2019年冬号

外務省主催 「国際問題プレゼンテーション・コンテスト」

外交研究会が「金銀」独占の快挙

外務大臣賞に
及川奏さん(法学部2年)/赤羽健さん(法学部1年)

 外務省が10月に主催した「第35回国際問題プレゼンテーション・コンテスト」で、中央大学外交研究会(会長・目賀田周一郎法学部教授、顧問・宮野洋一法学部教授)の及川奏さん(法2)、赤羽健さん(法1)のチームが最優秀の外務大臣賞を受賞した。前身の「国際問題討論会」としての開催を含め、少なくとも2002年以降で中大生の最優秀賞受賞は初めて。

 外交研究会は、外交官など国際関係の仕事に就くことを志す学生が所属し、今回は研究会のほぼ全員がプレゼンテーション原稿のブラッシュアップ(磨き上げ)、スライド製作に携わった。研究会の浮須俊樹さん(法2)、前中翔太さん(法1)のチームも、外務大臣賞に次ぐ優秀賞を受賞しており、中大生の"金銀"独占は受賞者の力量はもちろん、外交研究会の総力が結実した快挙といえる。

「外交研究会の仲間に感謝」
「努力重ねてよかった」

外務大臣賞受賞の2人は「落ち着いてプレゼンテーションができた」と振り返った

「話し始めたら落ち着いてできました。内容にも受賞にも満足しています。準備に力を尽くしていただいたOBを含めた外交研究会の全員に感謝したい」(赤羽さん)

「自然と控えめにガッツポーズが出ました。皆と努力を重ねてきて本当によかったと思います」(及川さん)

 外務大臣賞の受賞が決まると、2人は満面に笑みをたたえた。10分間という制限時間の中で「(予定原稿の)最後の2文を時間オーバーで言えなかった」(赤羽さん)という"アクシデント"はあったものの、及川さんは「ほかの学生のプレゼンテーションも見て、私たちの内容もなかなか良いという自負もあった。目賀田先生からも『良かった』と言っていただけていた」と満足そうに話す。

 外交研究会ではことしの夏合宿で外務省のコンテストをテーマとし、研究会室員の出場を決めた。外部のこうしたイベントに毎年必ず参加するわけではないが、プレゼンテーションの質をできる限り高めようと、合宿中に模擬プレゼンを繰り返し、パワーポイントを用いたスライド作りにも大勢の室員が携わった。

「想定Q&A」が奏功

 最終審査では、及川さんがスライド操作と審査委員との質疑応答、赤羽さんがスピーチ(発表)と役割を分担したが、とくに質疑応答の準備に力を注いだことが効果的だった。

 質問は、現実に即した提案かどうかを見極めようと、 「実現性」を主眼に置いた内容が多かった。たとえば、「これは (現政府の政策に反する)移民政策には当たりませんか」という問いかけがあり、「現状の政策の中での条件緩和策です。労働力不足に関係する地方における一モデルです」などと余裕をもって回答した。質疑応答で回答に詰まってしまう他大学のチームもあり、十分に準備して「想定Q&A」を作ったことが功を奏したという。

 最優秀の外務大臣賞受賞にも、2人は「実現性という意味で、もう少し細部まで丁寧に詰めていかないといけないところがプレゼンテーションの中に残っていた」と振り返り、より良い内容にしたいという向上心は尽きないようだ。プレゼンテーション後、審査委員から「君たちの提案はやろうと思えば現実にできる」と声をかけられた赤羽さんは、「若干おろそかにしていたところもあったのに、そう言っていただけて救われた思いがした」とも話している。

受賞者あいさつで喜びを語る及川さん(中央)と、赤羽さん(左)

【要旨】
及川さん、赤羽さんのプレゼンテーション
「第二の故郷プロジェクトと生活総合支援アプリの活用」

 県や市などの地方自治体ごとに国外の自治体と一対一の協定を結び、互恵関係を築きながら協定相手から外国人労働者を受け入れる。外国人労働者が「ここで働いてみたい、住んでみたい」と思える環境整備を実現する「第二の故郷プロジェクト」と、このプロジェクトで来日した外国人への環境整備を官民連携の「生活総合支援アプリ」で推進することを提案した。日本側はとくに中山間地域の地方自治体を対象としている。

 第二の故郷プロジェクトのメリットとして、自治体ごとに独自の協定相手から外国人を受け入れることで、日本の地方自治体が協定相手の状況を鑑みた柔軟な受け入れ政策をとれることや、地方自治体内への定住、就職を奨励し、都市部への流出を防げることなどを挙げた。第二の故郷の意味は、「安心して存在できる居場所」と定義した。

 生活総合支援アプリには、外国人労働者と地方中小企業を結ぶマッチング機能を持たせ、人材不足の解消を目指す。行政がアプリを運営することで、外国人労働者と彼らの受け入れに関するさまざまな情報共有も実現できるとした。

 また、協定相手は自国民に対し、日本国内の自治体での一定期間の就労と生活を奨励するとし、日本側は外国人の長期在留に関する議論も考慮しながら法整備の段階で「一定期間」を具体的に定めていくとしている。

プレゼンテーションでは、赤羽さん(左)がスピーチを、及川さんがスライド操作と質疑応答を担当した

優秀賞の浮須さん、前中さん
プレゼン内容「前々日まで試行錯誤」

優秀賞のトロフィーと賞状を手にする浮須さん(右)と前中さん

 優秀賞に輝いた浮須さん、前中さんのチームは、「外国人アンバサダー制度とふるさと納税制度を活用した外国人受入れ」と題してプレゼンテーションを行った。制限時間内でより良い内容を提示するため、パワーポイントによる視覚アピールをどう構成すべきかなどの準備に、前々日まで試行錯誤を繰り返した。「外交研究会の先輩やOBにもたくさんの助言をいただいた」(前中さん)と感謝する。 当日は10組中7番目の登壇とあって、プレゼン自体や審査員との質疑応答にも落ち着いて対応できたと振り返ったが、ほかの学生のプレゼンテーションもレベルが高く、優秀賞のアナウンスを聞いたときは「自分たちとは思っていなかったので驚きがあった」(浮須さん)という。

国際問題プレゼンテーション・コンテスト

 日本の将来を担う大学生が外交政策や国際情勢などへの関心、理解を深め、国際社会で活躍できる能力を高める機会としてもらうのが狙い。今年は10月5日に東京都中央区の日本橋社会教育会館で開催された。審査委員の山脇啓造・明治大学国際日本学部専任教授(審査委員長)と埼玉県川口市の芝園団地自治会の岡﨑広樹事務局長、岡部みどり・上智大学法学部教授の3人が、プレゼンテーションの独創性、具体性、実現性などを審査した。テーマは「私の提言 外国人の受入れと共生社会の実現のために」で、全国の学生21組(29人)の応募の中から事前審査を経た10組(17人)が最終審査に進んだ。中大からは新井馨さん(法1)も慶應義塾大学の学生2人とのチームでファイナリストとなった。

中央大学外交研究会

 多摩キャンパスの学生研究棟「炎の塔」に会室を置く外交官試験受験団体。1951年に外交官を志す学生によって設立された。これまでに50人以上の外交官試験合格者を輩出している。現在は法学部1~4年の24人が所属。選抜試験合格が研究会に入る条件で、全学部の学生に門戸が開かれている。国際法、国際政治、時事の3教科を基本に、公務員試験の合格や国際関係の研究、分析のための基礎作りを行う。OB、OG訪問を通じて、外務省や国際機関などで活躍する先輩の話を聞く機会もある。