学生横綱を決める第96回全国学生相撲選手権大会個人戦は11月3日、東京・国技館で行われ、中央大学の菅野陽太さん(法2)が初優勝した。中大勢の学生横綱は2001年の成田旭さん(大相撲元関脇、十両豪風関)以来17年ぶり5人目だ。
最近10年間の学生横綱
2008 | 佐久間 貴之(日 大)→常幸龍 |
2009 | 森本 太良(拓 大) |
2010 | 明月院 秀政(日体大)→千代大龍 |
2011 | 正代 直也(東農大)→正代 |
2012 | 中村 大輝(日体大)→北勝富士 |
2013 | 一ノ瀬 康平(日体大) |
2014 | 大道 久司(東洋大)→御獄海 |
2015 | 黒川 宏次朗(拓 大) |
2016 | トゥルボルド(日 大)→水戸龍 |
2017 | 中島 聖(日 大) |
参加36大学・出場選手約200人が、学生界の綱とりを目指した大会は高まる熱気に包まれていた。
「ただいまより決勝戦を行います」。国技館に場内アナウンスが流れると両校陣営から大きな声援が土俵へ注がれた。
東から上がった相手は2学年上の中嶋亮介選手(東洋大4年)。菅野選手が立ち合いから思い切りのいい攻めで相手を圧倒する。184センチ、158キロの鍛えた体でぐいぐいと押し込む。左まわしを取って自分の形にした。最後は上手投げで「学生横綱」の称号を掌中に収めた。5秒ほどの時間に、これまで積み重ねてきた稽古が凝縮されていた。
優勝を決めた瞬間こそ、勇ましい声をあげた。
「学生横綱を取れてうれしかったもので、横綱は格好良い、と小さい頃から憧れていました」
喜びのポーズは一瞬で消えた。敗者への敬意なのだろう、再び表情を引き締めた。「1年間の稽古を発揮できるようやってきました。ここが終わりではありません。満足していたらダメです」
1回戦からの決まり手は、上手投げ、小手投げ、上手投げ、寄り切り、上手投げ。多彩な攻め、思いきりの良さ、さらには相手をよく見た落ち着いた取り口で、3年生・4年生の優勝候補を次々と倒した。初めて勝った相手が2人もいた。大学入学後の初タイトルが最高峰の学生横綱となった。
以前、中大相撲道場を訪れた先輩の豪風関、矢後関(ともに尾車部屋)から「四股はお腹に力を入れて」などとアドバイスされた。菅野さんは「豪風関が39歳になっても相撲を取れるのは、体の芯が強いからだと思います」と驚嘆し、基礎鍛錬の重要度を再認識した。豪風関は自らのツイッターに「おめでとう! 良くやった(涙)」と書き込んで、後輩の栄誉を称えた。
相撲に目覚めたのは小学校4年。地元・埼玉県のわんぱく相撲決勝で敗れ、連覇を逃してからだ。優勝者が、少年相撲クラブに所属している、と知って自らもクラブ入りした。2012年の学生横綱で幕内力士の北勝富士関(八角部屋)はこのクラブの出身者。
中学生になると骨格がたくましくなり、技も徐々に自分のものとした。「小さい頃は負けて泣いてばかりいましたが、勝てるようになると相撲が楽しくなってきました」。中3で全国大会ベスト8。高校は強豪の和歌山県立箕島高に進み、優勝2回の実力者となっていた。
学生横綱と呼ばれるようになり、お祝いと歓迎ムード一色のなか、自らは気を引き締める。素顔は法学部の2年生。これからも授業と稽古の両立が命題という。
今度は負けない
表彰式終了後、菅野選手が引き揚げる通路で出会ったのは決勝の相手、中嶋選手。さらには準決勝の相手、城山選手(ともに東洋大)。2人から次々に祝福の握手を求められ、こう言われたという。「今度は負けないよ」
1並びの誕生日
菅野さんの誕生日は「平成11年1月11日です」。1が5つ並んだ。1番になるよう生まれてきたかのようだ。「何度かそう言われたことがあります」と少し照れていた。