2019年早春号

堀尾謙介選手 初マラソンで2020東京五輪 選考レース 出場権獲得

東京マラソン日本人トップの全体5位

堀尾 謙介選手

 中央大学陸上競技部長距離ブロックの堀尾謙介選手(経4)が3月3日に行われた東京マラソンで2時間10分21秒、日本人最高位の5位に入った。自身初のマラソンで2020東京五輪代表選考会出場権を得た。

15キロ付近の浅草寺・雷門前を通過する(写真提供=共同通信社)

  丸の内のビジネス街を抜け、最後のカーブを左折すると前方に皇居が見えた。東京駅舎をバックに行幸通りに入った。

  西新宿の東京都庁前からスタートして、残りは200メートル余り。沿道から「堀尾! 堀尾!」の声援を受ける。ゴールで待つ晴れ着の女性2人が幅広のテープをピーンと張った。

 冷たい雨のなか、緊張が続いた。途中で振り返り、後続ランナーの動きを気にしたこともあった。初マラソンで2時間10分21秒。日本人選手トップの成績だ。

 ゴール後、6歩進んだところで転倒した。疲労困憊だった。複数の係員に抱きかかえられて引き揚げた。

 注目を一身に浴びた記者会見。マイクを持ったニューヒーローは「本当にこれが現実なのか」と静かに話した。

「ダメになっても初マラソンだからいい。行けるところまで行こう。30キロ過ぎても余裕があったので。寒さは大学の練習で慣れています」

 マラソンの練習はトップクラスでも、 きつくて続ける気持ちがなえそうになるときがある、という。

  3年生からマラソン練習を始めた堀尾選手は課題を一つずつこなしてきた。30キロ走では規定ゴール後も走り、35キロまで距離を伸ばしたこともある。「走るのが好きなんです」。不断の努力が、この日、大きな花を咲かせた。

 13回目を迎えた大会最多の3万7603人が走った。ランナーを待っていたのは厳しい気象条件だった。間断なく降る雨、スタート時・午前9時10分の気温は真冬並みの5.7度。レース中は同4度台に下がった。

 帽子とユニホームを雨と汗で濡らしながら、1キロ3分ペースの第2集団でレースを進め、第1集団の強豪アフリカ勢を追いかけた。20キロで13位と順位を上げ、折り返し地点で日本人2位。37キロ付近で、五輪1万メートル・日本代表選手を抜いて日本人1位。

 低温と寒さで体力を奪われてか、途中棄権や地力を発揮できない選手が相次ぐなか、ユニホームに「C」マークを付けた中大のエースが主役に躍り出た

MGCは9月15日開催

2時間10分21秒でゴールする堀尾謙介選手。日本男子トップの5位に入った。(写真提供=共同通信社)

 ラジオ日本の解説を務めた藤原正和・中大駅伝監督も雨には強かった。東京マラソンの2010年大会優勝時(2月28日)も冷たい雨だった。

「雨のなかでも自分の力を出すという指導を堀尾選手に限らず、全選手にしてきました。きょうは練習の成果が出たなと思います」とコメントし、こう続けた。「教え子が結果を出してくれたのは指導者としてうれしいです」

 同監督、中大駅伝ブログでは「練習達成率は95%、2時間10分前後かと思っていましたが、まさか日本人トップでゴールとは」と驚愕の思いをつづった。

 来年夏の東京五輪出場をかけた選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」は9月15日に行われる。MGC出場の有資格者は30人。

 身長183センチ、黒縁の眼鏡使用。すぐに彼だと分かる堀尾謙介選手が晴れのスタートラインに立つ。