ナオト・インティライミ 【略歴】
ナオト・インティライミさん/ミュージシャン
2002年文学部卒業の、シンガー・ソングライター、ナオト・インティライミさん。
「どちらのお国の方ですか?」と聞き返してしまいそうな、異国情緒漂う名前は、南米を旅する中、現地の言葉から生まれたという。
インティは南米インカの言葉で「太陽」、ライミは「祭り」。
二つの言葉から受けるイメージそのままに、ナオトさんの生き方や音楽には、明るさ、生命のエネルギー、パワー、熱さが溢れている。
ナオトさんは、中央大学在学中にメジャーデビューしたが、その時は自分の思い描くような音楽活動を行うことができず、挫折。7,8ヶ月におよぶ引きこもり生活を送った。
辛いその日々からなんとか立ち上がり、2003年8月から2004年末まで「世界一蹴の旅」へ出る。いずれ必ず実現する夢「ワールドツアー」の下見をかねて、体当たりの貧乏旅行は、515日に及んだ。
破天荒で抱腹絶倒、時に涙を誘い、時に深く考えさせられる旅の記録は、幻冬舎文庫『世界よ踊れ~歌って蹴って!28ヶ国珍遊日記~アジア・中東・欧州・南米篇』に記されている。ナオトさんは、音楽と、かつて柏レイソルのジュニアユースに所属していたというほどの腕前であるサッカーを武器に、人々の懐に飛び込んでいく。
いや、武器という言葉は正しくない。ナオトさんにとって見知らぬ人は決して「敵」からはスタートしない。旅人としての警戒心は残しつつ、ほぼ丸裸の体当たり精神をもって、行く先々で、路上ライブを決行し、草サッカーに飛び入りし、歌いまくり、踊りまくった。
溢れる情熱と冒険心、行動力は、パレスチナのPLO議長府でアラファト議長(当時)に生歌を披露し、マンツーマンで平和について語り合ってしまうほどだ。
帰国後の2009年には、ミニアルバム「ウルトラC」をリリースし、精力的にライブ活動を展開すると共に、Mr.childrenの全国ツアーにサポートコーラス、アコースティックギターとして帯同し、活動の場を広げた。
2010年4月には、ナオト・インティライミ名義でメジャーデビューシングル「カーニバる?」をリリース。わずか8ヵ月後には武道館公演を成功させるなど、快進撃を続けているナオトさんの目には、夢のワールドツアーが見えてきている。
心のおもむくまま、多彩な歌を歌うナオトさんだが、とりわけラブソングに定評がある。ソニー・エリクソンのCMで話題を呼んだ「今のキミを忘れない」など、ちょっと照れくさくなるほど、純粋でストレートな歌詞が、聴く人の胸にまっすぐ飛び込んでくる。
現在進行形で恋をしている人や、かつて恋をした人が共感するラブソングは珍しくはない。だが、これから恋をする人のハートをがっちり掴むラブソングは、なかなかない。ナオトさんの歌を聞いた人のコメントで印象深い言葉がある。
「恋をしたくなりました」
4月20日リリースの5thシングル「Brave」は、頑張る人への応援ソングだが、「ボク」を見守る「キミ」の存在が、やっぱり印象深い。
ちゃかすな、てれるな、格好つけるな、意地をはるな。
世界を旅する中、むき出しで自分の思いを伝えたいと思うようになったというナオトさん。歌声からは、シンプルながら力強い、そんなメッセージが伝わってくる。
3月11日に起きた大地震と津波、それに続く震災は、人々の生命や生活を奪っただけでなく、人生観や価値観をも大きく変えてしまった。誰もが「あの日」の前には戻れない。自分には何ができるのか、何をすべきか、迷い、日常を見失う人も少なくはないだろう。
ナオトさんは、3月17日、自身のブログで「みんなそれぞれの役割を!」と語った。「今まで自分がやってきたことを精一杯すればいい。そして、その上に、苦しんでいる人たちのために何ができるかを考え、何かできることをすればいい。」
ナオトさんにとって、それは「音楽」だ。小さい頃から声が枯れるほど歌っていた、大切なもの。
争いの絶えない中東で、心の底から平和を願う歌を歌ったように、今、心の底から復興の想いを込めて、ナオトさんは歌っている。震災チャリティイベントという目に見える形だけでなく、どんな時でも、どんな場所でも。
「早くみんなで心から笑える日が来てほしい。そのためにできることは、ずっとしていきたい」
ナオトさんは言う。
「そして音楽の力を信じたい。」