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トップ>HAKUMON Chuo【2018年秋号】>モチベーションビデオ制作奮闘記

Hakumonちゅうおう一覧

クローズアップ

駅伝チームの練習を取材する筆者

箱根駅伝予選通過に貢献

モチベーションビデオ制作奮闘記

FLPスポーツ・健康科学プログラム村井ゼミC生&学生記者
文&写真 五十嵐遥(法学部4年)

 中央大学FLP村井ゼミは、正月恒例の箱根駅伝に挑む中大陸上競技部長距離ブロック(駅伝チーム)応援プロジェクトとして、海外の例に倣った選手の士気を大いに高めるモチベーションビデオを制作している。ビデオ上映は箱根駅伝予選会直前。昨年はその甲斐もあって3位で通過した。今年の制作担当・五十嵐遥さん(法学部4年)が完成までの山あり谷ありをつづった。予選会は10月13日だ。

村井ゼミ生が制作したチラシ

駅伝が好き

 私は駅伝を見るのが好きだ。幼い頃から、正月は箱根駅伝をテレビで観戦し、一生懸命に走る大学生のお兄さん達を応援した。大学進学を機に上京してからは毎年、レース発着の大手町で応援している。

スポーツが好き、そして村井ゼミへ

 村井ゼミはスポーツ心理・スポーツ振興をテーマとするゼミで、研究としてスポーツ選手側へのアプローチ、私のように応援する観客側へ焦点をあてた活動もできる。

 大学でもスポーツに関わりたいという思いからゼミ入りし、箱根駅伝を目指す中大駅伝チームを対象としたモチベーションビデオを作成するプロジェクトメンバーになることを希望した。

モチベーションビデオとは

 モチベーションビデオは、チームメンバー全員の動機付けを大きく高める意図で作成したものである。

 視聴する選手とチームの過去のプレー映像、トレーニング映像の中から抽出した成功場面やチームワークが機能している場面などを1本にまとめ、音楽や文字を付加する。

 目的は、直近の試合や競技において良いパフォーマンスを発揮するために必要とされる心理的要素をポジティブな状態に変容させることである。

 プロアスリートにおける最も有名な事例は、サッカーアルゼンチン代表のリオネル・メッシ選手が所属するFCバルセロナのチームだろう。2009年、欧州チャンピオンズリーグ決勝の試合直前、ジョセップ・グアルディオラ監督(当時)がテレビ局の協力を得て作成したビデオだ。

 結果は優勝だった。世界で最も普及している競技、サッカーの注目の一戦の出来事だったことで話題性が高く、モチベーションビデオという言葉が広く普及したきっかけとみなされている。動画はネット上でも公開されている。

 私たち村井ゼミでは駅伝チームへ向けて、このようなビデオを6~8分程度で制作し、提供することで、箱根駅伝予選会へのモチベーションを高め、より良い競技パフォーマンスにつなげて頂くことを目的としている。

先輩方のビデオ、そして今年へ

 昨年10月、箱根駅伝予選会の結果発表。「第3位・中央大学」と呼ばれた時の、中大選手に注がれた大歓声が忘れられない。

 予選会前日にあったモチベーションビデオの上映会。私も制作メンバーに含まれていたが、先輩方に頼りきりで、どこかやりきれない思いを感じていた。

 先輩方は良いビデオを作るため、撮影から編集まで多岐にわたる作業に労力を費やし、結果として、完成度の高い内容に仕上がった。

 選手は真剣な眼差しで見ていた。ときおり笑いが起こり、笑顔になる。彼らから「自信につながった」「レースに向けた良いイメージができた」など、うれしい感想をもらえた。主将から「来年もよろしくお願いします」という言葉を頂けたときは、とてもうれしかった。

 次は私が、という気持ちが大きくなった。

 2018年10月13日、結果発表のあの瞬間、あの声援からの感動をまた感じることができるのならば、自分が作ったこのビデオが少しでも好結果につなげる力になれたと感じたい。それが私の目標だ。

主体的に動く難しさ

 自分がまとめ役になりながら、計画を進めていくことの大変さを感じた。

 練習、試合、合宿など撮影機会はなるべく多くしたい。集まった映像から使用する場面を選定する。複数の使用映像を組み合わせていく編集作業。一つでもおろそかにすると後の作業に影響が出てしまう。

 完成までの作業を計画的に進めなければ、限られた期間でクオリティの高いビデオを作ることは難しい。

選手がどう思うか

 どのシーンを使うかという作業では、「よく撮れた」「綺麗に撮れた」ではなく、この映像を見て選手はどう思うだろうか、と考えるようにした。大事なことだと思う。

 ビデオを見た部員全員が同じ思いを持ち、同じ熱量で試合に臨めるようになってほしい。作成時は部員の心の奥に届くように、使用映像や音楽、メッセージを選んでいる。

選手との距離感を詰める

 ビデオ作成過程で一番の課題であり、一番大切だと感じたことは、部員の皆さんとのコミュニケーションだ。

 練習場や試合会場が撮影場所になる。選手たちは集中していて、こちらから気軽に話しかけたりすることは難しい。

 このような状況で何ができるかと考えた。より多く現場へ足を運び、私たちの顔を覚えてもらう。このことは先輩たちが大事にしていて、しっかりあいさつをする、時間や労力を惜しまない。私たちを認知してもらい、一生懸命に活動している動きや気持ちを伝えたい。

 誰だかわからない人に撮影され、ビデオを作られるよりもうれしさや感動が増すはずだ。駅伝チームの皆さんに喜んで頂きたい。それが自分たちの達成感につながるのだろう。

選手たちと接して肌感覚で感じたこと

 練習や合宿での撮影で選手の様子をみていくなか、「普通の男子学生なんだ」と感じる場面が多々ある。

 日本一になった経験のある選手がいる。華やかな活躍をしたランナーがいる。しかし、選手同士でふざけあっている様子をみたり、普段の生活ぶりを聞いたりしていると、私達とあまり変わらないのだと改めて感じる。

 変わっているのは生活環境だ。世間から広く知られ注目度の高い箱根駅伝出場を目指すことで、周囲の大きな期待とプレッシャーを背負いながら毎日練習に励んでいる。

 私には考えられない環境で、彼らには到底かなわないなと常々思う。

 そう感じるからこそ、このビデオが少しでも選手の力になればいいなという気持ちを込める。

ゼミとして、より選手・チームに響く映像を届けるために

昨年は喜びが弾けた、あのシーンの再現を願う

 ビデオ作りにおいて一番重視すべきところは前述のように、選手らとゼミ生とのコミュニケーションだと考える。私たちも当事者意識を持つ。

 試合前に見て頂く私たちの作成したビデオをひとつのきっかけとして、駅伝チームのモチベーションをさらに上げて、良い結果につながるよう、私たちは気持ちを込めてビデオを作る。

FLPゼミ(Faculty-Linkage Program)

 専門分野以外の知見を得ることで、視野を広げ、多様化社会に適応できる能力を身につけます。多様な専攻を持つゼミ仲間との交流を通して、人間関係が広がっていくのも魅力です。プログラムは環境・社会・ガバナンス▽ジャーナリズム▽国際協力▽スポーツ・健康科学▽地域・公共マネジメントと5つあります。(中央大学ガイドブック2019より)