ピッチャーはポーランドのベンディウ ズザンナさん
WKC の開催は昨年6月18日、7月16日、12月20日。野球の世界一決定戦、「World Baseball Classic 2017」(3月)では、日本はベスト4と健闘し、大きな盛り上がりとなった。そのまさに同じ年。
WKCを主催するのは国際草野球連盟(学生任意団体)。草野球を通した国際交流と野球の普及を目指し活動しているサークルだ。
このWKC。東京・多摩川の河川敷などでよく行われる草野球大会とは大きく異なる点が3つある。
1つ目は参加者の約5割が外国人籍であることだ。出身国はヨーロッパ、北アメリカ、アジア、オセアニアと幅広い。そう、この大会は草野球を通して国際交流することが目的となっているのだ。
では、なぜ草野球なのか? フィールドを縦横無尽に動き回るサッカーやバスケットボールなどとは違って、野球は“間”のスポーツだ。
ポジションもそれぞれ範囲が割り当てられ、打席も必ず回ってくる。全ての人に役割があり、プレーの間にルールやコツを教えたり、応援したりと草野球は交流に非常に適したスポーツであるといえるのだ。
2つ目はみんな下手くそなことだ。転んだり、叫んだり。珍プレーの連続。参加者のうち女性の占める割合は約4割。そのほとんどは野球どころかスポーツ未経験者だ。
海外組も、野球が盛んではないスイスやポーランドなどのヨーロッパ諸国や中国、韓国、台湾、マレーシアほか。
ちなみに野球経験者は全体の2割に満たない。これは野球をあまり知らない人に野球の楽しさを伝えるため、あえてそのような参加者を集めているのだ。
3つ目は試合が和やかな雰囲気で進むことだ。
高校野球の甲子園のような熱いプレーや闘志はもちろんない。
だが、とにかく楽しい。野球未経験者や女性の多さから、試合が成立するのか心配な方も多いだろうが、未経験者が多いからこそ体格差や性別による実力差は生まれず、特別ルールの採用やテニスボールの使用などの工夫も効果的に作用している。
野球は人生初挑戦
打者はスイスのニコ ザネッティさん
スイス出身のニコ ザネッティ(Nico Zanetti) さんは野球初挑戦。
「もちろん野球は知ってはいましたが、スイスで野球はあまり有名ではないので、大会に参加するまで野球をやったことはありませんでした」という。
ところが当日は大活躍。まるでプロ野球の助っ人外国人のような体格でバットを振り回すと、ピンポン玉のように打球は左中間へと消える。ただし、バットにボールが当たった時に限るが。
「大会に参加する前は、自分が野球をうまくできるかどうか分からなかったので、本当に野球を楽しめるか不安でしたが、やってみて本当に楽しかったです。新しい体験ができて、友達もいっぱいできて、すごくうれしかったです。一番気に入ったのはバッティングでした」
あまりにも楽しかったのだろう。彼の熱烈な嘆願で、半年に1度の予定が、2017年前期にもう1度開催されることになった。
「ぜひまた野球がやりたいです。日本に戻ってきたときには必ず」
こうして、野球文化の種が広がっている。
バッティングセンターで自主練も
ポーランド出身のベンディウ ズザンナ(Bendiuł Zuzanna) さんも野球初挑戦。
このイベントが待ち遠しかったようで、近所のバッティングセンターで練習を重ねてきたという。
「野球のこと、ぜんぜん知りませんでしたが、1回だけ野球の試合を見たことがありました」
そんな中、どうしてWKC に参加しようと思ったのだろうか?
「中央大学の日本人の学生や留学生と一緒に楽しく時間を過ごせる機会だと思いました。また、運動が好きで、新しいスポーツをやってみたかったので」
大会当日は、試合開始前からピッチング練習にまで挑戦。打席ではセンター方向に鋭い打球を飛ばしていた。
「参加してとてもよかったです。私は素人なのにみんなと普通に野球ができた。分からないところは説明してくれたから勉強にもなりました」
為藤優さんは、経済学部3年生。
左から為藤さん、台湾からの留学生
「もともと留学したいと思っていて、もう今年(2017年)の夏しかないかなって思ったんです」
就活目前となり、後悔したくないとの思いから留学を決意した。そんなタイミングで出会ったのがWKC だった。
「野球を見るのも好きだし、スポーツを通して交流した方が仲が深まりそうだと思って」
大会では野球初挑戦ながらレフトの守備をそつなくこなし、スイスや台湾などたくさんの留学生の友達と交流をした。
「野球をやるのは初めてだったのですが、みんなで協力しながら楽しくできてよかったです」
WKCで留学生と交流した経験を胸に、その後、夏休みに念願の留学を果たした。
帰国後もグローバル化に関するフォーラムに登壇するなど活躍の幅を広げている。
「いろいろな価値観に出会ったり、自分で行動することの大切さを学びました。人との出会いや関わりを大切にこれからも英語を引き続き勉強していきたいです!」
WKCは為藤さんにとって、世界と関わるはじめの一歩になった。
野球の持つ可能性を実感
左からショートを守る横内さん、
二塁走者の韓国からの留学生
横内真生子さんは法学部2年生。普段は街づくりや国際交流など活動の幅は多岐にわたる。だが、野球は初挑戦。
「正直、自分が野球できるか不安でした」
もちろん野球が目的ではなく、国際交流スペースの友人に誘われて参加した。
いざ、やってみると大活躍。元バレーボール部の本領発揮。打ってはライナー性の打球を飛ばし、守備もそつなくこなした。
「意外と楽しかったです。正直ここまでチームの勝利に貢献できるとは思わなかったです」
参加のきっかけはどうであれ、やはり実際にプレーすると、その楽しさがわかる。
「普段、留学生とは日常会話しかしないけど、一緒に野球をすることでそれ以上に仲良くなれて、野球の持つ可能性を感じました」
スポーツはルールによって言葉や民族その他の壁を超え、世界中の人々が楽しめるものである。
このWKCを通して、少しでも多くの人が野球の楽しさや国境を越えるスポーツの力を味わってもらえたらと思う。
参加者による集合写真
へぇ~もっと知りたい 国際草野球連盟
2017年4月に中央大学にて誕生。草野球を通した国際交流と野球の普及が目的。主な活動は国際交流草野球大会であるWorld Kusayakyu Classicの開催。中央大学内外から出場者が集まる。
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