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勝間 和代

勝間 和代 【略歴

ビジネスパーソンのためのMBA

~MBAを実社会でどう生かしていくか~

勝間 和代/中央大学ビジネススクール客員教授・株式会社「監査と分析」代表取締役
専門分野 ファイナンス

自分をグーグル化する方法

 情報は通貨であり、私たちは通貨(=情報)に囲まれて、生きている。メールを書くことは、自分なりの通貨(=情報)を発行していることと同じであり、情報を適切に取り入れ、考え、アウトプットする能力があれば、環境がどう変わっても、経済基盤を確保しながら、楽しく生きられる。これこそが、現代社会のサバイバル術。

 では、自分をグーグル化するには、具体的にどうすれば良いのか? 1%の本質を見極める技術、インプット・アウトプット力を高める技術、自分の力を10倍アップさせる人脈技術など、勝間流の様々な技術があるが、ここでは、自己のグーグル化に向けた、究極の自己投資としての、MBAの取得について紹介したい。

グーグル化に向けた、究極の自己投資=MBAのメリット

 MBA取得に向けた自己投資の過程では、通常業務では身につけるチャンスが少ない、知的プロフェッショナル、リーダーとしてのスキルを磨くことができる。また、本などで、独学で試すよりも、確実に高度な内容を効率よく身につけられ、自力だけでは開拓が難しい人脈を容易に作ることができる。

 知的プロフェッショナル、リーダーとしての3大スキル、つまり、MBAのメリットとしては、第一に、ビジネスの疑似体験を通じて本質をつかむ力を身につけることができる、という点があげられる。具体的には、経営学で実証されている多くのフレームワークを、実例を元に学ぶ「フレームワーク力」、たくさんのケースで体感する「ディープスマート」、準備や“授業”での発言で外したり、失敗を体験したりすることによって、実際に“事業”をやるときに失敗から修正できる「失敗力」、「ベストプラクティス」がある。

 また、MBAはインプット力の実践の場としても有効である。ケーススタディや論文を用いて、大量のテキストを学ぶことを前提とした教育が施されており、教員や学生との現場経験、先端の理論・実例を用いて、マスメディアに出ていない学びの場となっている。

 さらに、MBAはアウトプット力を養う強制ギブスにもなる。ケースメソッドやプロジェクト、論文作成は全てアウトプットを前提とした教育であるし、チームメンバーを教育することで、自分の学びを確認することもできる。

メソッドを実践レベルで身につける4つのステップ

 メソッドを実践レベルで身につけるには、4つのステップを踏まなくてはならない。即ち、「知る」→「わかる」→「できる」→「役に立つ」の4段階である。「知る」というステップ1は、法則を学習して、記憶する一般理論の段階。これがステップ2では、実例を通じて、法則を体感する事例研究の段階になり、読書ではステップ1、せいぜいステップ2までしか達成できないのが一般的である。というのも、本にはステップ1(一般法則)しか載っていないことが多く、世の中にある数多くのロジカルシンキング本のように、いくら読んでもなかなか先に進めないからである。これに対し、ビジネススクールは、実際に自分で問題を解いてみるステップ3の「わかる」段階までをカバーし、それを仕事に役立てることで、ステップ4の、「役に立つ」段階、即ち、自分の問題に適用してみるという実践活用の段階まで進めることができる。

MBAが独学よりも確実に高度な内容を効率よく身につけられる理由

 MBAは、カリキュラムが組まれ、時間とお金をコミットすることで、単なる読書にはない強制力を持つ。さらに平日の夕方と休日をブロックすることで、嫌でも業務の効率化を考えざるを得なくなり、容易に「仕組み化」できるメリットもある。

 一方、仕事と両立させながら勉強を続けていくためには、他の学生とのチームワークも重要である。自分だけではなく、他人から学べること、他人の質問に答えることで、自分の学習が深まること、自分の強みと捨てるところを意識せざるを得なくなることが、コミュニティラーニングを促進できるメリットと考えられる。

 もちろん、自力だけでは開拓が難しい人脈に切り込むことも可能だ。ビジネススクールの教員は、研究者と実務家の両方から構成されており、学生は、ビジネススクールに「投資」できるだけの心構えを持った者だけが集まる(巷の異業種交流会とは質が違う)。また、共通の目標のために苦労をともにした仲間とのネットワークは、一生モノになる可能性も高い。

キャリアアップとツキ、努力不足の4段活用について

 実際のキャリアアップには、仏教の「三毒」追放が効果的である。つまり、「妬まない、怒らない、愚痴らない」。ツキのコツは、「与えて・与えて・与えまくる」ことである。Give and Takeの発想では、まだまだ効果が低い。一番効果があるのは、Give&Give&Give&Give&Give(Giveの5乗)。それくらいGiveしておくと、頼まなくても、周りの人が勝手に助けてくれるようになる。Giveの基本は「裁定取引」。自分がいちばん得意で負担がかからないものを相手にあげる。私の場合は、ひたすら情報分析と翻訳を行うこと。翻訳は、異なる言語だけではなく、異なるコミュニティの間の翻訳も含んで手がけるようにしている。

 一方、最も避けなくてはならないのが、努力不足。

 努力不足→責任転嫁→被害者→加害者、の4段活用を常に頭に置いておく必要がある。多くの場合、袋小路にはまるときには、この4段活用の時期を経ることが多い。自身の努力不足から始まり、そこで出てきた弊害を周囲に責任転嫁し、その後、被害者となり、さらに、他者に向けて加害するようになるからである。

 「未来は過去の蓄積からしか決まらない」「起きていることはすべて正しい」のである。

勝間 和代(かつま・かずよ)/中央大学ビジネススクール客員教授・株式会社「監査と分析」代表取締役
専門分野 ファイナンス
1968年東京生まれ。経済評論家、公認会計士。中央大学ビジネススクール客員教授。早稲田大学ファイナンスMBA、慶応大学商学部卒業。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得、大学在学中から監査法人に勤務。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。内閣府男女共同参画会議議員。ウォール・ストリート・ジャーナル「世界の最も注目すべき女性50人」選出。エイボン女性大賞(史上最年少)。第一回ベストマザー賞(経済報門)
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