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橋本 秀紀

橋本 秀紀 【略歴

英語をどうしよう?

橋本 秀紀/中央大学理工学部教授
専門分野 空間知能化(制御・ロボティクス・電力)

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英語ロジックテスト

 2012年7月18日(水)午後6時から後楽園キャンパス5533教室において英語で論理力(ロジック)を計測する英語ロジックテスト(60分)を行った。学生・院生が期末試験準備に忙しい中、約100名の参加を得ることができた。現在、試験結果の解析中であり、その結果に基づき9月に3日間の英語ロジックに関するセミナーを行う予定である。

 ところで、私は、電気電子情報通信工学科で制御・ロボティクス・電力を中心に教育・研究を行っており、英語は守備範囲ではない。英語は使うが、それ程好きではない。しかし、今回、英語ロジックテストに大きく関わることとなった。

テストの経緯(メモ)

 2012年1月27日、私の主催したe-learning研究会のメンバーであったリソー教育の方から、「ロジック、英語のロジックが今から面白い」と日本論理検定協会を紹介される。

 2月28日、日本論理検定協会を訪れ内容を聞く。「現実社会での英語コミュニケーション相手はノンネイティブであることが多いが、彼らはこちらの不完全な英語でもどうにか理解してくれる。ロジックがしっかりしていれば通じる」との説明。

 5月11日、IEEE(電気電子学会、全世界に40万人、日本に1万3千名の会員)が日本での会員サービスを調査するために開催した会合に出席。「日本の理工学系の学生、技術者、研究者に英語教育で支援できる」とIEEEが力説。

 英語、ロジック、IEEE、とインプットされて、常日頃学生たちの英語嫌いに接していると、英語教育で何かできるのではないかと思い立ち、5月22日に後楽園キャンパスで英語ロジックの模擬授業(加藤副学長も受講)を行った。その結果を踏まえて5月25日、日本論理検定協会を伴い、IEEE Japan Office(IEEEは全世界にOfficeを持っている)を訪れた。「中央大学理工学部は、IEEEと協力して新しい英語教育の検討を進めたいが可能性はどうか? それと中央大理工学部生の英語ロジック力を計測するためのテストの協賛はできるか?」との申し入れを行った。前向きな答えを得て、6月13日にはIEEE本部役員との懇談を行い協力の了承を得た。

 一方、中央大学側では6月に電気電子情報通信工学科で議論を始め、石井学部長に相談し、中央大学理工学部、日本論理検定協会、IEEEの3者での取り組みとして進めることとなり、7月18日の英語ロジックテストの実施となった。広報室の強力な支援とキャリアセンターの積極的な援助も得ることができた。

 中央大学は、石橋を叩いても渡らないほど慎重だと聞いていたので(私は2011年4月に本学に赴任)今回の展開の速さは意外であった。中央大学側は実質6月からの議論であり、これ程の速さでの取り組みは、他大学に於いてもないであろう。願わくば他の取り組みでもこのスピードを維持して欲しい。

英語の状況(私見)

 分野によるが、私が関わっている制御・ロボティクス・電力では英語を使う相手はノンネイティブである場合が多い。今年出席した国際会議・運営会議で話した相手は、Chinese American, European, Chinese, Korean, が中心で、いわゆるネイティブはごくわずかであった。これはメールでのやり取りでも同様である。

 現実の理工系における英語コミュニケーションは
(1)理工系分野では、研究者の多くがノンネイティブであり、完璧な英語から程遠い状況である。伝われば良い英語である。
(2)研究論文も同様な状況であり、完璧な英語というより分かりやすい英文が望まれている。
という状況である。

 これらに共通しているのは、完璧な英語ではないが、ロジックがしっかりしており、語彙及び文法に不備があってもコミュニケーションが成立するということである。事実、日本に於いて我々が目にする非日本語圏の方々の日本語コミュニケーションは上記そのものである。様々なご意見もあろうが、ロジックさえ通っていればコミュニケーションは成立する。

では、英語をどうしよう?

 ロジックを英語で身に付ければ良いのである。では、どのように身に付けるかであるが、IEEEと協力して理工系に特化した英語素材と、日本論理検定協会が行っているロジック検定のノウハウを用いて、中央大学理工学部での実際の教育を通して方法論を創り出していくしかない。

 結構大変であるが、他大学も理工系に特化した英語に取り組んでおり、英語をめぐる競争は激しくなっている。石橋を叩いている場合ではない、橋のかかっている土台自体がグローバル化で大きく変わるのである。

 今回の英語ロジックテストの結果を用いて新しい英語教育の可能性の検討を始める。IEEEとの連携も素材のみではなく、教育システムの導入などといったレベルまで検討対象である。

最後に

 ロジックがしっかりしていればコミュニケーションは成立する。しかし、その前に伝える内容(コンテンツ)が必要である。相手が知りたいコンテンツを有しているから、つたない英語でも相手をしてもらえるのである。最近まで、世界は日本の工学を知りたがっていた。日本の工学者というだけで関心を持たれ、片言の英語でも辛抱強く付き合ってもらえた。

 新興国のキャッチアップが続く中、これからは、余程のコンテンツを持っていないと相手をして貰えないであろう。これは、英語力だけでは通用しないということでもある。まずは語るべきコンテンツ、そしてしっかりしたロジックという順序であろう。

橋本 秀紀(はしもと・ひでき)/中央大学理工学部教授
専門分野 空間知能化(制御・ロボティクス・電力)
1957年生まれ。佐賀県生まれ、多摩育ち(途中3年程下関)、港区在住。下関西校入学桐朋高校卒業。1981年東京大学工学部電気工学科卒業。ほんの少しの間電力会社勤務。1987年同大学院博士課程電気工学専攻修了、工学博士。1987年東京大学講師1990年同助教授、2007年同准教授、2011年中央大学理工学部電気電子情報通信子工学科教授。1989年-90年MIT客員研究員。名古屋大学、ブダペスト工科経済大学、ソウル国立大学の客員教授を務めた。
制御・ロボティクス・電力を駆使して空間を賢くする空間知能化の研究に従事、パーソナルモビリティ、ワイアレス電力伝送とEDS(電力貯蔵デバイス)との組み合わせるによるエネルギーマネッジメント、睡眠導入ロボット、などの研究を進めている。
http://www.elect.chuo-u.ac.jp/hlab新規ウインドウ