2019年早春号

五葉会 90周年祝賀会開く

思わぬ「裏方」最高の経験に 情報過多の今こそ大切な坐禅で雑念払い

橋本有理 さん(総合政策学部4年)

 禅と茶道のサークル「五葉会」(学友会文化連盟)が昨年5月に創部90周年を迎えた。
1928(昭和3)年に始まり、昭和・平成・新元号へ脈々と続く。伝統を守り、時代に即した活動内容を4年生部員がリポートする。

禅語「一華開五葉 結果自然成」

 2018年5月15日、五葉会はめでたく90周年を迎えました。同年12月1日には中央大学多摩キャンパスにて祝賀会を開きました。

 OB・OG、来賓の方々をお招きし、現役会員(学生)を含め、およそ40人が集う賑やかな会となりました。

 五葉会の始まりは1928年。中央大学予科教授(当時)の立田鉄二先生が立ち上げました。大学で教鞭を執る傍ら、禅の指導も熱心でした。

 立田先生のもとに5人の学生が集まって始まったこと、「一華開五葉 結果自然成」という禅語が「五葉会」の由来だと聞いています。

 その禅語の意味は様々な解釈がありますが、一般的には商売繁盛や子孫繁栄を祝うものとして知られています。

 現在の会員(部員)は男子5人、女子8人。学年を感じることなく、アットホームな雰囲気で活動しています。活動のメインは坐禅です。茶道にも取り組んでいます。一風変わったサークルだと思った方もいるでしょう。

 坐禅は仏教と関わりが強く、宗教的な要素を含むため、敬遠する方がいるかもしれません。しかし私たちにとって坐禅を組むことは、「自分とは何か」を模索するものです。

 社会に様々な情報が溢れる現代、雑念を取り去り自分を見つめ直すことの必要性は高まっているのではないでしょうか。

 一方、国際化が進み、異文化交流の機会が多くなっている今、日本人が自国の文化について学ぶことも重要になっていると思われます。最近では「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」という茶道の映画が話題になりました。茶道教室の師弟による対話から、日本人の伝統や美意識が伝わってくると評されています。

祝賀会準備

五葉会の先輩らと一緒に記念の1枚

 大学では多摩キャンパス4号館にある会室に週に1回集まり、会員達が一緒に坐禅を組んでいます。

 会員以外で坐禅に取り組んでいる学生と出会う機会はほとんどないのですが、日頃お世話になっている禅宗のお寺へ行くと、学生から高齢の方まで幅広い年齢層が坐禅修行に参加しています。禅に励む方と交流することは現役会員にとって良い刺激となっています。

 中大を卒業して、社会人になっても、坐禅修行に励んでいる先輩方は何人もいらっしゃいます。こうした大先輩が時々サークルの部屋にいらして、現役会員と共に坐ってくださることもあります。歴史が古いからこそOB・OGが多く、深いつながりがあるということが五葉会の魅力の一つです。

 12月の祝賀会では、坐禅会や茶席、講演会のほか五葉会に関わりの深い資料を展示したギャラリーなどを設け、大学時代に思いを馳せて頂きました。現役生にとっても五葉会や中央大学を再確認する良い機会となりました。

 振り返ってみると、この祝賀会を少人数でよく開催できたと思います。開催決定は昨年7月中旬。就職活動も終盤を迎え、心が落ち着いてきた頃に、サークルから大仕事が舞い込んできました。

 正直なところ動揺を隠せませんでした。祝賀会の準備経験など一度もありません。右も左もわからない状態で、考えることが多かったです。

 苦労したのは「席主」の準備です。席主とは、茶席の主人のことで、正客(招客の代表で最も上位の席につく人)との対話を大事にし、茶席の進行役を担います。

 苦労はほかにもありました。お出しするお茶碗、茶室の掛け軸、飾る花や花入(はないれ)の名前、茶道のお道具はお客さまに尋ねられた場合でも、きちんと答えられるよう頭に入れておかなくてはなりません。

 当日まで、道具の名前を忘れないように確認し、正客とどんなお話をしようかと考えながらイメージトレーニングをしました。

 当日はかなり緊張しましたが、お客さまの寛容なふるまいを目の当たりにすると、「あれ? もしかして気負い過ぎていたかも?」と緊張がほぐれていきました。

 お客さまに助けられながら、無事、茶席を進めることができました。そして何より、お相手に楽しんで頂くためには自分が楽しむことが大切なのだ、と再発見しました。

 祝賀会を開いたことで、五葉会や中央大学について多くのことを学びました。中央大学は茶道と深いつながりがあります。

 多摩キャンパス桜広場の一角に「虚白庵」という茶室があるのをご存知でしょうか?

一重切(竹)の花入/数江先生作

 二十年ほど前、五葉会顧問の故数江教一先生が中心となって建てたものです。数江先生は文学部教授で、日本の倫理思想史や茶道の研究者でした。

 中央大学出身である表千家十四代家元の而妙斎宗匠と関わりがあり、茶室を「虚白庵」と名付けてもらったそうです。

 大学には数江先生が造ったお道具や十四代家元が書かれた掛け軸があります。祝賀会では名作の数々をお借りして、立派なお茶席にすることができました。

 苦労もありましたが、祝賀会を通して、様々な知識を得ることができ、盛況を目指して協力してきた先輩方や後輩との絆はさらに深まりました。私にとって大学生活で欠かすことのできない思い出です。

 そして祝賀会を開くにあたり、多くの方々にお世話になりました。心から感謝しています。

 禅と茶道のサークル「五葉会」。グローバル人材となりえるよう、日本文化を知りたいと思っている方がいたら、ぜひ五葉会を訪れてみてください。

 きっと素敵な体験ができますよ。

五葉会創部1928年当時の中大の学修環境
■1926年(昭和元年)/神田錦町から駿河台へ

 1920年、法・経済・商の3学部を中心とした総合大学(旧制中央大学)となった本学はこの年、神田錦町から駿河台へと移転。第二次世界大戦を経た1949年、新制の中央大学としてスタート。

■1928年(昭和3年)/中央大学の象徴、白門の由来

 「白門」は本学を象徴する言葉です。1928年「学生歌」に採用された「聴け白門の暁を、聴堂に鐘鳴り出ずる」という歌詞に由来するといわれています。(中央大学ガイドブック2019より)

五葉会リンク: