しを持っておきたいと思い、朝から、銀行、証券会社、マーケット関係者の方々に電話取材をします。それがすごく楽しいんですよ。取材の電話では、いろんな話をします。マーケットの話はもちろんですけれど、最近どうですか? どんなことしているんですか? など、他愛もない話をしながら、身近に感じていることを引き出しつつ、今動いているマーケットの話も引き出しつつ、いろいろなところから攻めるんです。
ちょっと余談というところからでも、“あ、これは後で使えるかもしれない”と広がりも出てきます。多くの方の意見を聞いて、番組の中で伝えることはコレかな、こんな話も聞いたけれど、きょうはコレかなと選び出していきます。
まさしく24時間フルタイムですね、目が世界に向きます。今日は反応がなかったとしても、ゆくゆくまたそれが大きな問題になることもあるので、ちゃんと一つひとつ押さえていかないと置いていかれてしまいます。
――経済記者としての出発点は?
正直言うと、大学に入った頃は経済の道でアナウンサーになろうとは思っておりませんでした。ただ、世界がどんなふうに貿易などで繋がっているのか興味はありました。それが不思議と繋がっていくものです。
2001年からTBSのニュース専門番組『ニュースバード』で8年間、キャスターとしてお世話になりました。その途中、4年目ぐらいの頃、上司に「ステップアップしたいから、記者的なお仕事をやってみたい、チャンスがあったらぜひやらせてください」とお願いしました。「曽根君、東証アローズの記者やってみる気はあるかい」と言われ、「ぜひやらせてください!」と。そこから経済という分野で専門的にやっていくようになりました。
経済は生き物とよく言いますけれども、今の経済は、毎日形を変えます。経済って、私たちの生活に身近なんです。番組でも頭でっかちにならずに、普段の生活で感じていることを発信しながら、皆さんがどう捉えているのかとかお聞きしながら進めるようにしています。
――“大学での学び”は、どう仕事に活かされていますか?
大学入学当時は、カタカナが並んでいて、経済学ってなんだろうと思うところもありましたが、学んでいたから基礎ができたと思っています。専門家の方とお話ししても、納得できますよね。大学で経済のことを学ばずに、東証アローズのリポートを任されていたらきっと拒否反応が出ていたかと思います。
そもそも私が中央大学に進学を決めたのは、暑い夏の日に大学を見学したことがきっかけでした。当時はまだモノレールがなかったので、多摩センターからバスに乗って大学に向かうと正門前に到着。そこから坂道を上って、左手には校舎が、右側には桜広場が見えました。雰囲気が本当によかった。大きなキャンパスなのに緑に囲まれて、いいところだなあ、と。
私は鳥取の米子に7年間住んでおり、笹舟みたいなものを自分で作って川に流して遊ぶといった感じで自然に親しんできました。高校時代は再び横浜に戻って過ごしました。そこで何か物足りないと感じていたから、中大の自然の中のキャンパスに惹かれたのでしょうね。
提供:『HAKUMON Chuo』2014夏号 No.237