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トップ>オピニオン>エコプロダクツ2010と「エコビレッジ・ファンド」の提案

オピニオン一覧

緒方 俊雄

緒方 俊雄 【略歴

エコプロダクツ2010と「エコビレッジ・ファンド」の提案

緒方 俊雄/中央大学経済学部教授
専門分野 マクロ経済学・生態経済学

1.エコプロダクツ展

 環境や生態系に配慮した商品やサービスを提供する企業や団体が一堂に会した日本国内最大級の展示会「エコプロダクツ2010」は、12月9日(木)、10日(金)、11日(土)の3日間にわたって東京・有明の森の東京ビッグサイトで開催された。主催は日本経済新聞社と産業環境管理協会、後援機関には政府各関係機関や団体等、協力機関には私立大学環境保全協議会などの教育機関が名を連ねている。今年が12回目になり、主なテーマは、「G(グリーン)xC(クリーン)革命! 命をつなぐ力を世界へ」として、「2020年までには温暖化ガスを25%削減する」という目標をかかげ、今後10年間で何をしなければならないか、政府・産業・大学・市民が一緒に考え実践する場として内外から注目されている。また今年名古屋で開催された生物多様性国際会議の議論にも対応して、生物資源の保全管理をテーマにするイベントも増えていた。

2.エコプロダクツ2010

 会場事務局の発表では、一般企業および団体(大学などの教育機関、NGO、政府機関等)の出展総数は745社にのぼり、来場者は、3日間で延べ18万3,142人を数えた。

 会場の東京ビッグサイトは有明の森の国際展示場にあり、東展示場の6ホールを使用した大規模なものだ。東1ホールでは環境ビジネスモデル、未来の低炭素都市ゾーン、東2ホールでは地域食とものづくり総合展、バイオプラスチックパビリオン、東3ホールではエコプロゴミゼロ大作戦、有機食品のレストラン、東4ホールでは環境コミュニケーションステージ、東5ホールではエコロジカルリビング、NPO/NGOコーナー、大学・教育機関コーナー、大学の環境対策推進コーナー、「環境」就職・進路相談会コーナー、東6ホールでは生物多様性ゾーン、森林からはじまるエコライフ展などを中心として、多数の企業や団体が環境ビジネスや環境プロジェクトを紹介していた。また今年の出しものとして、電動アシスト自転車体験コーナー、エコカー乗車体験、自然観察会、大学の環境対策推進コーナーや多数の専門家セミナー・シンポジウムなどがあり、参加した来場者も小学生から社会人、外国人、就活の大学生など多岐にわたっていた。

3.ゼミ生の活躍

 緒方研究室は、経済学部2年、3年ゼミ生、FLPゼミ生と協力して会場に縦2メートル、横4メートルのブースにポスターと写真、プロジェクト展開図を掲示しながら、プロジェクターで海外活動記録のビデオを放映し、長テーブルの上に研究書、研究論文、企画書などの活動成果を展示した。昨年は、緒方ゼミが実施している「アジア・インターンシップ(海外研修)」の成果を発表しただけであったが、一般社会人から何を提記したいのかという質問を受け、今年は現地実態調査・社会調査を踏まえて、提案型のプレゼンを毎日午前と午後に発表した。FLPゼミの廃棄物班は、ベトナム環境省研究所で報告した内容を発展させ、ホテルから出る生ごみを資源に活かすコンポストシステムを提案し、まちづくり班は、ジェイコブスの「都市の経済学」と宇沢弘文教授の「社会的共通資本」の理論に基づき、日本の鎌倉やベトナムのハノイの調査を踏まえてサステイナブルシティ構想を提案した。経済学部ゼミの環境班は、ベトナムの森林保全のために国連の気候変動問題を視野に森林減少を抑制し地域村落の発展を追求する「REDDプラス・モデル」を提案し、地域開発班はベトナムのエコビレッジ(生態村)訪問時に実施した社会調査と「日越友好の森」植林活動を基礎にEcology=Economyを共生的に発展させる「Eコミュニティ・モデル」を展開し、また質疑応答では、中学から大学までの各教育関係者から、来年度の授業時間に来校して生徒に向けてプレゼンをしてほしいという依頼を受け、それぞれ来場者から高い評価を得た。

4.成果と反省

 私の研究室では、現在「エコビレッジ(生態村)」の研究を推進している。 それは、21世紀の課題として持続可能な経済を再構築するための基礎モデルの展開であるが、同時にケーススタディやフィールドスタディとして、毎年、ベトナムの国際交流協定校であるハノイ国民経済大学(NEU)およびベトナム天然資源環境省研究所と共同研究を実施している。今年、中央大学創立125周年を記念してハノイで国際会議「緑の経済回廊とエコビレッジ開発」をテーマに経済回廊としての社会インフラの開発と自然環境や伝統文化との共生をいかにしてはかるかという議論をした。その際に、ベトナムにはすでに「エコビレッジ(生態村)」として19村があることを知り、政府の許可を得てすべての生態村を視察させてもらった。現地の村長さんや地元人民委員会の方々と意見交換をして気付くことは、研究目的で訪問されても貧困から脱却できるわけではなく、「里山」を守ることに必死であった。そこで、村民と意見交換を重ねながら、彼らのコミュニティパワーを活用し、日本からのエコ支援の手と結びつける「エコビレッジ・プロジェクト」を組織できないか検討し、エコプロダクツ展に参加する人々と「エコビレッジ・ファンド(eFund)」の提案を検討することができた。ケインズの「Cool Head, but Warm Heart」を想起しながら、「Visible Hands」になればと期待している。

「日越友好の森」合同植林活動によって再生したベトナム生態村森林

ゲアン省を通る新ホーチミンルートの両側は、「日越友好の森」5~7年後に、光合成による森林生産は生態村の開発資源になる。

執筆者監修の教養番組「知の回廊」(「Ecological Economics-共生と競争のバランス-」(第45回))新規ウインドウ
執筆者監修の教養番組「知の回廊」(「Ecological Economics 2.0 - 実践編 -」(第58回))新規ウインドウ

緒方 俊雄(おがた・としお)/中央大学経済学部教授
専門分野 マクロ経済学・生態経済学
研究テーマ 地球温暖化と生態経済管理、アジア・インターンシップ
1945年神奈川県生まれ。中央大学経済学部教授。中央大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。著書『近代経済学の底流』(中大生協出版)、共著『共生社会のための経済学入門』(日本評論社)、共著『地球温暖化と経済開発』(東京大学)、共訳書『市場と計画の社会システム』(日本経済評論社)、共訳書『世界のエコビレッジ』(日本経済評論社)。ニュージャージ州立大学(ラトガース)客員研究員(1980年~1982年)、現在は、Journal of Post Keynesian Economics 編集委員、国際公共経済学会理事、経済研究所・環境と経済研究会幹事。
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