2019年冬号

箱根駅伝 注目度の高さ実感

予選会取材を初体験

学生記者
齋藤優衣(総合政策2)

 昭和記念公園の芝生広場に、赤い「C」の文字をデザインした白のジャージー姿の選手が横並びになった。どの顔つきも険しい。きょうの走りにあまり満足していない様子で、予選を突破できたのかという緊張感が痛いほど伝わってくる。予選会1位の大学名が呼ばれ、遠くのほうから歓声が響いてきた。順に2位、3位、4位と呼ばれていく中に、中央大学の名前はない。

 選手の表情はどんどん曇っていく。9位早稲田大学と発表されると、空気がさらにピンと張りつめた。残り1校。応援に駆け付けたOB、OGや大学関係者、一般のファンらを含め、かたずをのんで発表を待った。選手たちは目を閉じ、祈るような表情だ。

「第10位......中央大学」。たちまち歓声と拍手が沸き起こった。ほっとした表情の選手、よかったと大きく息を吐いたり、顔を手で覆い涙をこらえたりする姿を間近で取材して、「なんてすばらしい瞬間に立ち会えたのだろう」と強く感じた。中央大学の名がアナウンスされたとき、私自身も鳥肌が立った。

本戦出場決定に鳥肌、熱気に圧倒される

季節外れの暖かさが選手を苦しめた=10月26日

 選手を祝福の声が包み、温かい気持ちになった。心からよかったと思えた。本戦へ向けた応援部のエールも一層、力強く感じられた。こうした取材現場を訪れたのは初めてで、選手の表情、観戦者の反応や雰囲気、スポーツの現場の熱気を体感できたことは貴重な経験となった。

 本戦出場決定にほっとするだけでなく、選手の話を聞いて回ると、皆が目標を持って、いかにチームに貢献するかをしっかりと考えていることがわかった。「当たり前のことを当たり前にやる」「(走りの)基礎の部分を見直す」など、藤原正和監督と同じことを口にする選手もいた。チームに共通した意識が浸透していることに驚くとともに、ひとつのチームとして戦っていることに改めて気付いた。きっと、たくさんの紆余曲折を経て、まとまりのあるチームになったのだろう。

 見守る人々の熱気も高まる一方だった。この日朝、フィニッシュ地点の昭和記念公園には、出場43校の選手、関係者だけでなく、在校生や母校を応援するため遠方から駆け付けた父母会の方々、叱咤激励すべく集まったOBらが詰め掛けていた。その数の多さにまず圧倒される。老若男女、これほどまで大勢の人がレースを楽しみにしている。箱根駅伝の注目度の高さを実感した。公園内の大型スクリーンにテレビ中継の映像が流れ始めると、「がんばれー! 」と声が飛ぶ。「ああ、始まったのだ」と私の胸も高鳴った。

報道各社と肩並べて取材、新鮮な体験

予選会のレース後、藤原正和監督(左)を取材する学生記者の齋藤優衣さん

 われらが中央大学陸上競技部長距離ブロック(駅伝)の選手たちは、季節外れの暖かさの中で、前半にペースを上げすぎたようだ。藤原監督もレース後、「スピード重視の練習をしてきたが、予想外の暑さにやられた」と振り返った。気温に適した臨機応変のペース配分の大切さを感じさせた。

 お正月の予定は「箱根駅伝を見ること」というくらい、わが家は大の箱根ファン。箱根駅伝の名門に入学したいと中大進学を決めたくらいなので、私自身の思い入れも強い。それでも、今までテレビ中継でしか見たことがなく、選手たちを遠い存在のように感じていたが、取材で言葉を交わすことでより身近に感じられ、応援したいという気持ちがいっそう強まった。

 藤原監督に取材したときのことも印象に残った。監督というと厳しい方なのかなと少し身構えて臨んだが、話を伺うと、選手のことを一番に思う優しい指導者の姿があった。物腰柔らかな監督の人柄が、チーム全体のよい雰囲気につながっているのだと感じた。人柄や応対の仕方などを知ることができたのも、現場取材という形でじかに関われたからだ。

 日本テレビをはじめ報道各社の記者と肩を並べて取材したのも今までにない経験で、とても新鮮だった。毎日、目にするニュースの現場はこうなっているんだと身をもって知った。

 なにはともあれ、中大の本戦出場が決まった。2020東京五輪・パラリンピックイヤーの幕開けとともに、令和初となる箱根駅伝。私の中でお正月の一番の楽しみになった。中大関係者の皆さん、「ONE TEAM」で箱根駅伝をぜひ応援しましょう!

本戦で「悔しさ」晴らせ! ぎりぎり10位通過、3年連続93回目出場

力走する舟津彰馬・駅伝主将(右から3人目)

 新春の第96回箱根駅伝の予選会が10月26日、立川市(陸上自衛隊立川駐屯地―国営昭和記念公園、ハーフマラソン21.0975キロ)で行われ、中央大学は予選通過ぎりぎりの10位(10時間56分46秒)で3年連続93回目の本戦出場を決めた。11位の麗澤大学との差はわずか26秒だった。10月下旬としては高い気温に苦しみ、力を出し切れない選手が多かった。この悔しさを本番で晴らそうと、チームは一丸となって正月の箱根路に挑む。

狙うはシード権
箱根駅伝予選会 監督・主な選手ひとこと

藤原正和・駅伝監督
「学生たちの実力を引き出してやれなかった。仕上がりがよかった分、非常に悔しい思いです。(本戦の目標の)シード権(10位以内)獲得は十分に可能性があると思っている。(予選会を突破できず、2017年本戦出場を逃すなど)つらい思いをしてきた4年生をいい形で送り出してやりたいという気持ちは変わらない。苦労が報われてほしいというのが一番の思いです」

田母神一喜・長距離ブロック主将(法4)
「(予選会の結果で)今のままではだめだと全員が思ったはずで、チームを引き締めていきたい。本番を想定した練習が大事だと思う。本戦で必ずシード権を獲得し、古豪復活へののろしを上げたい」

舟津彰馬・駅伝主将(経済4)
「もう一度エースとして認めてもらうため、しっかり練習し、(本戦で)区間賞を狙いたい。チームとしては、シード権を全員で取りにいって、今年こそ笑顔で終わりたい。監督に指導していただいたことを発揮して、出し切った、やりきったと実感して終わりたい」

池田勘汰選手(商3)
「(きょうの走りは)20点ぐらい...10点かもしれない。自分の中で何もかもうまくいかない部分があった。全く満足していない。当たり前のことを当たり前にやるというのを言われ続けてきたので、その見直しをして、プラスアルファが必要なら、それをやっていく。(本戦では)中大のエースは池田だなと誰が見ても思うような走りをしたい」

畝拓夢選手(法3)
「夏にスピード重視の質の高い練習をやってきた。トラックレースでは結果が出せたが、ロードレースはごまかしが利かず、長い距離の練習をもっと入れていきたい。(本戦では)1年目の山(1年時5区を完走)をもう一回リベンジしたい。山の対策もしていく。自分がチームを救うような気持ちで、区間賞を取るような走りを心がけてやっていきたい」

大森太楽選手(文3)
「力がついてきている実感はあるので、あとは安定感をどう上げていくかが課題。食事や睡眠など生活の当たり前の部分を突き詰めていく必要がある。(本戦では)目立たなくてもいいのでチームに貢献できるようにしたい」

三須健乃介選手(文3)
「上半期はけがでチームに迷惑をかけた。集団走で残り5キロが勝負と思っていたが、後半の粘りが本戦への課題です。体を強く作り直したい」

矢野郁人選手(商3)
「涼しければ1時間3分台前半(実際は1時間5分45秒)と思っていたので満足できていません。集団走(のペース)をもう少し落としてもよかったかもしれない。本戦ではいい走りを見せ、しっかりとつなぎたい。油断なく臨みます」

三浦拓朗選手(商2)
「(夏合宿で左足を負傷するアクシデントがあり)治って上向きな状態というコンディション的には、きょうは満足のいく結果でした。前回は風邪をひいて(本戦を)走れなかったので、今回は区間賞を取り順位を上げたい」

森凪也選手(経済2)
「きょうの走りは70点くらい。どうにかラスト5キロを最低限に粘り切れた。きょうのような大きなレースでプレッシャーに打ち勝つことが課題の一つ。(本戦では)往路のエース区間で他大学のエースに勝つことを目標に頑張っていきたい。気持ちで負けないようにしたい」

第96回箱根駅伝出場校
シード校(前年上位10校)
東京国際大
神奈川大
日本体育大
明治大
創価大
筑波大
日本大
国士舘大
早稲田大
中央大
予選会(10月26日)通過校
順位 大学名 記録(時間・分・秒)
東京国際大 10・47・29
神奈川大 10・50・55
日本体育大 10・51・09
明治大 10・51・42
創価大 10・51・43
筑波大 10・53・18
日本大 10・54・29
国士舘大 10・55・21
早稲田大 10・55・26
中央大 10・56・46
関東学生連合(オープン参加)
箱根駅伝予選会 中大・上位10選手
全体順位 選手名・学年 記録(時間・分・秒)
15 森 凪也(2) 1・03・58
25 畝 拓夢(3) 1・04・20
35 三浦 拓朗(2) 1・04・37
51 池田 勘汰((3) 1・05・01
105 矢野 郁人(3) 1・05・45
124 川崎 新太郎(3) 1・06・02
151 岩原 智昭(3) 1・06・24
178 大森 太楽(3) 1・06・48
188 舟津 彰馬(4) 1・06・54
192 三須 健乃介(3) 1・06・57