2020年早春号

テニスのプロになる! 世界を転戦

全日本3位、インカレ王者
硬式庭球部の
望月勇希選手(法4)

望月6.jpg 硬式庭球部の望月勇希選手(法4)は卒業後、プロの世界に飛び 立つ。テニスの日本一を決める昨年10~11月の「三菱全日本選手権」で自己最高の3位となり、大学3年時にはインカレを制した。将来はグランドスラム(四大大会)への出場が目標だ。



「テニスは楽しい」

望月3.jpg さわやかな笑顔が印象的だ。テニスウエアをまとえば真剣な まなざしに変わる。ただ、ポーカーフェイスで淡々とゲームを進めるテニスプレーヤーも少なくない中で、試合中もしばしば 表情に笑みを浮かべる。
 「もちろん、へらへらしているわけではありません。プロになっても、追い詰められたゲーム展開になっても、『テニスが楽しい』という意識をなくしたくない。それをなくしたら僕じゃないと思っています」
 テニスコーチだった父、ソフトテニス経験者の母の影響で、物心ついた頃にはラケットを握っていた。小さな頃はひたすらラリーが好きな少年だった。練習や練習試合よりも、公式戦が好きだ。張り詰めた雰囲気、緊張感を楽しいと思えるからだろう。「相手との駆け引きやゲームの流れの中で、良いショットを決める。これが一番楽しい」と話す。
 高校時代、インターハイ個人戦で優勝するほどの実力者も、実は中大入学当初はプロの道は頭になかった。「4年間、楽しくプレーして就職しよう」と思っていたという。

大学2年で国際大会優勝

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 プロテニスの世界はグランドスラムを頂点に、ATP(プロテニス協会)のマスターズ、ITF(国際テニス連盟)のフューチャーズといった下部大会がある。望月選手は大学2年でITFフューチャーズの香港大会で優勝した。「学生のうちにフューチャーズのタイトルを取れた。(もっと上のレベルでも)できるんじゃないか」と手応えと可能性を感じ、大学3年の初夏にプロになると決意した。
 「今は楽しみと不安があります。稼いでいけるだろうかと」
 当たり前だが、プロはまず結果を求められるシビアな世界。ロジャー・フェデラー選手(スイス)、ノバク・ジョコビッチ選手(セルビア)、日本では錦織圭選手のように獲得賞金が多く、誰もが知る選手はランキング上位のほんの一握りの存在だ。
 テニスの技量を上げるとともに、スポンサー探しも自分でやらなければならない。アジア圏を中心に年間20程度の大会に出場予定で、よりレベルの高い欧州、米国の大会への出場も視野に入れる。グランドスラム予選に出場するには、現在のATPランキング500位台を200位台前半に押し上げる必要がある。

「同級生の望月だ」と言わせたい

 ほかの卒業生へのエールを頼むと、望月選手は「それぞれの目標、夢に向かって頑張っていけたらなと思います。活躍して『中大で同級生だった望月だ』と皆さんに言ってもらえるようになりたい」と話した。硬式庭球部の同級生に「4年間、いろいろな面で助けてくれてありがとう」と感謝し、後輩には「目標を高く持って練習してほしい」と励ましの言葉を送った。

フィジカルも鍛錬重ね「魅せるプレーをしたい」

 フォアハンドが得意。サーブで崩してラリーの流れの中でウイニングショットを決める。ラリー中に主導権を握り、機をうかがってアグレッシブに仕掛ける。望月選手はタイプとしてはオールラウンダー(万能型)の選手だ。積極的にベースラインの前に出て、早くボールを打ち返し、相手に時間を与えない戦い方を心がけている。
 体格はテニス選手としては大きくはない。栄養学を学び、体幹を鍛える。ランニング、ウエートトレーニング、体幹トレーニングと、コート外でも鍛錬を重ね、体重は中大入学時から10キロ増えた 。 けがをしない体を作り、「体重の乗ったボール、重い球を打つフィジカルを追求したい」と力を込める。
 「フェデラー選手はどの国に行っても応援され、観客を引き付ける。僕もそんな魅せるテニスをしたい。僕のテニスは未完成、まだまだこれからです」
 未来は無限。鮮やかなショットで世界を切り開いていってほしい。

「駆け引き秀逸」「観客がワクワクするテニス」
大きな飛躍を期待 硬式庭球部 北澤竜一監督

 望月選手のプレーヤーとしての成長を見守ってきた硬式庭球部の北澤竜監督は、「 明朗快活。エースとしてテニスと向き合う姿勢は真摯であり、後輩には良いお手本だった」と感謝し、「伸びやかなフォアハンドストロークを武器に、見ている人がワクワクするようなテニスをしてくれる」とプレースタイルの魅力を語る。「テニスが大好きで、テニスを楽しみ、心はテニス少年のままという感じですね」とも。
 テニスで勝敗を左右する重要な要素であるゲーム中の駆け引きについて「秀逸であることは大きな強み」とし、力強さやパワーの面ではまだまだ伸びしろがあり、すでに国内トップクラスの技術力に加味することで、大きく飛躍できると期待している。「久しぶりの中大出身プロとしての活躍に注目するとともに、『望月に追いつき追い越せ』の精神をもった選手が出てきてほしい」と後輩への好影響も歓迎する。
 「プロという厳しい環境を選択し、これまでとは違うテニスが見えてくると思う。スポンサーやファン、多くの方に支えられ、仕事としてのテニスという一面も加わることで、プレッシャーも感じるでしょう。一方で、テニスを楽しむという彼の姿勢は大きな魅力で、それはなくすことなく、世界に羽ばたいてほしい」とエールを送っている。

中大出身プロは福井烈さん以来

望月5.jpg望月勇希選手
 173センチ、66キロ。大阪・清風高校卒、法学部4年。高3でインターハイ個人優勝、団体準優勝。質実剛健のチームカラーに引かれて中大に進学した。3 年時のインカレ優勝は、中大では福井烈さん(日本オリンピック委員会専務理事、日本テニス協会専務理事)以来40年ぶり。中大出身のプロ選手誕生も福井さん以来となる。
 「団体戦が好きです」と語り、大学4年間で最も印象に残っているのも、3年時の関東大学1部リーグの団体戦だ。長年、大学テニス界の王者として君臨する早稲田大との試合は、シングルス、ダブルス計9戦で争われ、望月選手の試合を残して互いに譲らず 4勝4敗。最終セット4-1とリードしたところで日没サスペンデッド。ところが翌日は試合の流れが変わり、タイブレークまでもつれた末に惜敗した。「口もきけないほど悔しかった」と振り返る。