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鈴木 裕美さん

鈴木 裕美さん【略歴

自慢のコメPR

鈴木 裕美さん/「ミスあきたこまち」に選出

 秋田県産米「あきたこまち」のPR役を務める『ミスあきたこまち』の7人に、中央大学大学院理工学研究科の鈴木裕美(ひろみ)さん(23)が選ばれた。1年間の契約が終わる8月末を前にこれまでの活動内容などを聞いた。

 沖縄、大阪、名古屋、首都圏などの有名百貨店、大型スーパーの特設会場で、鈴木さんは市女笠(いちめがさ)をかぶり、ベールを思わせる衣装をまとう。

 あでやかな着物姿で消費者に「秋田県産あきたこまちのご紹介です」と語りかける。傍らでは、ラップで包んだ一口サイズの試食用おにぎりが差し出されていく。ミスあきたこまちが「どうぞ、お召し上がりください」と声をそろえた。

 秋田市出身で子供のころから食べているコメでも、販売促進の最前線に立つときは事前に口にする。おいしさを再認識し、自信を持ってPRする。

 2年前、祖母がミスあきたこまちの応募要項を持ってきた。「やってみたら」「東京にいるからダメよ」「応募資格の一つに東京近郊在住者って書いてあるよ」。祖母は熱心だった。

 このときは気乗りがしなかった。しかし中大理工学部から中大大学院修士課程へ進み、学生生活があと2年となって、気持ちが変わった。

 「最後の学生生活を大事にしよう。そうだ、あきたこまちがあった」

 応募締め切りの1週間前に慌ただしく写真を用意するなど準備を始めた。

 内心では迷っていた。前へ進む気持ちになれないでいた。「やめたほうがいいよ」と言ってほしくて、友人に応募することを打ち明けた。ところが、返ってきた答えは「あきたこまち、おいしいよね。やってみたら」と逆に応援されてしまった。

 周囲には、秋田といえばコメと「なまはげ」しか知らないという友人もいて、郷土・秋田をもっとPRしてやろうと立ち上がった。

小野小町

笑顔であきたこまちをPR

 1次審査の書類選考を通り、最終審査の面接は秋田市内で行われた。早朝に家を出たためか選考後は自宅でこっくりこっくり…。夕刻、電話が鳴って「合格」が告げられた。

 待っていた知らせなのに、反応が鈍かったようで、家族に伝えても「本当なの?」と怪訝な顔をされたという。後日文書で合格通知が届き、周囲を大いに喜ばせた。

 応募資格は▽満18歳以上の未婚の女性(高校生を除く)▽秋田県出身者で県内在住者か東京近郊在住者▽県内外でのキャンペーン、イベントに1年間参加・協力できる方▽ミス○○○、キャンペーンガール、イベントコンパニオン等の任期が重複する方は応募できません―とある。

 秋田の若い女性にとって憧れの存在だ。応募者多数の中から25人に絞られ、最終7人が決まった。ミスあきたこまちは7人で構成する。

 7人には意味があって、県内湯沢市の祭り「小町まつり」を起源とする。古来より選び抜かれた地元出身7人の小町娘が、絶世の美女として知られる歌人・小野小町が詠んだ和歌を朗詠し、小町堂に奉納する。

 ミスあきたこまちの活動期間は9月から1年間。全国各地へ出かけて行くから、一人ではどうしても負担増になってしまう。活動は一人ひとりが単独で行うことが多く、東京在住者の鈴木さんには出演依頼が重なる。

 東京・千駄ヶ谷の明治公園で行われたビッグイベント、『農林水産祭実りのフェスティバル』(昨年11月8~9日)にも参加した。新米が出る10~12月は忙しい。

 「ありがたいことに、みなさん、あきたこまちをよくご存じで、販促では大勢の方が集まってくださいます」

 「祖母と電話でよく『どこに行ってきた?』とか活動の話をします。楽しそうに聞いてくれて、県内での活動を心待ちにしているみたいです」

 応募を勧めてくれた祖母。孫の活躍ぶりをそっと見守る。ミスあきたこまちは「祖母が私の一番のファンなんです」と笑った。

デンパちゃん

 ブランド総合研究所によると、あきたこまち(秋田)は松阪牛(三重)などとともに日本を代表する、おいしい食べ物の一つ。秋田県出身者が、お国自慢のコメの販売促進を担うのは誇らしげなことだろう。

 子供のころから、鈴木さんの朝食はきまって白米だった。

 「がっこ( 漬け物)、ぼだっこ( 塩鮭)、山菜、納豆汁とおかずもおいしいので」

 ご飯がすすむ。自慢のブランド米あきたこまちは、今年デビュー30周年を迎えた。ミスあきたこまちは、鈴木さんらの代で28代。その存在はすっかり定着した。

 ミスあきたこまちには、副賞としてあきたこまち20㎏、ハワイ旅行往復相当の旅行券1人分がプレゼントされる。

 大学院の研究室で自慢のコメを食べてもらった。「おいしい、これを食べたら、他のおコメは食べられない」と友人らは笑顔、その笑顔をみる鈴木さんの笑顔も輝いていた。

 中大大学院理工学研究科電気電子情報通信工学専攻修士では「電磁波の研究」をしている。

 「就職活動では私を覚えてもらえるように“デンパちゃん”と言っていました」とほほ笑む。

 「元々テレビが大好きで小学生の頃はモー娘。をよく見ていました。高2のときでした。心待ちにしていた衛星放送の番組が映らなくなってしまい困りました。他の家電は正常に動いているのに、テレビだけが、なぜ不具合なのか。番組を楽しみにしていたのに…」

 調べると、雨天時には電波障害が起こりやすいことが分かった。この経験時には電波が減衰状態にあったという。

 「電波にとても興味を持ちまして」

 当初志望の数学教師から方針変更。現在は対象物に電波を当てると、どう変化するかを可視化している。

 このほど念願が叶って、マスコミ業界に内々定した。技術職として働く。夢は、テレビの前でじだんだを踏んだ実体験を全国の子供たちにさせないこと、きれいで鮮明な画面を恒常的にお茶の間へ届けたい。夢を叶えるため技術力向上に努める。活力源はもちろん、あきたこまちである。

提供:『HAKUMON Chuo』2014夏号 No.237

鈴木 裕美(すずき・ひろみ)さん
秋田県出身。麹町学園女子高等学校卒業後、2009年に中央大学理工学部電気電子情報通信工学科へ進学。その後同大学院理工学研究科に進み、白井宏教授の研究室に学ぶ。2013年8月、平成25年度ミスあきたこまちに選出され、2014年8月末日まで秋田米をPRするために全国遊説する。現在23才。