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河野 暁さん【略歴】
河野 暁さん/リード エグジビジョン ジャパン株式会社
元々英語教員志望だった河野氏。だが、大学3年次〜4年次にかけて1年間のアメリカ留学をしたことがきっかけで、「ダイバーシティーの中に身をおいて様々な経験をしてみたい」と外資系電子部品メーカーに就職。意欲的に仕事に取り組んだ。
ところが、外資系とはいえ仕事は4年間ずっとローカル。「このままでは学生時代に望んでいた思いが実現できないかもしれない—。」河野氏は、転職を決意した。
そんな折、運命的に出合ったのが、国際見本市をオーガナイズするリード社だ。
「事業を本当の意味でグローバルに展開し、海外企業と直接真剣勝負をさせてくれることに魅力を感じました。見本市を通じて日本経済の発展、日本と世界を繋ぐことで世の中をより良くするという企業理念にも惹かれました。」
リード社は年間100本以上の国際見本市を主催
中央大学出身の後輩社員と。自身の担当外の国際見本市にもヘルプで入ることが多い。社員全員体制で臨んでいる
展示会に加えて講演会、セミナー、VIPを招いてのレセプションパーティーなども企画。仕事内容は多岐にわたる
現在は、ファッション、メガネ、雑貨、文房具など、主に消費財分野の国際見本市を担当する河野氏。欧州、北米、アジアなど、年間12〜13回、のべ約15都市に出張し、海外企業の誘致、国際見本市を通じて日本マーケット参入への成功を導いている。
フィリピン・セブ島での説明会
例えば、メガネの見本市。フランスのメガネ協会、フランス政府関係者を説得し、フランスのメガネメーカー約20社での見本市参加を成功させた。これがきっかけとなり、日本全国のメガネ店にフランス製のメガネがずらりと並ぶようになった。
また、雑貨の見本市。フィリピンの離島に単身乗り込み説明会を開催、個別企業を訪問するなどして、多くの企業を見本市に誘致し、日本マーケット参入への足掛かりを作った。
河野氏は現在も様々な産業分野で、世界各国の政府、業界団体、企業を相手に、日本マーケット参入を促す説得活動を行っている。
「この仕事は、具体的に手に取ってみることのできる商品がなく、目に見えないビジネスチャンスを売っています。ですから、自身の『人間力』が問われる局面が非常に多いのが特徴です。」
しかし、だからこそ面白いと河野氏は目を輝かす。
例えば、フィリピンのような開発途上国では、各企業の背後に必ず貧困という問題がある。そうした企業が日本マーケットで成功し、多くの資金をフィリピンに持ち帰る。これが貧困問題解決の一助となっているのだ。河野氏はそこまで考えて提案、説得しているという。
もちろん、東日本大震災後には、日本進出をためらう企業も多かった。しかし、そうした企業にも河野氏は誠心誠意、心を込めて説得した。「今、世界中から日本へ慰めの言葉、同情の気持ちが寄せられています。でも、本当の助けはあなたが日本に来て経済的活動を行ってくれることです。それが、東北地方、そして日本への助けとなるのです!」
結果、多くの企業がためらいを振り解き、見本市に参加した。
欧米に比べ、日本はまだ国際見本市後進国だ。例えばドイツなどでは、日本で一番大きい東京ビッグサイトの4〜5倍のサイズの見本市会場が各都市にあり、毎週のように見本市が開催されている。また、中国、韓国などのアジア各国もこの重要性に気付き、国策として見本市の誘致、見本市会場の建設に取り組んでいる。国際見本市の開催期間は、世界中から業界関係者が何万人も集まり、各業界の発展、開催都市の経済に貢献している。結果、見本市オーガナイザーという職業が社会的貢献度の高い職業として尊敬の対象になっているのだ。
「私は、日本で開催されている国際見本市をもっともっと国際的にすることで、日本経済、ひいては世界経済の発展に貢献できる人間になりたいと考えています。」
グローバルな人間であるということは、様々な価値観、文化などダイバーシティーの中でも光輝く「自分」があるということだ。そのしっかりとした「自分」作りに学生時代から取り組むことが大事だと河野氏はいう。
「ヨーロッパ人、アメリカ人、アジア人から、あなたは誰なのか、何ができるのか、どういう価値観を大事にしているのか、そうしたものにしっかりと答えられる『自分』をつくることがグローバルパーソンになる第一歩だと思います。そのために、まずは目の前に置かれている自身の課題と真剣に取り組むことが大事なのではないでしょうか。勉強なら勉強に、留学したいなら留学に、就職活動なら就職活動に、今、目の前にあることに真剣に取り組み、その課題を解決すること。目の前にある課題としっかりと向き合うことが自分自身との対話であり、その積み重ねが世界で通用する『自分』作りにつながると思います。」