野副 美緒さん 【略歴】
野副 美緒さん/国連職員
先ごろ、2時間枠の本格討論番組、BSフジライブ「プライム・ニュース」(09年8月17日)にも出演。「世界食料危機の現状―飢餓を救うために日本ができる事」というテーマをめぐってソマリアの現地事情などについて語りました。
「支援で難しいのが食糧配給をする際に現地の人たちの中に大きなグレーゾーンがあることです。 完全に必要な人の次に、たとえばミリ単位で“できればあげたい人”というのが多く存在する。限りある資源を公正に分配するために基準を決めないといけないのですが 食糧配給がもらえる人、もらえない人の境を決めてそれを理解してもらうのが難しい。たとえば栄養状態を腕の細さでチェックし、12.5センチ未満だと栄養失調と認定され6人家族用の食糧をもらえます。しかし、12.6センチで家族分の食糧がもらえないと激しく抗議されたときにどう答えるか、0.1くらいならいいじゃないかと言ったとしても、12.7なら8では? という話になり限りがありません」
<腕回り12・5センチ>と聞いて、思わず自分の腕をさすってみる。悲惨さと過酷な状況が一語で視聴者に伝わる、報告のリアリティです。
98年本学卒業後、01年英国の大学院修士を修了。03年国連職員となり、スリランカにいた翌年12月、死者18万人を数えたインドネシア・スマトラ島沖地震・津波に遭遇、そのまま現地の支援活動に加わりました。 学内誌のインタビューで「人のために、人と一緒に、いいものを創る仕事。自然の脅威、人間の弱さ、強さ、美しさ、醜さが渦巻く中で、それでも何か希望をもって『次の時代』を創っていく仕事、私はこの道を進んでいこうという静かで確かな自信をもてたのがスリランカの2年間でした」と話しています(『HAKUMONちゅうおう』06年夏季号)。 06年から2年余り南スーダンでの食糧援助プログラムの運営、管理業務を経て、08年7月からソマリア・ブアレ地域事務所長に。無政府状態である南部ソマリアでは治安上の危険と貧困が背中合わせです。紛争後の国から紛争中の国へ。責任も倍加しています。
冒頭のテレビではこうも語りました。「“米百俵の精神”は現代にも有効です。明日のための投資、支援、教育は必要ですし、現地の人が自分たちの足で立って自らの国を立て直していくための技術支援は不可欠です。しかし現実問題として、10億を超える人がお腹を空かせている中で、未来のことだけを考えている訳にはいかないのです。もうあと”米百俵”で今日のご飯をカバーすることがいまの私の仕事です。方向性として未来を向きながら、現実のご飯を確実に必要な人に届けることを同時進行しなければならないのです」
キレイ事ではすまない現実との格闘、そんなミッションを支えるパッション。それをしかと感じさせるプロフェッショナルです。